8月30日(日) 快晴

 帰省の予定を急に立てたこともあり、2カ月置きに予約をしている美容サロンの予約を飛ばしてしまう失態を犯してしまった。

 実家から戻って来て早速サロンへ連絡を入れて予約を取り直そうと思ったのだが、コロナ禍前までのスタイリストから出社を制限された流れからフリーに転身したのだとFacebookで連絡をくれていたことを思い出し、メッセンジャーでコンタクトを取ってみると、その週末の希望した時間で予約を取ることが出来た。

 そのスタイリストが出社を制限されたらしい4月から、その次の6月のカットとパーマは所謂彼の上司のディレクターに当たる人が担当してくれていたのだが、担当者が変わることや、スタイリストからディレクター単価に変わることの説明が特段なされることが無かったことへの違和感も正直感じていた。5年以上も指名していたのだからなおさらだろう。

 ただ、ディレクタークラスの面々がスタイリストやアシスタントを伴わずシャンプーなども全て1人が担いながら店舗を回していたので、元々売上げを見込めないアシスタント分はさることながら、顧客を一旦引き継いだ上層部がスタイリスト達の売上げも一挙に稼いで雇用を維持しているのだったら、凄い仕組みだなとは思っていた。


 予約当日、指定されたビルのエレベーターを降りると、エレベータホールなるものは無く、そこが早速店舗と言うべきかフリーの美容師が利用できるスペースとなっていた。こういった場所は市内でも少ないのだという。

 再会の挨拶と合わせてスタイルについての会話を程々に済ませる中で、当然サロンの話題が移ったのだが、コロナ禍により店舗の維持が難しいとの判断によりスタイリスト以下の従業員はフリーになるか他店舗への移動を余儀無くされたのだという。担当のスタイリストは既に僕のような顧客を抱えたはずだからまだ良いものの、アシスタントクラスの従業員は路頭に迷うのではないか。


 僕達がリモートワークが当然となったように、スタイリストの彼に取っても働き方は大きく様変わりした様子だった。

 これまでのように時間通りに店舗に出社するというよりは、予約に合わせてその共有のスペースを出入りする。当然何時までは店舗で仕事という概念も無くなり、その日の予約分の仕事を熟したら帰宅と、時間の融通も利くようになったという。元々の顧客か、知人を伝っての完全な口コミでの集客は免れないであろうが、今はSNSなんかを使えば如何様にでもなるのではないか。

 手に職とはいったもので、自らの手先の技術を直接顧客にサービスとして提供出来る仕事である。我々のようなIT業界でも、僕のような立ち位置だとフリーになったとしても、どうしても大きな一次請けの企業のプロジェクトに下請けの立場として関わることになるので、実現しようとしてももっと個人向けのサービスへシフトしなければそれは叶わないだろう。


 スタイルの仕上がりは言うまでもなく完璧で、またこれから世話になるだろうと確信しながら彼のLINE@のアカウントにスタンプを送った。「最近はスマホのアプリでカルテの管理も出来るんです」と言いながら、仕上がったスタイルをiPhoneに収めていた。

 会計をしながら僕も、「お店に来るという感じじゃなく、人に会いに来る感じで不思議な感じですね」とお礼を言ってエレベーターに乗り込んだ。

 妻のウケも非常に良かった。

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