第81話 趣味のセンス

「蓮斗くん、もう少しゆっくり歩いて」

「なんですの……貴女こそ少しは努力されては?」


 何か賑やかになった気がする。

 レティシアとリアーナ、どっちが年上なのかな? レティシアは壊れなければ大人っぽいし、ヴァージュは子供っぽい。リアーナは謎だらけだ。


「お主は、過去の記憶が有るのかの?」

「と言う事は、其方そのほうもか。我輩も記憶を失っておる」


 知識武器チームは上手くいってるな。

 あれ……俺、ぼっち?


「蓮斗様!」

「ヴァージュが居た!」

「はぇ?」

「いや、何でもないよ。今日の夕食は何にしよっか?」

「あたいはねー……お肉ー!」

わたくしもお肉で良いですわ」

「儂も肉じゃ」

「我輩も肉を所望する」

「ラーズ、流されないで」

「しかし主よ、夕餉ゆうげは要らないのか?」

「ウチらは別に食事するの」


 んー……それも何か違うなぁ。


「リアーナ、御飯くらい一緒にどう?」


 無茶苦茶悩んでる様に見えるな。そんなに一緒に食べるのを躊躇われると、軽くへこむんですけど?


「分かったわ、一緒に食べる」

「流石、我輩の主。心が広いのである」

「ホントお調子者ね」


 何か良いコンビだな。


「お肉で良いかい?」

「問題ないわ」


 夕食のメニューも決まったし、夕暮れまで歩き続けるか。


「蓮斗くん、休憩を要求するわ」

「貴女ねぇ……」

「レティシア、休憩にしよ?」

「蓮斗さんが言うのなら構いませんわ」

「レティシアさんは、蓮斗くんの彼女なの?」


 リ、リアーナ、地雷を踏みやがった……。


「わ、わたくしが蓮斗さんの……か、か、か、か、か……」

「彼女、どうしたの?」

「リアーナの一言がスイッチだったんだ」


 リアーナは理解出来ずに首を傾げていたが、俺からは説明したくないのでヴァージュに任せる事にした。

 それから暫く、進行と休憩を繰り返す。


「蓮斗さん、そろそろ寝泊まりする場所の確保を致しませんと」

「そうだね」


 と、辺りを見渡すが……ここは林の中に有る道の為、どこに陣取っても同じ感じだ。


「道からは少し離れようか」


 いくらなんでも、道沿いでテントは張れないからね。でも、奥に行くと遭難しそうな感じだから、気を付けて場所を決めないと。


「この辺りでどうだろ?」


 異議は無く、この場所で決まりだ。


「ヴァージュ、テントを頼むよ」

「天幕了解ー!」


 リアーナは俺達のテントの横に、小型の三角テントを設営していた。


「三角のテントも有るんだね」

「町で売ってたわよ?」

「そ、そうなんだ。手伝うかい?」

「いや、ラーズに手伝わせるから大丈夫。ラーズ!」


 リアーナが呼ぶと、杖は美少年に変身した。

 我輩とか言うから、侍とか忍者を想像してたんだけど、全く真逆な容姿だったわ。


「可愛いーね!」

「そうかな? ヴァージュ殿も可愛いのである」

「ありがとー! でもヴァージュは蓮斗様のものだよー!」

「そ、そうか……」


 答えに困ってるじゃん。それに恥ずかしいから、そう言う事を言わないで欲しい。


「リーちゃんって幾つ?」


 ナイス、ヴァージュ! 俺も気になってた事をよくぞ聞いてくれた! にしても、いつの間にリーちゃんって……。


「ウ、ウチの事? 十七歳」

「同じだねー!」


 へぇ、俺と同い年かぁ。


「ちょっ、ちょっと待った! ヴァージュって俺と同い年なの!?」

「ん? そーだよー!」

「君も同い年なんだ」

「わ、わたくしだけ、一つ下ですわね……」


 ネガティブレティシアになりそうだ。


「レティシアは若くて良いね!」

「そ、そうですか!?」

「そうだよ!」

「たった一つの差じゃろうに……」


 クリスさーん、黙っててー!


「クリスさんは人にならないの?」

「儂は飯が出来てからじゃ」

「ふーん……どんな姿か楽しみだわ」


 後で見て驚くがいいっ! 天使クリスちゃんをね!


「お肉は焼きで宜しいですか?」

「頼むよ、レティシア」

「蓮斗さんの分は愛を込めて焼きますわ!」

「小娘、儂らの分は?」

「……こ、心を込めて焼きますわ」

「邪心じゃ無かろうな?」

「失礼な事を……」


 二人のやり取りを見て、リアーナがニヤニヤしている。


「君の仲間達は面白いね」

「そうだね。何度これに助けられたか」

「ん? と言うと?」

「どんなに辛くても、このやり取りを見る度に忘れさせてくれるんだよ。たまに困るけどね」

「そっか……良いもんだね、仲間って」


 リアーナって今まで仲間を作らなかったのかな?

 タイミングが合えば聞いてみよ。

 お、良い匂い……焼けてきたかな?


「飯じゃ!」


 クリスが変身! 天使クリスちゃん降臨!


「え! 可愛い!」

「でしょ!」

「でも……何でゴスロリなの?」

「……なんか、すみません……」

「君の趣味か……」


 この後、皆で美味しく肉を頂きました。

 俺の趣味をリアーナに否定されながら。




 王都に行ったらクリスの服を買おう。

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