Turn136.勇者犬『三対一』
「あらあら……。一応、心配だから付いてきてみれば、随分と愉快なことをしているじゃないの」
涼やかな声と共に広場に降り立ったのは、白装束を纏った少女であった。
「あ、貴方は……!?」
その姿を見たお姫様が絶句する。
「な、なんだ、お前は!? 」
怯えた表情のゴードンが、突如現れた白装束の少女に唾を飛ばす。
白装束の少女は不愉快そうな顔付きになると、キッとゴードンを睨み付けた。
「お邪魔は、身の程を知りなさい」
睨み付けられたゴードンの体はみるみる石化していき、石像となってしまう。
「白刃……大蛇子……」
ロディッツィオも、ガタガタと体を震わせた。
「あら勇者様。私のこと、覚えて下さったんですわね。それは光栄ですわね」
クスクスと大蛇子は、おどけて笑った。
「それにしても……」
大蛇子は家の陰と茂みの中で震えている、無様な二体の獣の姿を見て、不審そうに首を傾げた。
「ウチの子たちはどうしたのかしら? そんなに強い力は今の勇者から感じられないのだけれど……。まさか……」
チラリと、大蛇子は僕に視線を向ける。
「この可愛らしいワンワンのことを、恐れているとでもいうのかしら?」
──グルルルッ!
僕は威嚇で、大蛇子に向かって喉を鳴らしてみた。
すると、大蛇子は盛大に吹き出した。
「まさかね。そんなことがあるはずがないわ! おかしなことだわ!」
一頻り笑った大蛇子は、パチンと指を鳴らした。
それを合図にグリフォンとキマイラが顔を上げる。
「いつまで可愛らしく震えているつもりかしら? アナタたちが怯えるようなことはないじゃないの。恐ろしいのなら、やってしまえば良いじゃない。アナタたちなら、このワンワン一匹くらい造作もないことじゃなくて?」
「グオォオォオ!」
「ガルルルルッ!」
大蛇子が加戦してくれると分かった途端、再び二体の魔獣の闘志が燃え上がる。
『我が主様が居るなら百人力だ! 貴様など簡単に捻り潰してくれるわ!』
『調子に乗るなよ、チビ助が!』
大蛇子の両サイドに立ったキマイラとグリフォンが威勢良く咆哮を上げる。
──三対一……。
数としては圧倒的に不利だ。
かと言って、ロディッツィオやマローネ──或いは、お姫様を戦力に加えるわけにもいかない。
あくまでも、この場で戦えるのは僕のみだ。
──それでも、みんなは僕が守る!
「ワオーン!」
僕は全身のオーラを放出し、戦闘体勢に入った。
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