第22話 冷たい少女


「なるほど、ユキちゃんは雪女か」


「ゆゆゆ雪女ってわけじゃないです。私はマイナス方向の熱運動を操れるだけで……あ、でも夏には弱いし、冬は好きです」


 旧校舎の廊下を歩きながら、篠宮は白井ユキの体質について説明を受けていた。


「そんでもって、普段から体温調節するために肌を出していると、いうわけなんだね」


 それなら水着姿なんてどうだろう?


 そんな篠宮の考えを見抜いたように、ユキはすかさず訂正する。


「私の着物は、私が出す冷気を遮断するんです。でも冷気がこもりすぎても体調を崩しちゃうから……いろいろ試してこの格好に落ち着いたんです!」


「いや、似合ってるよ」


 うちの親戚は「ミニの着物なんて」と言っていたが、俺は全然有りだな。


 篠宮は自然とニヤケながらユキの着物を褒める。褒められると悪い気はしないようで、ユキはようやく落ち着いて話し出した。


「先生、手を」


「え?」


「信じてないでしょう?冷気を出すって」


 そう言って、ユキはいきなり篠宮の手を取った。


「そんなに冷たくないよ」


 むしろ暖かくて柔らかい。

 そして小さい手だ。


 篠宮はそんな所にドギマギした。


 しかし——。


 ユキが彼の手をギュッと握ると、次第に冷気が伝わってくる。瞬く間に氷のように冷たくなった。


「ひゃっ!信じる、信じるよ!」


 あまりの冷たさに篠宮が手を引っ込めると、ユキはにっこり笑った。




 つづく

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