第12話アイリーンさんの秘密

アイリーンさんに寮へ案内してもらう道中、いくつかというかたくさん聞きたいことがあった。


「あ、あのアイリーンさん。さっき学院長が言ってたんですけど、アイリーンさんのご両親はいったいどのような方なんですか?」


 俺は少し震えながら言った。だって圧力かけられるって怖いよね普通に。


「あら、そういえば言ってなかったわね。私の両親、というか私の家族はここ、トルステイン王国に仕える貴族よ」


「……えっ?」


 今なんか聞いてはいけない単語を聞いてしまったような気がした。


「だ、か、ら、貴族よ、貴族。エスパーダ伯爵家が娘、アイリーン=エスパーダです」


 アイリーンさんはいつもと変わった口調で俺に言ってきた。


「き、貴族様!? ご無礼をお許しください!」


 俺は必死に許しをこうた。


 アイリーンさんは気にしてない、と言ってくれた。


 俺はかなり混乱しているが一つだけ聞いておきたいことがあった。


「あ、あの、なんで最初に会った時に貴族ということを言わなかったんですか?」


「……王国民の中には貴族をよく思っていない人もいるからね。特に初対面の人には気をつけてるわ」


「貴族様も色々と大変なんですね」


「そうなの。まあ身分を隠していてごめんなさいね。別に驚かせたいとかそんなんじゃないから安心して」


「ええ、分かってますよ」


 学院長も大変だな。伯爵様に圧力かけられたら逆らえないよ。


 ちなみにだけど、この国の階級を上から並べるとこんな感じ。


 ・王族

 ・貴族

 ・平民


 貴族にも階級があり、順に並べるとこんな感じ。


・公爵

・伯爵

・子爵

・男爵

・騎士爵


で、王国は広く王族だけでは治められない。よって貴族が代わりに領地を預かるというケースが高い。しかしほとんどの貴族は王都の貴族街にいて、いざとなれば王城に駆け付けられるようになっている。なので領地には代理人を置くことが多い。


 俺はちなみに平民だ。


 まあ、昔は階級が全てだったが、今はほとんど形式になっている。

 

 言い伝えられている大賢者は平民出身らしい。


 まあ今は置いといて。


 俺はもう一つ聞きたい事を聞いてみた。


「……あの、なぜ学院長の秘書をされているのですか?」


 アイリーンさんは笑いながら答えた。


「私はね、実はこの学院の卒業生なの。何かしらこの学院を卒業した後も関わりたいと思ったのよ。でもね、教師になりたいとは思わなかったわ。私はね、とにかく陰で仕事をする人が好きなの。あ、後ろ暗い職業のことじゃないわよ?なんていうかな、誰も知らないところで活躍するのが好きなの」


 「誰も知らないところで活躍する人、ですか。なんだかその気持ち分かります」


「ま、そんな感じでこの仕事をやってるの。学院長をいじれるって結構いい仕事だと思わない?」


「あ、あはは……」


 意外と喋ったら面白い人だけど、アイリーンさんって実は性格悪いんじゃ……。


「今、なんか悪いこと考えたでしょ?」


「い、いえっ! 何も考えていません!」


 アイリーンさんは俺の双眸を透き通った目で射抜く。


「ふーん。ま、いいわ。早くいきましょ」


「……そうですね」


 どうやら俺の周りには勘がいい人が多いらしい。特に女性。


 そうして俺は少し疲れた感じでアイリーンさんについていった。










「こ、ここが寮ですか!?」


「ええ、そうよ。Sランク校だから全てが規格外よ。こんなことでびっくりしてたら、疲れてしまうわ。慣れた方が身のためよ」


「は、はあ……」


そう言って話している俺達の前に立っている建物は凄かった。

寮と聞いていたので、せいぜい二階建てくらいの建物かなと思っていたが、まさかの五階建てだった。ワンフロアも外から見ても広いことがわかる。


「ノルン君の部屋は一番上の階よ」


「部屋はどこでしょうか?」


「ワンフロア全て。大型バスルームあり、トイレあり、トレーニングルームあり、エレベーター付き。ま、住んでて、部屋から出なくてもトレーニングできるわ。これも推薦の特待制度よ」


 一気に情報が入ってきて、頭がこんがらがってしまったが一つだけ分かったことがある。


「これがSランク校、すごい……」


 これだけの恩恵を与えられて、鍛錬しないわけにはいかないよな!


「あ、あの、特訓していいですか。そのトレーニングルームとやらで」


「構わないけど、明日は入学式だから程々にね。部屋には制服が置いてあるわ」


「あの採寸をした覚えはないんですけど……」


「そんなのレストランで食事をした時しかあり得ないわ」


「そ、そうですか」


 どうやらアイリーンさんはハイスペックな秘書のようだ。どっかでストレスが溜まってもおかしくない。学院長をいじるのは仕方のないことなのかもしれない。


「はい、これ鍵よ。これを使って五階に入ることができるわ。無くさないように」


「ありがとうございます。特訓しないといけないので、それでは!」


 そうして俺は寮へ入っていった。

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