第6話 「月をなぞる」





静かな夜空を泳ぐ孤高の月

その姿に触れたくて

その光に触れたくて

手を伸ばしその輪郭を指でなぞる


カッターで紙を切るように

夜空を切る

その輪郭をなぞるように

月を切り取る



掴んだ月はそれでもまだ美しく

輝き続けるだろうか

触れてしまったら

人という汚れに染まって

ただの石のようになってしまわないだろうか


触れられないからこそ

月は美しく輝き続けられるのだろうか

誰にも触れられない

その孤高さ故の寂しさはあるのだろうか




こんな風に想うのは人だからなのだろうか




それでも月に触れたいと思うのは

何故なのだろうか


汚れた自分を

切り裂いた夜空の向こう側へ

投げ捨ててしまえたら

月と話が出来るだろうか






今夜も月は綺麗だ

僕はどうだろうか










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る