5話

 結局、その後は白雪さんを振り回すように久しぶりにいろいろ歩いてみた。


 と言っても、あたしも積極的に遊んでる方じゃない。


 大人にならないといけないから、はしゃいで遊ぶってのは子供っぽくて抵抗がある。


 ともかく、友達と付き合ってよく連れていかれる場所を色々紹介した。


 結局、食べ物屋さんとか雑貨とかになっちゃったけど、あたしのレパートリーなんてそんなもんだ。


「えっと、ここでいいの?」


「はい。家の前までなんて間森さんに悪いですから」


 偶然なんだけど、白雪さんとは家が近い方だった。


 ここだと中学までの学区は隣だから、一緒になる事はない。


 だけど、ご近所さんと言えばご近所さんで今まですれ違っていないのが不思議なくらい。


 ともかく、高校の友達の中では一番近い。


 今日、一緒にいる間は白雪さんは一度も笑ってはくれなかった。


 困ったような笑みというかそんな感じはするんだけど、かわいいにこっとした笑みは未だにない。


 あの顔立ちなんだから、やっぱり満面の笑みしたらもっとクラスにもなじめそうな気がする。


「振り回しちゃってごめんね。また良かったら誘っていい?」


 今回ので諦めるのもなんか嫌だし、乗り掛かった舟じゃないけど放置するの嫌だった。


 誘った理由はそんな軽い感じだったんだけど、白雪さんはびくっと震えて後に俯いて小さく言葉を絞り出した。


「うんん、あたしの為ですよね。あんまりにも元気なかったからですよね」


「あー、まあ、そう」


 どうやら、あたしが振り回した理由はしっかりりわかちゃっていたらしい。


 白雪さんと一緒に今日初めて色々話したんだけど、頭はいい印象。


 話を振るとポンポンと返事は返ってくるし、物事もしっかり考えてる印象で同じクラスのみんなみたいに子供っぽくはない。


 だから、これくらいの事は分かっちゃっうんだろうなって思う。


「こちらの事は、もう、大丈夫です。ただ、その、あたし間森さんの傍にいても、いいですか?」


「え?」


「傍にいても、いいですか? あたしは、


 その言葉は小さくて震えてて、白雪さんは俯いたまま。


 だから、逆にすごい真剣で切実な想いだって伝わってきた。


 あの日まで、誰かのためだけに生きてきたのかもしれない白雪さん。


 その誰かが居なくなっちゃって、立ってられないんだ。


 ほんと、こういうところは子供。


 子供を助けるのは、大人のあたしの役割だよね。


 だから、あたしは迷わず答えた。


「もちろんだよ。誰かの傍にいることに、許可なんていらないんだから」


 そのとき、夜の闇に染まり長い前髪で表情が分からないはずの白雪さんの口元が、ほんの少し笑みを浮かべたような気がした。

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