第3話 暴落と懲りない人々03

投資商品を売りつける業界というのは何かにつけて良心も一緒に売り払ったクソ野郎が多いが、不動産の業界はその中でもひどい。


不動産関係で、新規で相談に来られる方は大抵がゴミのような物件をゴミから売りつけられている。今回は、そんな「フドウさん」のお話し。


-----------------------------------------------------

「毎月の返済がマイナスで、困ってるんですよ!ワイは、ワイはどうしたらいいんや!!」

のっけからのハイテンションである。私も、どうしたらいいんだ。


「まーまーまーまー、えっと?フドウさん?落ち着いてください。まずは、事情を聴かないと」


とはいえ。

不動産を業者の言われるがままに買ったら損が出ているという話なので、ぶっちゃけ事情なんぞ聞かなくても大体わかってる。それこそ、バブルが崩壊する前後から使い古されたようなネタではめられたということである。


「はじまりはこうや。ある日、ワイの家に電話がかかって来よった」

はい、パターンはいりましたー!


「営業マンがいうには、頭金0円で不動産という資産がもてて毎月数千円の利益に。しかも、給料からの節税効果もあると、こういいよった」

うん、まぁ、嘘は言ってない。嘘は。


「なるほどですね。続き、いいですか?」


「おう。正直な、はじめは眉につばつけとってんけど、こういいよるねん。【不動産は、景気の影響を受けにくい資産ですし、今は年金なども不安です。お勤めが終わった数十年後に、安定した収入が入ってくるものを持つという選択肢も、悪くないんじゃないですか?】っとな。」


「まぁ確かに、モノは手元にありますからねー」

それはそれとして、今日の晩御飯、何にしようか。


「せやろ?ところが、ふたを開ければ何から何まで話が食い違いよるねん!」


「具体的には?」

うーん、やっぱ肉かな?一人焼肉いっちゃうか??


「まず、家賃。当然やけど、ローンを組むわけや。手元に残りよる数千円の利益ってのは、家賃とローン返済の差額。つまり、空室になれば、ローン返済分の数万円は、丸っとこっちの手出しになるわけや」


「まぁ、そうですよね。ほかには?」

いや、魚もいいな。独り身だとなかなか魚って買わないし、魚にするか?


「節税にもからくりがあった。確定申告の時に、経費に雑費としてなんでも突っ込めますよ!っていいよってんけど、税務署いわく、不動産賃貸の事業に使った費用しかあかんと、こうや!」


「まぁ、そうなりますよね」

食材じゃなく種類での決め打ちもいいな。天ぷらとか。


「しかも、税金が浮くってゆうてた金額もちがう!所得税は還付されるけど、住民税は前年の収入で決まるから、そこで赤字出した分、来年の税金が安くなるからお得でしょ?とこうや!おかげでポケットに入れる予定の金額が狂うたがな」


「なるほどですね。ほかには?」

よし、魚の天ぷら。君に決めた。そろそろ佳境だし、戻ってくるか。


「部屋が空室になったんやけど、新しい入居者を募集する費用とか、前の入居者が汚した分をきれいにするような費用が、販売業者のシュミュレーションからはずれとったんや!」


「そりゃひどい」

とはいえまぁ、よくある手だわな。


「でー・・・どうしたいんですか??」


「何とかしてほしい!」

んな無茶な。


「一応お伝えしておきますが・・・私はマジシャンじゃないんで、すでに発生した損失やらなんやらをゼロにはできないです。あくまで善後策の提案です。いいですか?」


「しゃあない、たのんますわ」



これが、よくある「不動産投資」のはめられた話。

区分マンションで、新築だったらもう役満。大体ひどい目にあいます笑


次は、みんな大好き仮想通貨の「ナカイさん」エピソードです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る