Turn154.樵『道の終わり』

 お姫様と十三人の依り代たちは城を出て、魔の森と呼ばれる恐ろしい森の中を突き進んでいた。

 ここには地図にも詳細が載っていない場所である。その理由として、魔の森自体が生き物のように動き、常に地形が変化しているということが上げられる。地図に載せたところで、すぐに地形が変わってしまうから意味がないのである。


 そんな魔の森は、あらゆる変化を遂げる──。

「これは……」

 先を進んでいた兵士たちが思わず足を止めた。

 運の悪いことに、行く手を遮るような断崖絶壁──落ちてしまえばタダでは済まないだろう。見下ろせば、遥か下の地面に木々が生い茂っている。

「どうしましょう……?」

 向こう岸は見えてはいるが、とてもジャンプして届くような距離ではない。それこそ、空でも飛ぶことができれば簡単に渡ることはできるであろうが──そんな能力を持つ者など、この中にはいなかった。


「……くそぅ……」

 十三人の依り代の一人──ドランキィ・フリンキーが悔しそうに歯噛みをしている。

「時間さえあれば、橋を掛けてやることが、できるのに……」

 パンデコの森のきこりであるドリンキィは、大工も兼任していた。橋を建てることも、彼にとってはお茶の子再々なのである。

 しかし、不死身の軍勢が迫ってきている現状、僅かに限られた時間の中ではさすがに橋を建てることも難しい──。


 行く道がなくなり一行は立ち止まることしかできなかった。すぐ側まで不死身の軍勢は迫っている──その焦りから、生きることを諦めようとする者や絶望する者まで現れ始めた。

──しかし、お姫様はまだ諦めていなかった。

「きっと勇者様がどうにかして下さいますわ。祈りましょう……」

 お姫様は手を合わせ、勇者に向かって祈りを捧げるのであった。

「お願いします、勇者様。どうか私たちに、お力をお貸し下さい。お願いします、勇者様……」

 勇者にこの思いが届くまで、お姫様は何度も何度も口に出して祈ったのであった。


──アァアァアアッ!


 荒波の如く不死身の軍勢──アンデッドモンスターたちが魔の森を進み、お姫様たちに迫った。

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