ゲート・キーパー 秘密の実験場で俺は亜人達の教師になる事にした

青樹春夜(あおきはるや:旧halhal-

第1話 二人の出会い



 桜の樹の下で、長い髪を春の風に揺らしていた美しいその女性ひとに出会った時、篠宮ツカサは当然のごとく声をかけた。


 レディに挨拶をしないのは、彼のポリシーに反するのだ。


 更に言うならば、ここは学校の敷地内で、彼女が白衣を着ていることから、彼は勝手に彼女が自分と同じ教員であると思い込んだ。


 ならば新人の自分は挨拶せねば失礼にあたるだろう。


 彼は大股で彼女に近づくと、声をかけた。


「おはようございます!今度赴任してきた篠宮——」


 彼の声に反応して振り返ったその女性ひとは、間近で見ると彼が思ったよりもずっと綺麗だった。


 歳は同じか少し上。


 長い黒髪に縁どられた色白の肌に、珊瑚色の艶やかな唇、青みがかった黒い瞳は驚いた様に篠宮を見つめている。


 人では無い様な神秘的な雰囲気に息を呑み、篠宮は口を閉ざした。


 が、反射的に彼女の手を取っていた。これもまた彼の習性である。なのでセクハラとか言わないで頂きたいが、もちろんいきなり手に触れられた女性は顔から血の気が引く。


 ぞぞぞ。


 悪寒が彼女の体に走る。


 しかし生憎あいにくなことに篠宮は多少相手に引かれても気にしない、謎のポジティブさを持っていた。


 彼女の手を取ったまま、改めて挨拶をする。


「今度、この学校に赴任してきた篠宮ツカサです。いやあ、いきなりおうつくしい方に会えて嬉しいなぁ」


 ヘラヘラとした台詞セリフにその女性はキレた。


「その手を離せぇぇぇ!!」


 怒鳴り声と篠宮の頬を叩く音とが、長閑のどかな桜並木に響き渡った。




つづく

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