第15話 ロイドside 3

「まあ、それで、 私があげたポーションをその方に譲ったのね」


 僕はアネットと出会ったときのことを一目ぼれしたことは以外のことは全て話した。


「うん。そのおかげでアネットの弟さんは助かったんだ。譲って本当に良かったよ」

「そう、私も嬉しいわ。庶民の間ではょっとした怪我で亡くなってしまう方もいるみたいだし役に立って良かったわ」

「ポーションがもっと安く買えるようになったら良いんだけど…」

「廉価版のポーションなら冒険者ギルドでも売っているのでしょう?」

「僕は買ったことがないからよくは知らないけど、神殿売られているのとは違うって聞いたよ」


 ポーションは『癒しの魔法』が使えなくても作れるけれど、その分『癒しの魔法』ほどの効果はないと言われている。いわゆる薬師と呼ばれている人が作っているポーションは冒険者ギルドで売られている。神殿で売られているポーションよりは効果はないけれど、庶民でも無理をすれば買える額らしい。効果のほどはわからないが…。


「冒険者ギルドで売られているのは怪我に特化しているのよ。神殿のは病にも効果があるから、でもルウルウ風邪には効果がないのよね。そのあたりは何故なのかわかっていないので研究中ね」


 ルウルウ風邪とは冬になると流行しだす、風邪とよく似た症状だけど重症化すると死に至る厄介な病だ。とにかく感染力が強く、『癒しの魔法』やポーションでは治らない。近年では薬師が開発した丸薬で症状が改善されるようになったけれど、その年によって微妙に薬に調整が必要らしく、大量生産はできないので少なからずの死者が出る。


「それで? その娘とは今でも交流があるのでしょう? 弟さんが治ったことを知ってるくらいだもの」

「まあ、そのあと家に送ってどのあたりに住んでいるのかはわかったから、いつか会いに行こうって思っていたら彼女の方からお礼にって刺繍をしたハンカチをもらったんだ。それからはまあ、一緒に薬草採取に行ったりしてるよ」

「ふ~ん、でも庶民なんでしょ?そのあたりはどうする気なの?」

「それについては大丈夫。彼女は魔法が使えるし頭もよいから、マンチェス学院に奨学生として通うことになるからね」

「そう、それなら大丈夫ね」


 マンチェス学院で優秀な成績をおさめた庶民が貴族の人と結婚した例は結構あるのだ。


「ああ、でも最近会えないのが心配かな。彼女は綺麗だから」

「まあ、そんなに? 庶民なんでしょ?」

「彼女の父親も魔法を使えるって話だし、貴族の血が入ってるのかな。アネットは金髪碧眼で、マンチェス学院の制服を着たら庶民には見えないと思うよ。入学したら学校でいつでも会えるようになるから今から楽しみなんだ」

「ふふふ、ご馳走様。幼かったあなたが恋をする年になったのね。両親が反対するようだったら私からも口添えしてあげるからいつか連れていらっしゃい。会ってみたいわ、その方と」

「わかった。次に来るときにでも一緒に来るよ。姉さんのポーションのおかげでアネットと会えたんだからね。きっとアネットも会いたいって思っているから喜ぶよ」


 その時は本当に連れてくるつもりだったんだ。まさか彼女が庶民から貴族になってしまっているだなんて、考えもしなかったのだから。

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