Turn27.勇者『新たなるはじまり』
「転校生をご紹介します」
教壇の前に立った僕は、ホームルームの席で担任の先生から新しいクラスメートたちに向かって紹介された。
「宜しくお願いします」
僕は簡単に挨拶をすると、頭を下げた。
「……じゃあ、あそこの席に座ってね」
そう先生から指差されて指定された席に向かう。
──おばさんの元を離れた僕は、精神科医のクルブシの勧めで次に行くべき場所を選ばされた。
「勇者様。次は、どちらに迎えば宜しいですか?」
そんなことを聞かれても、僕には分からない。
地図を広げて尋ねられたが、なかなか答えることは出来なかった。
──助けて。
ふと、声がしたような気がした。
それは、今までの声とは別の人物であるかのように思えた。
「ここ、かな……」
そして、僕は何となく気になって、地図上のとある場所を指差したのだった。
後は精神科医が色々と手続きをしてくれたので、こうして地方にある町の学校に転校してきたというわけである。
「へぇ、関東からきたんか……」と、クラスメイトたちは物珍しそうにざわめいていた。
彼らからすれば転校生自体が珍しいようである。この町から外へ出て行く人は居れど、越して来る人はそうそう居ないようである。
椅子に座ると隣りの席の女子が「宜しくね」と声を掛けてきてくれた。僕も反射的に頭を下げた。
「私は山寺恵よ。何か困ったことがあったら言ってね」
「うん。ありがとう……」
何やら彼女の声が引っ掛かった。
どこかで最近聞いたような──そんな不思議な感覚であった。
──まぁ、これだけの人間が居れば、一人くらい知っている人と同じような声質の人は居るだろう。──と、ちょっとした気掛かりを僕はさらりと流した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます