第48話

「はい、おつかれー。」


「お、お疲れ様ですぅ…」


陽菜ちゃんは既にぐったりしていた。結構ゆっくりのつもりだったんだけど。今は陽菜ちゃんの家の前にいる。


「そういえば今日、クリスマスなんでしたね…。」


「あぁ…、そういえばそうだったな。」


俺もすっかり忘れていた。それほど楽しかった。


「ふふっ。じゃあ、先輩にサンタさんの私からプレゼントです。」


「サンタさんが後輩の中学生とは…。世の中の子供がこれを知ったら驚くだろうな。」


いや、確かに服は赤いけども。もしかして今日の服装はサンタをイメージしたのだろうか?


「そこはスルーでお願いしますよ!それより先輩、少し目をつぶって頂けませんか?」


俺は陽菜ちゃんの指示通りに目をつぶる。感覚でだが右腕に何かに何かを巻かれているような感じがする。これは…布っぽい…か?金属類ではないと思う。


「もう…開けていいか?」


「ん〜、もう…ちょい…。出来ました!開けてOKです!」


そう言われたのでおそるおそると目を開けてみる。そして左手を確認した。


「おぉ!これは…ミサンガか!」


俺の右手に巻かれていたのは青とピンクで巻かれたミサンガだった。


部活動してやつらってだいたいお揃いのミサンガしているのを見ていたから羨ましいと思ったこともあるんだよなぁ。


「正解です!」


「これ、陽菜ちゃんが作ったのか?」


「はい!まだ部活動をやっていた時に作ったことがあったので」


「へぇー。すごいなぁ」


俺だったら絶対に作れないと思う。なんか複雑っぽいし。そもそも手先が器用じゃないからな。


「ちなみに先輩は青が好きだと聞いたので青と私の好きなピンクを使いました!」


そんなこと言ったけ?って思ったけどすぐに情報源は陽からか。とわかった。それ以外ないだろうし。


「っていうかこんなもの俺が貰っていいのか?俺、クリスマスプレゼントとかなんも用意してなかったからさ」


「別に大丈夫ですよ?ミサンガを作るのはそんなに難しくなかったですし。それにクリスマスプレゼントならもう貰ってますから!」


?俺、今日ひなちゃんに何かあげたっけ?……あぁ。蜂蜜レモンあげたな。いや、あれ100円ぐらいなんだけど……。それでいいのか?


「そんなことより〜、先輩はそのミサンガにどんなお願いを込めますか?」


「なんだそれ?」


「知らないんですか!?ミサンガって自然に切れると願い事が叶うって言うじゃないですか!?」


「あぁ…。そうなんだ」


全く知らなかった。やっぱり女子はこういうのに詳しいな。だからみんなミサンガやってるのかな?


「じゃあ、陽菜ちゃんが第1志望合格しますように」


「…先輩…ミサンガが3ヶ月で切れると思います?」


「いや、それ以外の願い事思いつかないし」


「…まぁ、いいですけどね。ちなみに青色のミサンガには勉強とかそういう意味があるらしいので問題ないと思いますよ」


「そうか。なら俺のお願いが叶うように陽菜ちゃんは毎日必死で勉強してくれよ〜。俺の願いが叶うかどうかは陽菜ちゃん次第だからな。」


「う…!それを言うのは卑怯ですよ!私に勉強させようとしてるでしょ!」


「バレたか」


「くす。先輩やっぱりそういうところ…上手ですね!」


そういうところ…?やる気を出させるところってことかな?そもそも友達少ないからやる気を出させたことも少ないんだけどな!


「陽菜ちゃんもミサンガとかしなくていいのか?受験…合格しやすくなるかもしれないのに」


「あ〜、私はまだ部活動の時のミサンガが足に巻いてますので」


「そっか。」


「はい!だから私の願い私の願いはそのミサンガに込めました!」


「え?俺もう願い事込めたんだけど?」


「ふふ。そうですね〜。だからどちらの願いが叶うか勝負ですよ!」


陽菜ちゃんは指を前に出し、俺に宣言してくる。


「その勝負、俺が陽菜ちゃんの願い知らないのって不利じゃない?」


「大丈夫ですよ!私の願いも先輩次第なんで!」


?俺次第?どういうことだ?


「あ!寒い中引き止めてすみません!それじゃあ、そろそろお別れですね」


「え?あ、おう」


陽菜ちゃんに帰りを促されて俺はエンジンをかける。


「それじゃあ、今日はありがとうございました!」


「俺こそありがとう。結構楽しかった。じゃあ、次は正月で」


ブォン!とバイクが音を立てて、発信した。


走行中ずっと貰ったミサンガがなびいていた。

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Side川野陽菜


バタンッ!玄関のドアが閉まる。その瞬間に私は地面に座り込んだ。


良かった…。上手く渡せた……よね?


渡す時はとても緊張した…。だけど今は油断すると頬がにやけてしまう。


最後の…あれは反則だ。


『俺も結構楽しかった。』


たったその一言でとても嬉しかった。はぁ。先輩もすごいなぁ。


……ミサンガ…喜んでもらえた。それだけで嬉しかった。実は部活動で作ったことなんてない。作ってもらったことはあるんだけどね。


だからいざ作ってみるとこれがとても難しい…。何回も失敗しちゃった。できたのも実は昨日の夜だった。


だからその分喜んでもらえてとても嬉しかった。一応色々工夫してみたんだけどどうせ神楽先輩のことだから何一つとして気づいていないんでしょうね。


まぁ、わかってましたけど!それでも気づいて欲しいです!


次、会った時どんな顔すればいいだろ?どんなこといえばいいんだろ?


携帯には1番最後に撮った先輩との自撮りツーショット写真が映っている。これを見ると本物のカップルにしか見えない。そう見えるように撮ったんですけどね。


……これ絶対大事にしよ…。そう思って写真にロックをかけてホーム画面に設定した。


先輩の手大きて硬くて…暖かった。


その写真を眺めながら私が編みながら、そして結びながら願ったことを思い出してしまう。


ミサンガは結ぶ時、そして結び終えた時に願い事を言うらしい。


私と先輩の願い事…どちらが叶うかな?


私が願った願い事は──


先輩と両思いになること

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