第22話「「「だ、大胆!」」」

「そんで、みんなはどこ行きたいんだ?」


 ぼうチェリーホールディングスのショッピングモールに着いた俺たちは、案内板の前で話し合いをしていた。


「そうですねぇ……咲良さくらさん、友李ゆりさん。私から提案があるのですが」


「なになに? というか、私のことは友李って呼び捨てでいいよ。私も結愛ゆあちゃんって呼ぶから」


「わかりました! えっと、私たち三人で順番に尋斗ひろとさんと行きたいところに行くっていうのはどうですか?」


「たしかに、それなら私たち三人が平良たいらくんと二人でいられる時間も多く取れるわね……いや、私は二人きりなんてこだわらないけどね! ほら、霧宮きりみやさんがさ!?」


 咲良はあわてて友李に話を振った。ツンとデレの波の周期が短かすぎるのでは?


「わっ、私だって尋斗と二人になったって仕方ないし!? 大体、この男とデートしたって楽しくなさそうだしぃ? やっぱ、言い出しっぺの結愛ちゃんが!」


 おい待て、こいつ一緒に買い物行くって言ったとき、すごい嬉しそうな顔してなかったか? 気のせいか? そうなのか?


 俺が心の中で自問自答じもんじとうしていると、結愛が二人に話し始めた。


「もちろん私はずっと尋斗さんといたいですよ? 女の子なら、好きな人と一緒にいれて嬉しくないはずありませんし」


「「「……」」」


「ちなみに、紫陽花さんはどんなデー……どこに行くの?」


「私は、そうですねぇ……気が早すぎかもしれませんが、ウェディングドレスを見に行ったりしてみたいです。そのあとは私のお家にお招きして、一晩中お話ししていたいです!」


「「「だ、大胆だいたん!」」」


 なんかもうデートではないよな? お家にお持ち帰りしたらそれはもう色々アウトだろ。


 ……そうか、そうなのか。今の今まで気づかなかったが、結愛には『大胆な女の子』という立派な属性が付いていたのか!


 咲良と友李は、それぞれに『ツンデレ』と『ドS』の属性があったが……よく考えれば、昼休みの結愛の行動も大胆だったと思える。


「えっと、結愛ちゃん。それは男の人と一晩過ごすってこと?」


「そうですが?」


 友李の問いに、結愛は『皆さんは違うんですか?』みたいな純粋そうな顔をして答えた。


 うん、まぁ、皆さん違うと思うよ? というかさっきから咲良の声が聞こえないんだが? ……驚きすぎて固まっちゃってるよ。

 

「でも、本当にそんなことしちゃだめよ? もしも間違いか起こったりしたら……」


「間違い……? あっ……確かに、そのキ……キスとかはまだ早い、ですよね。そうですよね……!」


「「「…………」」」


 まさかとは思うが……保健の授業を受けていないのか……? それともこいつの一家は単細胞生物と同じ分裂で家族を増やせるから、そういうのが必要ないのだろうか。


「皆さんどうしたんですか?」


「あ、いやほら……おい友李、なんとか言ってやれよ」


 俺は小声で催促さいそくした。


「無理に決まってるでしょ! 今どき、こんな女子レアなんだから。私たちのせいでダークサイドに落とすことなんて出来ない!」


「なに宇宙の存亡そんぼうがかかってるような言い方してるんだよ。とりあえずなんか言え!」


 友李はしばらく悩んでから話し始めた。ちなみに、咲良はやっと解凍され始めたぐらいの固まり。


「ウェディングドレスって言ってたから聞きたいんだけど、結愛ちゃんは子供何人欲しい?」


「二人……ですかね。できれば双子ちゃんがいいです!」


「そっかぁ。ちなみに……赤ちゃんがどうやってできるのか、知ってる?」


 すごい、なんてナチュラルな聞き方なんだ! これならあまり抵抗なく答えることができる。


「それは……男の人と女の人が、同じベッドで肌を寄せ合って寝ると……。小説にも書いてありましたよ! お互いの肌を重ねるって!」


 そうだが! そうではあるが、何かが違う!?


 想像を絶する結愛の純粋さに、俺と友李も固まってしまった。


 結局どこに行くのかも決めずに、しばらくの間その場にとどまってた俺たちなのだった。

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