「Festival de la fleur」
大気圏に突入した機体が、徐々に高度を落としていくと。
雲間から、鮮やかな色彩が見えてくる。
「ここからの眺めも、綺麗でしょう?」
そういう彼の言葉どおり。
“花の惑星”は、やがてその全貌を、余すことなく披露した。
“Planete de la fleur”
その名の通りに。
「何て言うか・・・ニルヴァーナ、お前の故郷っぽいな」
言って、黒尽くめの男が苦笑した。
「それは、褒め言葉と思っていいのかしら?ゼロ」
きらびやかな装飾を散りばめた、けして目に優しくはない色彩のドレスは、彼が大げさなアクションをとるたびに、しゃらしゃらとにぎやかな音を立てる。
「まぁ、今日は、年に一度の復活祭なんだから。いつも以上にあでやかで、華やかで」
「要するに、ど派手にやらかしてるってことだろ?」
かつての戦争で、この惑星も壊滅的な被害を受けるが、奇跡的に蘇ることが出来た。
それは、とあるひとりの研究者の執念と。
この惑星自体の、生命力によるもので。
灰色に凍りつき、黒く冷たい雨に打ちつけられ、色彩を失っていた大地は今や、見違えるほどの変貌を遂げている。
「なぁ、ニルヴァーナよ、ところで」
「なぁに?」
「ここの開拓者は、何でまたこんな花まみれの星造ろうなんて思い立ったんだ?」
「そりゃ、決まってるじゃない」
「?」
「綺麗だからよ☆」
まぶしい笑顔で、彼は清々しいくらいに言い切った。
呆気に取られてしばし言葉を失うも。
「・・・・・・だな。」
―きっと、こいつみたいな発想の奴が、造ったんだろうな。だから、この星の奴らはみんな、こんなにも陽気で、やってられるんだろうな・・・
不思議と疑いも持たず、納得してしまうゼロだった。
花々で満たされたこの惑星は、美しい見た目は勿論、芳しい香りでも、ここを訪れるものたちを魅了する。
当然ながら、この地で生まれ育つものはもれなく、この恩恵を受けられるのだから。
喜びと安らぎに包まれる、格別のひひときは、繰り返し生み出される命に、受け継がれていく。
(了)
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