第36話
エドとの婚約は無事に解消された。
少しばかりエドの親がなんか言ってたらしいけど、兄が説得してくれた。
学院で騒ぎになるのを避けるため私の卒業までは解消したことは内緒にしておくことになった。そういうわけでロイドとは学院では話すことができない。学院を受験するときに私が願っていた、学院内でのデートは実現しないわけで、そのことがちょっと不満だ。
「そういうわけで、早く卒業したいの」
エドはまたかというような顔で私を見ている。それほど変なことを言ってないよね。どうせ学院デートができないのなら、もう卒業しちゃってはやく結婚したいなってだけなのに。学院で習うことは難しいことはあまりない。幼いころから家庭教師がいる貴族の子弟には学院で学ぶことなどあまりないのだ。ようはこの学院に通うことがステータスなのだ。私は貴族として育ってはいないけど家庭教師と兄による短期の教育のおかげで学院で学ぶことはあらかた習っているのでスキップできるはずだ。スキップとは三年間も学院に通うことなく卒業できる制度のことだ。学業の成績が終了課程まで学べていることが条件になる。
「そういうわけでって、ただ単に早くロイドさんの花嫁になりたいってだけだろ。そんなことでスキップするのか?」
「エドもスキップするつもりなんでしょう?」
エドだってスキップするのになぜ反対するのよ。それに女性の方がスキップする人は多いのだ。主に結婚するために。だからロイドと結婚するためにスキップすることはおかしなことではない。
「庶民の結婚がそんなに早く決まるとは知らなかったんだから仕方ないだろ。学生のまま結婚なんて無理だし、アンナの両親も学生である私との結婚は賛成してくれないだろうからな」
確かに学院生との結婚は許さないだろう。私には冷たい父親だったけど、妹であるあにーのことはとても可愛がっていて、嫁には絶対にやらないとか言ってたほどだから、アンナとの結婚の許可をとるのは大変だろうなぁ。
「それで貴族をやめるつもりだって言ってたけど、本当に庶民になるの?」
「それは説得されたよ。さすがに伯爵の地位は弟に譲ることになったけど、父が持っている爵位の一つをもらうことになりそうだ」
「あら、それは良かったというべきかしら」
「どうかな。貴族だとアンナが嫌がるかもしれないから不安だよ」
「もともと、アンナは貴族として育っておるのだから大丈夫よ」
「そうかな。今の暮らしの方が楽しそうだ」
「……確かに。あの店も人気だし、エド振られるかも…」
「自分がうまくいったからって、なんてこと言うんだよ」
うん、しょせん他人事。人の不幸はドラゴンの味っていうものね。
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