第121話 読み合い
「今の石化か?」
復活したフロンテは首を振り意識をはっきりとさせる。
こりでもほぐすかのように身体を伸ばし不調の確認をし軽く魔術を放った。
「よし問題なし。次誰だ?」
「では私がやろう」
手を上げたのはリン。
そしてフロイトは、非情に嫌そうな顔をした。
しかたなしにと対峙し、頬を叩いて無理やり集中する。
「んじゃ、掛かって来い」
開始を告げる言葉と同時、リンはフロンテの懐まで飛び込んだ。
読んだうえで後方に飛び退くが、速度においてリンを上回ることなど出来ず間合いから抜け出せていない。
初撃は完全に読み切り手で防ぐもその威力はフロンテの予想以上。
しかしフロンテは予想以上の威力を利用しさらに後方へと下がった。
間合いから抜ける腹積もりでいたが、フロンテは舌打ちをして再び防御の態勢をとる。
相手の攻撃を利用し距離を取る程度、リンは今更驚きもしない。
クロイを相手にした時は、そうして何かしらの工夫をしてしか距離を取ることは許されなかった。
自分が使うのだから当然読んでいた。
二撃目、三撃目と強く早い攻撃を叩きこんでいく。
手の届く距離ならば何かを飛ばすよりも早く拳が届く。
問題は触れられれば身体を飛ばされるという点だが、魔力支配をものにしたリンはもう、魔力支配において完全に上をいかれない限りは肉体に作用する魔術は効かない。
そして魔力支配はリンの方が上、身体を強制的に飛ばされることもない。
まだ型の確認段階であり全力ではないがそれでも近接戦闘はリンが上。
魔力支配によって魔術を完全に防御しているが、魔力支配を掻い潜る術を持っている可能性を考え、最大限の警戒を以て行動の一つ一つを潰し反撃を許さない。
決してフロンテの手に触れないよう細心の注意を払いながら、一手ずつ丁寧に攻める。
決して油断はしない。
攻めるときは情報を整理し理解し判断する。
油断なく、本能を律して理性でもって攻める。
一手一手組み立て、攻める隙は自分で作る。
腕と腕が七度ぶつかる。
弾かれたフロンテの両腕。
空いた胴に拳を叩きこむのが当然の流れだが、フロンテの表情は非常に落ち着いたもの。
ここからの策があるといった表情に、握った拳から力を抜き回し蹴りを放った。
フロンテの瞳孔が揺れ、視線がリンの脚と顔を往復して脚に注視される。
腕に力を入れ蹴りを防ぐがフロンテの身体は蹴り飛ばされた。
地面を数度跳ね転がりながら体勢を整え、左手を地面にあて減速させながら顔を上げる。
フロンテを追って距離を詰めるリンと目が合った。
フロンテの瞳孔は開いていて、その呼吸は間隔が狭く大きい。
その表情は焦り。
今こそ攻め時とリンは拳を握り力を入れた。
フロンテは左手を地面から離し両足で地面を擦りながら防御の姿勢を取る。
リンは拳を放ち、それと同時にフロンテは目を瞑り足を地面から離した。
殺し切れていない勢いによって倒れるようにしながら後ろへと下がるフロンテ、しかしリンの間合いからは逃げられず、着地の出来る体勢でもない。
遅くとも二撃目で仕留められる、そう思ったが、大きく息を吐くフロンテは、どうにも落ち着いているように感じる。
まさかと思った時にはもう遅い。
防御の為と思われた左腕の裏から右手が現れ、距離を詰めるリンに向かって指を鳴らし音を飛ばした。
放った拳は空を切り、ふらつきながら後方へと下がる。
視界が安定しないなか、ちらりと手を叩くフロンテが見えた。
指を鳴らし作った隙で、大本命のより大きな音をぶつける。
数秒耐えたリンだったが、地面に倒れ気絶した。
「油断はすんなっての」
リンの方が地力は上、しかし読み合いはまだまだフロンテが上であった。
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