第16話 「それでも消えないもの」





秋の顔をした町の中で

黄昏の空に染められて

意味もなくひとり佇んで


何もかも投げ出して逃げ出した夏の日が

まるで遠い昔のよう


夢に希望を添えて歩み出した未来への道

伸ばした手が掴んだものは何か

今となってはもう忘れてしまった

遠い、遠い昔の話だ



夢を詰め込んだ荷物を

背負い出たこの町に

挫折でいっぱいになった荷物を

引き摺りまた立って


何もかも無くして歩くこの町で

それでも消えないものが

それでも手放せないものが

紛れもない僕なのだと気付く



黄昏に染まる街の中

白く浮かぶ月とふたり佇んで

遠い過去たちに手を振った










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る