第15話 僕は16歳で人生を終わらせたくないぞ

 いきなり僕は後ろから大声で呼び止められたから足を止めて後ろを振り向いたし、それにつられる形で綾香ちゃんも足を止めて後ろを振り向けいたけど、向こうからは翔真が肩で息をしながら全速力で駆けている姿が目に入った。

 その翔真が僕の目の前に来たところで足を止めたけど、その翔真に向かって

「・・・おーい、翔真、朝から元気でいいなあ」

 僕は肩でゼーゼー息をしながら足を止めた翔真に皮肉タップリ(?)に声を掛けたけど、その翔真は呼吸を整える暇もなく

「どうしたもこうしたも無いぞ!どうして龍潭寺りょうたんじさんがお前と一緒にいるんだ!愛美さんはどうした!!」

 翔真はそう言うと、いきなり僕の制服を掴んだから僕は思わず「ぐ、ぐるじい」と唸ってしまい、慌てて翔真が「おー、スマンスマン」と言って手を放してくれた。あー、マジで苦しかったけど助かったー・・・

「勘弁しれくれよなあ。僕は16歳で人生を終わらせたくないぞ、ったくー」

「まあ、気にするな。お前が死んだら香典くらいは出してやるから安心しろ」

「冗談はその程度にしてくれ」

「当たり前だ。冗談に決まってるだろ」

「お前が言うと冗談が冗談では済まなくなりそうだから怖い」

「それはこっちへ置いといて、どうしてお前が龍潭寺さんと一緒にいるんだ?愛美さんはもしかして風邪か?」

 今度の翔真は僕の制服こそ掴んでないけど、殆ど僕とゼロ距離で捲し上げているから、どう考えても追及されてるとしか思えないんだけど・・・

「・・・姉さんなら1年生の勧誘だぞ」

「へ?・・・愛美さん、どこかの部か同好会に入ってた?」

「忘れたのか?」

「何を?」

「南城さんと朝倉さんと3人で何をしてるのかを・・・」

「あー、そういえば・・・あの南城が無理矢理愛美さんを引き込んだんだろ?ホントにどうしようもない女だよなあ」

「逆だよ。姉さんが南城さんを引き込んだんだよ」

「それってマジ!?」

「「嘘じゃあないよー」」

 いきなり僕と雄介の会話に綾香ちゃんが割り込んできたから僕も翔真も綾香ちゃんを見てしまったけど、そんな綾香ちゃんはニコニコしながら翔真と向かい合って話を続けている。

「ボクもさあ、昨日、メグから話を聞かされたよ。それに朝倉さんから『もしよろしければ一緒にやりませんか?』と誘われたのも事実だけど、さすがにボクは初心者だから遠慮したよ」

「「それってマジ!?」」

「ホントだよー。朝倉さんという子はメグが言ってたけど、leadershipリーダーシップがあって熱いたましいをもってるけど、それでいて冷静沈着で的確で、女でなければ本気で惚れちゃうくらいに恰好いいってね。実際、ボクも朝倉さんの腕を間近で見たけどボクがいた中学や高校でも、ここまでやれる子は男子も含めていなかったなあ」

「「へえー」」

「『今年は同好会に昇格したい』ってメグも言ってたけど同時にrivalライバルが強過ぎて困ってるとも言ってたけどね。でもね、それでも真っ向勝負を挑むんだから、ボクとしても少なからず応援してあげたいよ」

 へえー、それは知らなかった、姉さんたちは綾香ちゃんを誘っていたのか・・・まあ、僕は綾香ちゃんとは10年の空白があるから、今の綾香ちゃんが何に興味があって、どんな特技があるのかはまだ知らないに等しい。もし僕と趣味や嗜好が同じなら、もっと気軽に話せるけど、それを根掘り葉掘り聞きだす訳にはいかないからなあ・・・

「・・・まあ、俺たちは同好会どころかサークルにも入ってない、本当の意味での帰宅部だから、俺は愛美さんを応援するぞー!南城を応援する気はサラサラないけど、愛美さんの為なら俺は何でもするぞ!!」

 そう言って翔真は僕の背中をバシッと叩いて『ガハハハハ』と豪快に笑ったかと思ったら、「じゃあ俺は行くぞー」とか言って先に正門に向かって歩き始めたではありませんかあ!だから、僕も綾香ちゃんも翔真を黙って見送るしかなかった。僕はため息混じりで、綾香ちゃんはニコニコ顔で。

 だけどさあ、翔真。お前さあ、ホントに能天気だよなあ。ここまで来ると逆に関心するぞ。翔真の奴、完全に忘れてるけど、僕が綾香ちゃんと一緒に登校した理由を聞かなくても良かったのかあ?

 僕はその時には事実を淡々というつもりだったけど、綾香ちゃんはどう答えるつもりだったのだろう・・・

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