第3話いざ王都へ

『起きるのじゃ~。おーい、ノルンくーん』


 夢か?どこからか声がする。


『起きるのじゃ~、ノルンくん王都に行くのじゃろ~?』


 どうやら声の主は俺の事を知っているらしい。


『なぜ起きないのじゃ~?体当たりするか……。ソイッ!!』


 その声を聞いた直後、頭に激痛が走った。


「痛ってええええーーーーーっ!!」


 その声を聞きつけて廊下からドタバタと慌ただしい音が聞こえて来た。直後、俺の部屋のドアが勢いよく開けられた。


「どうしたんだ?ついにおかしくなってしまったのか?」


「ノルンがあんな大きな声を出すなんて……。貴方、どうしましょう」


「心配するな…。そういう時期なのかもしれない。俺にもそういう時期はあった。どうやら中々治らない病気にかかってしまったらしい…」


「そ、そんな、何か処置法はあるの?」


「時間を置かなければならない」


「そ、そうなのね。そっとしといてあげましょう」


 入って来たのは俺の父さんと母さんだ。そんな俺を哀れむような目で見るのはやめてくれよ…。


 そこで、父さんは何か見つけたのか、指を指して俺に聞いてきた。


「なあ、ノルン。お前そんな物持ってたか?」


 父さんが指を指したその先には親指サイズの石像があった。


 は?この石像昨日も見たんだが、何か小さくなってる。

やべえ、これは誤魔化さないとダメだ。俺の性格が疑われてしまう。

 

「あ、ああ、持ってたよ父さん。いや~可愛いよね~、この小ささがちょうど良いんだよ~」


 俺は笑いながら2人に思ってもいない事を言った。


 2人はそんな事を言った俺を見るや否や哀れむような目をこちらに向けて見てきた。


 どうやら逆効果だったようだ。


「き、きっと治るからなっ!それまで人様に迷惑かけるんじゃないぞ?」


 いや、父さん、俺そんなことしないから、大丈夫だから。てかまず病気じゃないから。


「取り敢えず、ご飯を食べないとね。頭が今よりおかしくなっちゃうわ」


 いや、母さん、俺頭おかしくねえから。全部この石像のせいだから。


 そうして2人は俺の部屋から出ていった。嵐のような人達だった。



『ふふっ、災難だったの~』


 石像が喋り出した。


「おい、お前何処から入ってきたんだ?」


『何処からって、ノルンのいるところがワシの居場所じゃよ』


「えっ?なんで俺の名前知ってんだよ、キモチワル!?」


『それはワシが君をずっと見てきたからじゃよ。昨日会った時ワシは言った。今までようやった、と。それが答えじゃ』


「……お前は一体何者なんだ?」


 そう聞くと石像は声色を明るくして俺に言った。


『そんなことより、『魔力回路』はどうじゃ?体に馴染んでおるか?』


 どうやら俺の質問に答えるつもりはないらしい。

俺は抱いている疑問を飲み込んでため息をついてから仕方なく答えた。


「はあ……馴染んでる、かな?何か魔力を動かせる気がするよ。こんな感覚は生まれて初めてだ」


『それはそうじゃ!生まれてから昨日までお主には『魔力回路』が無かったからの』


「ねえ、今更なんだけど、『魔力回路』って何なの?そんな言葉今まででお前以外に聞いた事が無いんだけど…。」


 俺は真剣に聞いてみた。

 

 すると真剣な声で言ってきた。


『それはまだ言えないのじゃ。来たるべき日が来れば教えよう』


「んだよそれ。まあ、でもその来るべき日が来たら教えてくれるんだよな?」


『もちろんじゃ』


 そうして一拍あいてから、石像が俺に喋ってきた。


『ノルンよ。魔法の使い方は分かるか?』


「もちろんだ。出来なかった分、魔法については嫌というほど勉強したからな」


『そうかそうか、それなら安心じゃな。王都の入学試験、頑張るのじゃぞ』


 石像はそういった後、言葉を発しなくなった。

 いや、それが普通なんだ。もっと聞きたい事があったけど、来るべき日に教えてくれるならそれで良いとするか。


 そうして俺はベッドから降りて部屋を出てリビングに向かい、朝ご飯を食べた。










時は流れ、いよいよ王都に向けて出発する時間になった。


「いよいよだな!」


「そうね!」


「ああ」


俺達3人は村人全員で送り出されようとしていた。


「試験、一生懸命やるんやぞ!」


「頑張って!」


「ちゃんと持ち物持ったか?忘れてないか?」


 などいっぱい声をかけられた。



 ちなみに王都までは歩いておよそ2日。リュックには着替え、勉強道具、そしてお金を入れている。何回もチェックしたから大丈夫だ。


「よしっ!それじゃあ行くか!」


「行きましょう!」


「行こう!」


 そうして俺達3人は王都へ向けて歩き出して行った。

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