狼の少年と猫の少女は恋をする

山豹

プロローグ


  人は誰しも秘密を抱えるものだ。


  だけど俺の様な特殊な秘密を抱える人はそうそういない。というか、ほとんどいないだろう。逆にいた方がびっくりする。


  けど他の人にバレたら、絶対に大変な事になるから軽々しく話せない。私が抱えている秘密はそんな類いのものだ。


  別に、人間関係とかそういうものではない。


  いじめられてるとか友達がいないとかではない。


  簡単に言うとこうなる。

  人間であって人間ではない。

  人間の血は流れているけど別の血も流れている。


  例えば俺には──狼の血が。


  例えば私には──猫の血が。


  父親が狼人間で母親は普通の人間。その二人の間に生まれた俺は父親と同じ──即ち、狼になれる人間。それが俺、大上おおがみ大雅たいがだ。


  母親が猫人間で父親は普通の人間。その二人の間に生まれた私は母親と同じ──即ち、猫になれる人間。それが私、玉木たまき美希みけだ。


  狼人間だろうと性格はあまり狼らしくないと父親に笑われた。そういうところは人間らしさが強いのだろうと俺は思う。


  猫人間と言ってもあまり猫らしくないと母親に笑われた。そこら辺は人間らしさが勝ってるのだろうと私は思っている。


  だが最近、一つだけ別の秘密が増えた。

  それは、それだけは家族も知らない。

  ただ一人、自分しか知らない秘密。ほんの些細な隠し事。

  現在、十七歳。

  高校二年生。


  俺は、一人の少女に恋をしている。


  私は、一人の少年に恋をしている。

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