同志のさくら

葉城野新八

同志のさくら

「山形県立奥野山高等学校、第百期卒業生――」


 この三年間で、最高一番の返事をしなければならないと思った。

 腹を膨らませ、拳に力をこめ、身構える。


「三年一組、古家耕太ふるやこうた

「はいッ」


 できた。

 一筆書きの返事。

 もう後戻りできない、高校生活最後の返事。

 立ち上がった僕は背筋をピンと伸ばしたまま、壇上に立つ校長先生の優しげで、でもどこか悲しげな顔を不動で見据えていた。

 愛おしい人の名が呼ばれる瞬間を――息もせず、待つ。


「三年一組、在原ありはらさくら」

「はい」


 左隣で制服の擦れる音がして、しなやかな身が立ちあがる気配を感じた。

 僕はちらりと横目で視線を送り、視界の端にさくらの横顔を見る。

 ツンとした鼻、薄い唇、少し潤んだ円らな瞳。

 芸術家が凝りにこって描いたような顔の輪郭が、開け放たれた扉からさしこむ春陽を浴びて浮かび、繊細に起伏している。

 肩甲骨下まで、黒艶を乗せた長い髪がまっすぐに垂れ、春風になでられてはらはらと揺れる。そういえば三年でずいぶん伸びた。

 それにしてもさくらには、奥野山高校の古風なセーラー服がよく似合っているとしみじみ思う。大正浪漫の匂いがする紺色のモダンデザインの制服。今風に膝上まで詰めたスカートの裾がひらひらと揺れる。

 うっかり迷いこんできた桜の花びらが一片。スカートからすらりと伸びた長い脚に、張り付いて留まろうと試みるのであるが、滑らかな白い肌はとりつく島をも与えず、花びらはどこか未練を残したように、春風で押し流されてゆく。

 今年も奥野山村の冬は、例年どおり郷一面が深い雪に包まれた。なのにさくらの肌は、せっかく降った新雪よりも白く、もっと眩しかった。

 登校後、先生たちと雪かきをした場面が脳裏に甦る。さくらが白い息を吐きながら、僕に向けてくれた愛らしい笑顔が思い浮かぶ。にわかに胸の真んなかをしめつけ、息苦しくさせる笑顔。それでいて心地が良いのだから不思議。高校生活三年間のうち、いったい何千、いや何万回、さくらを見てそう思ったのか知れない。

 僕が過ごした高校生活の視界のおよそ九十五%は、さくらの色んな表情で埋め尽くされている。

 だが突として、僕の勝手な回想を掻き消すように、担任が手元の名簿をパタン――と閉じる音が響いた。


「以上、二名」


 そう。僕とさくらはずっと二人きりで高校生活を送った。もう新規入学を受けいれていなかったので、後輩はいない。奥野山高校は僕たちの卒業を待ってくれていたが、とうとう百三年限りで廃校となる。

 奥野山高校を誇らしく思う人は多い。その象徴は何といっても、モダンな空気を内包する、大正時代に建てられた校舎と講堂。僕は登校するたび、タイムスリップするような心地を覚えたもので大好きだった。さくらも大好きだと言っていた。

 歴史は深い。さかのぼること百三年前、江戸時代まで城郭があった当敷地に、桜花女学校と奥野山農学校という男子校ができた。近隣の男女はここへ通うのが定番で、戦時中は、数々の悲恋があったとも聞く。両校は昭和二十一年に合併となったが、今でもなお、八月十五日には慰霊式典が催されている。

 だから僕たちは、村民の思い出が詰まったこれらを守ろうとして、町村合併後にできた近隣市の高校ではなく、あえて奥野山高校に入った。来年からは、大正建築遺構の文化財として、保護されることが決まっている。

 ワックスがけしたばかりの講堂のなかに、今日、両親だけでなく全国から各世代の卒業生が集った。僕たちへ盛大な拍手を送り、感慨深げに涙してくれている。同級生はたった二人だけど――いや、二人きりであることが僕は心から嬉しくて、毎日を甘い夢見心地で過ごした。

 だけれども、ついに愛おしい日々が終わってしまう。

 夢の結末がどうなるのか、最初からわかってはいた。

 四月から、僕の視界から忽然と、さくらがいなくなってしまうのだ。


  ※ ※ ※


 さくらという美しい少女は、中学三年の頃、急に僕の視界にあらわれた。

 奥野山村は、ごくごくありふれた中山間地にある人口五千人足らずの郷邑で、すでに高齢化率が六割をこえた過疎地でもある。さくらんぼと桃などの果樹栽培が盛んで、他に目立った収益源こそないが、村で収穫されるさくらんぼは、皇室御用達となった歴史があり、銀座の高級フルーツパーラーにもならぶ。なにをかくそう、その礎を築いたのが奥野山農学校の卒業生たちだ。

 そしてのどかな村の真ん中には、縁起から千年を数える小さな神社があった。

 さくらはそこで代々神職として仕える家に生まれた。

 この神社に伝わる巫女の踊りは無形文化財ともされているのであるが、さくらはそれを受け継ぎ、最初は巫女として僕の前に立った。

 それはそれは圧巻だった。

 夜闇のなか、覚束無い松明の明かりのなかで浮かぶ舞殿。

 華奢な体にぴたりと張り付く長い垂れ袖の白衣、ふっくらと膨らむ鮮やかな朱色の袴。横から見ると細い腰がなおさら強調され、動くたび、薄暗がりのなかで黄金の髪飾りが煌煌きらきらと輝く。

 さながら一晩だけ、気まぐれに降りてきた天女のようだった。

 さくらが長い白布を両手で円くまわしながら、よどみない所作で舞い踊る。皆がぽかんとその姿を見上げ、ため息を漏らした。薄い唇に小指でトンと小さく落とされた紅は、まるで桜の花びらのようにも見え、ひらひらと、ひらひらと気儘にただよっている。

 舞殿の上からさくらは僕を見つけ、少し気恥ずかしそうに微笑んでくれた。

 瞬間、僕は生まれてはじめて、正体をつかめない淡い恋心を知ったのだと思う。

 以来、さくらとは暫く会えずにいたけれど、奥野山高校の入学を機に再会を果すことができた。


  ※ ※ ※


 卒業式典を終えたさくらは、薄紅色の着物と袴に着替え、皆の前にあらわれた。

 どよめきにも似た溜め息が漏れるなか、長く続く桜並木の中央を歩いてくる。その様は百年前の女学校の生徒がやってきたとしか思えず、頭の高い位置で結ばれた桜色のリボンが歩くたびに揺れて、僕の心をからかうように撫でた。

 卒業生の大人たちはこぞってスマホを高くかざし、さくらの姿を写した。地方新聞の記者は、しきりにアングルを変えながら夢中でシャッターを切っていた。

 そこを通りぬけてきたさくらは、助けを求める上目遣いで僕を見たあと、両腕を伸ばし、身をよじりながら晴れ姿を披露してくれた。


「ねぇ、似合うかな」

「うん、とても……。凛としていて可愛い。百年のなかでもさくらが一番可愛いと思うよ」

「エヘヘ、そうかな。言ってくれるね。耕太も似合うよ、バンカラ姿。きっと背が高いからだろうね」


 さくらの言うとおり、僕は百年前の男子たちがやっていたバンカラの装いをしている。

 学帽を目元が隠れるほど深くかぶり、学生服に素足で高下駄。上に長いマントをまとう。

 鏡に映った僕は、たしかにかっこいいというか、歴史の教科書で見た青年将校みたいに男らしかった。百年前に生きた年頃の女子たちが、男子に何を望んでいたのかが現われている服装だと思った。自然と、背筋が伸びてくる。


「ところでその着物と袴、どうやって準備したの」

「あァ、これね、第一期の女学校総代だった人のものを、わざわざ染め直して貸してくれたんだってさ。すごいよね」

「へぇ、だから本物みが出ているというか、いや、本物だもんね、それ」

「そう」


 この高校では、桜花女学校と奥野山農学校の創立から続く卒業セレモニーがある。毎年男女の成績優秀者が総代となり、昔の服装をして桜の苗木を記念植樹するというものだ。

 ゆえに校門まで続くまっすぐな長い道の両脇には、左右それぞれ九十九本の桜が植えられている。卒業生によれば、この総代を目指して、入学から勉強を頑張り続けた人があったほどだという。戦時中でさえ、儀式は途絶えずに続けられた。

 しかし時代が下るにつれ、どんどん受験者が減って定員割れを起こし、とうとう僕ら二人だけになってしまった。僕とさくらはこれをやるために、この学校へ入るよう宿命付けられたところがある。

 そう、僕たちは宿命を背負った二人――だったのだ。

 卒業生たちは、桜の苗木を植樹する二人を見て、自分の青春時代と重ねあわせているのだろう、ふたたび声をつまらせて涙し、拍手喝采を送ってくれる。

 僕もさくらも入学について迷いがなかったわけではない。卒業後の就職や進学が不利になるのは明らかだったからだ。だがやはり、この高校に来たことは間違いではなかったとあらためて思う。さくらも同じ心持でいることだろう。

 僕たちは揃って、深々と頭を下げた。


  ※ ※ ※


 すべての式典が終わった後、講堂で賑やかな謝恩会が催された。

 なぜか僕とさくらは、新郎新婦のように雛壇へ座らせられ、卒業生たちから入れ替わりで「ありがとう」と感謝されたので少し恐縮した。あとは酒盛りがはじまった頃合を見て、未成年の僕たちは帰宅することにした。

 さくらはふたたびセーラー服に着替え、僕は普通のブレザー姿に戻る。まだ満開とはいえない桜並木の下、二人仲良く肩をならべてくぐりぬける。

 さくらは少し疲れた様子でいた。


「さくら、疲れたでしょ」

「うん、少しね。着物なんてはじめてだったし。あれさ、お腹苦しいよ、かなり。昔の女の人はたいへんだね、やっぱり」

「そっか」


 少しうつむき加減でいる横顔が左下に見えた。

 さくらは今、何を思うのだろう。


「ねぇさくら、もしかしてセーラー服を脱ぐの、寂しかったりする」

「――うん、さすがに三年間もこの格好でいると、愛着もわくよ」

「へぇ、そういうものか」

「耕太がさ、この姿を見て毎朝可愛い可愛い言ってくれたし、写真もいっぱい撮ってくれたから、ついこっちもその気にさせられたのかもね」

「いや、だって、さくらをこの学校に誘ったのは俺だったし、少なからず責任を感じていたからさ」


 そうだ。僕はさくらの写真を沢山撮った。軽く万枚は超えていると思う。

 色々な表情を撮った。

 笑う顔、

 怒った顔、

 照れる顔、

 少し困った顔。

 どれもこれも、色あせないで欲しい最高の瞬間。

 そして、手放したくない特別な時間――


「ねぇ、さくら。折り入ってお願いあるんだけど」

「え、なァに」

「とても言いにくいんだけどさ」

「うン、何をいまさら、早く言いなよ」

「あのさ――いや、やっぱ言いにくいな」

「もう、まどろっこしいなァ、早く言ってよ」


 さらに十往復以上も躊躇ったあと、僕は目を閉じ、思い切って、一筆書きに願望を叫んだ。


「キッスして欲しいんだけど」

「はァッ!?」


 さくらは目を丸くして、呆として僕の顔を見上げる。


「耕太、いま、なんて言った」

「――いや、だからさくらにキッスして欲しいんだけど」

「それ本気で、言ってんの……」

「うん、心の底から本気も本気。高校生活、いや、さくらとのファーストキッスを青春の思い出にしたい」

「いやいやいやいや、ちょっと待って。ちょっと落ち着いてよ」


 さくらは驚いたというよりも呆れ顔で、目頭を指先でつまみ、揉み解してから言った。


「――だってさボク、男だよ」

「わかってるって、それは言われなくても当然わかってるんだよ。だけど、駄目なんだ。どうしても止められないんだよ、この気持ちだけは」

「いや、それにさ、ボクは彼女もいるんですけど」

「わあああああぁ――やめてッ。それ。もう二度とその可愛い口から言わないでほしい。この縺れに縺れた、得体知れぬNTRネトラレ感と、やり場のない嫉妬で頭がおかしくなりそうッ」

「ううん、とはいえ、さぁ……」


 そう、そうなんだ。

 在原朔良ありはらさくらは、まぎれもないストレートな男で、幼稚園の頃から奥野山村で共に遊び育った幼馴染でもある。

 ではなぜセーラー服を着て三年間を過ごしたかといえば、僕らの世代に女子の入学者がなかったためだ。

 百年近く受け継がれたクラシカルなセーラー服と卒業セレモニーの伝統が、廃校になる第百期にして途絶えてしまう。そう懸念した全国数千人の卒業生と、村民全員の署名が村長の手元に届いた。村長は三日三晩なやみつづけた挙句、巫女踊りをやっていた朔良のことを思い出し、日参して頼み込んだ――という経緯があった。

 ところが朔良は、長男で姉妹がいなかったので渋々巫女踊りをやっていただけに過ぎず、セーラー服を着ることなど当然にいやがったが、田舎の同調圧力に屈した両親から懇々と説得された末、仕方なく折れ、いわゆる男の娘として高校生活を送る羽目になった。

 その代わり、四月から村役場に勤めることが入学から決まっていた。承諾する条件をそれにした朔良は賢い。

 ちなみに僕は、農協への就職が決まっている。というわけで朔良とは四月以降も会えるのであるが、翻って女の子の姿をしたさくらには、もう永久に会えなくなる。

 九十五%もさくらで満たされた僕の気持ちの行き場が、消えてしまう。これはまさしく失恋に他ならず、四月からの僕にとって深い憂鬱になっていた。


「ところでさ、耕太、なんでそんなにボクとキスしたいの」

「それは……だって、俺のさくらは、四月から男の朔良になって跡形もなく消えてしまう。ならば、さくらとのキッスを青春の思い出にしておきたいと考えるのはごくごく自然なことだろう」

「待て、待ってよ。俺のさくらってさァ……。キスもなにも、その前に修学旅行で一緒にお風呂まで入ってるし」

「いいや、違う。ファーストキッスは特別なものだと思う。俺は中三の頃からずっと、お前のために守り続けてきた」


 さくらはやれやれと頭を振り、深く嘆息して、細い指先で長い髪をかきあげる。

 好きな仕草のひとつだ。この期におよんでまた僕の胸をしくしくと締め付ける。


「いや、実はさ、四月以降もこの格好のままなんだよね」

「へ」

「ホラ、チェリー大使やってるじゃない。男の格好になると言ったらさ、さくらんぼ部会の人達が必死の形相で押し寄せてきて、そのままでいてくれって言うの。さらに桃部会の人達までが来て、ピーチ大使もやってくれと言ってきたんだよね。村役場に勤める身としては無下にできなくてさ、新しい大使が見つかるまで、このままでいこうと思うんだ」

「そう……なのか」


 チェリー大使とは、いわゆるキャンペーンガールのこと。

 高齢化率六割のこの村では、高校を卒業すると年頃の女子たちは東京か仙台へ出ていってしまうので、適任な若い女性がいよう筈もなく、これもまた村長直々に懇願されてさくらはうけおった。もしも拒否すれば村八分になってしまうから、やる以外の選択肢が残されていなかったのではあるが。

 東京の表参道に村のアンテナショップがある。

 去年さくらが店頭にたったところ、どんどん人がやってきて近隣交番の警官が出動する騒ぎになり、何とさくらんぼが昨年対比五百%で完売となった。しかもさらに、話題を聞きつけたロスカーという大きな芸能事務所のスカウトまでが、熱心に口説きに来るというおまけがついた。

 さくらの凄さはこれだけでない。

 大人から頼まれて僕がSNSアカウントを開設したところ、あっという間に一万人のフォロワーがついて、全国から発注が押し寄せた。こんどはそこを足掛かりとして、さくらんぼのネット通販がはじまる予定もある。さくらが男であることは、村外不出の最重要機密だ。

 味をしめたのは村役場と農協。こんどは桃を売ろうと画策していると噂に聞いてはいたが、まさかさくらがピーチ大使までやることになろうとは――ただただ、ファインプレーであると思う。

 心のなかでガッツポーズをしている僕の耳に、意外な言葉が届いた。


「――わかった。いいよ。してあげる。キス」

「えッ……いいの」


 無言のまま、さくらはこくりと首を縦に降る。

 夢じゃないよなと思った僕は、頬を全力で一発張ってみる。

 現実だ。

 しっかり痛い。

 さくらは目線を逸らして言う。


「ボクはこの格好を続けてきたからこそ、数少ない村内の就職を勝ちとられたわけで、その半分はずっと応援してくれた耕太のおかげでもあるわけだし。あとは四月からボクたちは奥野山村に残り、ここを盛り上げて、繋いで行く同志になるんだから、そこまで言ってくれるんだったら、減るものでもなし、可哀想だからやってあげてもいいけど……」

「同……志。そうだな、俺たちは同志だ」

「――でもね、一つだけ条件がある」

「え、何」

「彼女つくってよ。ボクのせいで彼女をつくらないでいて、婚期を逃しでもしたらシャレにならないからさ」

「わかった、絶対につくる、頑張るから。絶対に絶対につくるッ」


 さくらが円らな瞳を潤ませ、頬を桃色に染めて、じっと僕の目を見ている。

 暫し呼吸を止めて、二人のあいだに無言の時が流れた。


「――あのさ、耕太」

「なッ……何」

「目を瞑ってくれない。男同士とはいえ、いくらなんでも恥ずかしいし」

「あ……これはしたりッ。そそそそ、そうだよね、うっかりしてた、うん――」


 僕は目を瞑り、さくらから見えないように唇を舌先でぺろりと撫で、その時を待った。

 正面で制服が擦れ、こちらに近づいてくる気配がする。

 ふわりと、甘い香りが鼻腔を覆う。いつだったか、長い髪の毛は女性用のシャンプーでないと枝毛だらけになると言っていたのを思い出した。

 やがて――

 これまで、僕が十八年間の人生で体験したことがない、やわらかな何かが、僕の唇を軽く撫でてきて離れ、またもう一度戻ってきて、触れて、ぴたりと重ねられた。

 それが三秒だったのか、十秒だったのかはわからない。

 二人のまわりだけ、時間が間延びしたような錯覚を覚えた。

 不思議と、長らく僕の胸の真ん中を締め付けてきた息苦しい感覚は、ほんのりと温かな熱に変わり、沁みて、心を落ち着かせる。

 あとはさっき、さくらが謝恩会で温室栽培のさくらんぼをパクパク食べていたせいだろう。何年も脳裏に思い描いて掻き消してきた念願のファーストキッスの味は、甘みの後に淡い酸味がやってくる奥野山産さくらんぼの味がした。

 そういえば――奥野山産さくらんぼのキャッチコピーは、『ひとつ食べたらふたつ、ふたつ食べたらみっつ、あとはもう止まらない』という、ひどくベタなものだったと、夢見心地のなかでうっすらと思い出した。

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