第99話 ラプラスレポート ーちぎった手帳の一片ー

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・対象について

 対象は自身について魔王を名乗っており、現在第三階層にて活動中。

 

 彼の者の能力についてはかなりの不確定要素があり、分析した場合下記のようになる。

 黒炎を用いること。

 黒炎は環を描くこと。

 黒炎は実態を持つかのようにその場で存在し続けるということ。

 以上三点は常にルールとして存在していることが想定。別過去ログを確認したところ、日本という国の神話への関係が推測される。


 が、どこの世界を漁ってもこのような能力を持つものは確認できなかった。ただ、彼の者の真名については候補が見つかっている。

 "  "上皇であるというのが最有力候補であろう。

 通常、その名は神の血を引くものや皇族に与えられる名であるはずなのだ。魔王、つまり『魔』などという、王道から踏み外した名称には適さない。皇族などに敵対するかの様な名称を名乗ったりはしないはずなのだ。


 結論を言えば、出自も能力も不明である。

 これこそが異常なのだ。『神の産道』を通った者は、その基礎情報が登録されている。にも関わらず、この魔王とやらはそこに影も形も見当たらない。" "上皇にあたる文字すら確認出来なかった。

 

 もしかしたら、彼はそもそもイレギュラーなのかもしれない。野良神となり、暴走した『ヨル』が第三階層を目指した理由が彼にあるなら……この異常事態も説明がつく。

 いわば、引力の中心が彼なのか。……あるいは、いや、これは論理の飛躍だ。割愛しよう。

 今現在、あらゆる事件が彼に向かって終着しようとしているように見える。

 今回のエスの件もそうだ。

 漂流物が渦潮の中心に吸い込まれる様に。

 落としたガラス玉が下り坂を転がる様に。

 英雄の持つカリスマに民が惹かれる様に。

 万事万物万人は吸い込まれる。

 恐らくこれから先に起こるであろう事柄にも彼が関わることは疑いない。抜けた第一階層主神を埋める為の階層主神達の議会。その犯人探し。離反を起こした第四階層の主神達。動きつつある神官パラス


 唸りの中心に彼がいるなら、今後も目を離す訳にはいかないだろう。幸い、エスからの誤解も解けた。今現在は敵対状況にない。

 もう暫くは彼に注目しよう。


 と、なればこの文章を見られるわけにはいかない。過剰な重力はあらゆるモノを崩壊させる。正しき者も清き者も、悪しき者も醜き者も、この重力場からは逃れられない。私自身かそうなのだ。きっとこれは間違いない。

 だから、これは見せられない。ロックを掛けさせてもらう。機能的にも、私の能力的にも。

 

 さて、戻らねば。彼らが動き出した様だ。多様的な色彩の黒と、一辺倒な白。真正面から彼らがぶつかるのだ。見届けないわけにはいかない。

 走り書きではあるがここで一度区切らせていただこう。


 記載者:燻製ニ紳士

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