第92話 南の門にて
かつての同級生との会話……挨拶が終わり、南の門へ向かう。
「休憩しよ! ウチ疲れたー」
「あたいもお菓子ー!」
そうだった……完全に忘れてたわ。
「あぁ、そうだね」
何処かにカフェ的な店は無いかな?
あれは……お菓子屋だけどテイクアウトだけか。ん、あれはテラスじゃないか?
「レティシア、あれって……」
「あの店でしたら、お外で休憩出来ますわね……休憩……?」
「よし! あそこにしよう!」
何故か壊れそうなレティシアを無視して、素早く店に移動。
「いらっしゃいませー」
「さ、何にしようか?」
店の中にはショーケースが有り、ケースの中にはお菓子が一杯並んでいる。
「キッカー……何だこれ? サッカー?」
「ウチも知らないや」
「あたい大好きー!」
キッカー……見た目はケーキその物だ。生クリーム主体の物が多く、チョコっぽく見える物もある。
クリスとラーズは要らないって事で、ノーマルっぽいキッカーと紅茶っぽい飲み物を四つずつ購入して外へ出る。
テラスの一卓を陣取り、いざ実食!
「いただきます……ん? 全く甘く無い……酸っぱいぞ?」
「キッカーは、そういうモンだよー!」
ニコニコしたヴァージュがドヤ顔で言う。
「美味しいですわ。蓮斗さんは如何ですか?」
「美味しいんだけど……想像と全然違ってビックリした」
「ウチも甘いかと思った……」
因みに紅茶っぽいのは、そのまま紅茶の味だった。
「この世界では甘いお菓子は少ないかも知れませんわ。蓮斗さんに以前作っていただいた、パウンドケーキには驚きましたもの」
「あたいも蓮斗様のお菓子大好きー!」
ヴァージュは何でも良いって感じがするが……。
「ウチもやっぱりパウンドケーキね!」
「儂もアレなら食べたいのう」
皆の視線が俺に集まる……作れって事か。
「分かったよ、そのうち作るよ」
皆、大喜び。こんな事で喜んでくれるならお安いご用だ。
魔刻の腕輪は十時半を指していた。
午前中に全ての門は無理だな……南の門を終えたら昼食にした方が良いか、食事後に門に行くべきか皆に相談するか。
「なぁ──」
ドカーンッと大きい爆発音と激しい地鳴りが南の方から伝わってきた。
「なんだ!?」
「分かりませんわ!」
「急ぐのじゃ!」
南側には煙が立ち上ぼるのが見え、俺達はそれを目指し駆け足で向かう。
泣き叫びながら大勢の人達がこちらに向かって逃げてくる。
俺達はそれを縫う様に避けて走り続けた。
それにしてもあの煙、魔術結社だろうか?
「見えた!」
そこには破壊された門と、今もなお燃えている守衛小屋が有った。
そして燃えている小屋の前には、十人以上の兵士が燃えながら倒れていた。
その前で一人の男が笑いながらその様子を見ている。
俺達が近くまで来るとコチラを睨み付けた。
「おや……客人か?」
なんて事をするんだっ!
「お前がやったのか!?」
「はぁ? 随分と偉そうなガキだな?」
「お前がやったかのかと聞いている!」
「ムカつくガキだな。だったら何だ? 俺を倒すのか?」
全く悪びれて無い……こんな奴、許せるもんか!
〔看破に失敗しました〕
くそっ! 駄目か!
「相手はレベル120だよ!」
「リアーナ、見えるのか!?」
「ウチには見えてるよ!」
「レベル看破か、小賢しいガキ共め!」
「行くよレティシア! リアーナは後ろへ!」
「分かりましたわ!」
「分かってるから、ウチに命令しないの!」
俺とレティシアは剣を構えて前に出る。
「やる気満々だな。すぐに絶望に変わるがな! はっはっはっ!」
高レベルの余裕ってやつか。
でも相手は武器を持ってない。魔法職であれば、一気にいけるか?
「俺が先に行くよ。その後は頼むよ」
「分かりましたわ。気を付けてくださいまし」
魔法を使う前に縮地術で詰めれば何とかなる筈。
「隠し武器に注意じゃ」
「分かってる……」
男は集中して呪文を唱え始める……今だ!
「我が下僕よ、我が敵を……」
「喰らえっ!」
俺は縮地術で一気に間を詰め、男の左肩から右腰に掛けて斬り付けた。
男は顔を歪める事なく後ろへ倒れる。
「やりましたわ!」
俺が一撃で倒した為、レティシアは踏み込まずに叫ぶ。
でも、こんなに呆気ないものか?
「闇より出でる炎よ……」
「まだじゃ!」
「我が名はリアーナ、火、風、水、土の精霊達よ、我が力と共に
リアーナが魔法を放ち、俺の周りには白く輝く魔法の壁が現れる。
「槍となり我が敵を討て! 闇の火槍撃!」
倒れた男の上空に、炎に包まれた大きな槍が出現し俺に向かって高速で飛んできた。
下がれば皆に被害が……ここで耐えるしかない!
俺は剣を構えて防御に徹する。
「ぐっ……!」
ごぉぉっ! 魔法の槍は激しい音と共に、リアーナの魔法障壁を突き破ろうと回転し続ける。
耐えてくれ!
そう願っていたが、槍の回転は更に速度を上げて消える様子は無い。
やがて、槍の回転により魔法障壁にヒビが入る。
「蓮斗! マズいのじゃ!」
無情にも魔法の槍は魔法障壁を撃ち破り、俺自身に襲い掛かった。
倒れてるのに何故……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます