第44話 リアルは人間だった?

「何かを思い出しかけたんだ。その途端に……」

「無理に思い出さなくていいよ」

「でも、大切な事だったような気がする」


 そうだ。こういう時こそ。

 あたしはノートパソコンの電源を入れた。


「リアル。首輪メモリーを見てみようよ。何かわかるかも」

「うん」


 リアルの首輪からケーブルを引っ張りパソコンにつないだ。

 程なくして、パソコンに画像が出る。

 住宅街の道路をとぼとぼと歩く喪服姿の少女……


「これ誰?」

「何を言ってる。瑠璃華だよ」

「ええ!! あたし、こんなに太ってないもん」

「心配するなよ。テレビの映像って横に広がるから実際より太く見えるんだよ」

「そうなんだ」


 よかった。

 ええい!! 今はそれどころじゃない!!


「この辺は記憶にあるんだ」

「じゃあ早送りして」


 画像は一気に進み、あたしが真君の家に入っていく。


「このあたりから記憶がない」


 リアルもあたしの後を追って真君の家に入る。

 もちろん、リアルが玄関の扉を開く事はできない。

 リアルはしばらくそこに立ち止まっているようだ。玄関の扉が二分ほど続いた。

 ん? 不意に画像にノイズが入る。

 画像が再び動き出し、庭の方へいく。ただ、画像がひどく揺れていた。 

 これは……リアルがふらついているからなのかな?

 またノイズが入った。

 同時に一瞬だけど人のシルエットみたいなものも映った。

 やがて、画像は芝生の上で迷走を始める。

 そして画像がグニャリとゆがんだ。

 まるでダリの絵のように……

 またシルエットが現れる。

 今度ははっきりと……

 白い人影。

 ミニスカートをはいてるから女の子だと思うけど……

 ノイズはさらに激しくなる。


「んにゃあ!!」


 突然、リアルが大きな鳴き声をあげた。

 見ると座布団の上でのたうち回っている。


「リアル!! どうしたの」

「頭が……頭が痛い」

「ええ!?」


 どうしよう?


「リアル!! 映像を止めて」

「にゃん」


 画面はブラックアウトした。


「リアル!! 大丈夫!! しっかりして」


 リアルはぐったりしていた。

 でも、目はしっかり開いている。


「だ……大丈夫だ。瑠璃華。痛みは治まった」

「いったい、何があったの?」

「少しだけ思い出した」

「思い出したって? なにを」

「いや、思い違いかもしれない」

「だから何を?」

「映像が頭に浮かんだ。見てわかったんだけど、それは俺が過去に体験したことなんだ」

「映像?」

「だけど、その映像が本当に俺の実体験だとするなら……」

「するなら?」

「俺は人間だったということになる」

「ええ!?」

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