第40話
「お〜。数学も出来るようになってきたな。この調子で行けば合格できると思うぞ!」
「ありがとうございます!神楽先輩!それより〜、一つ質問があるんですけどいいですか?」
「何かな?陽菜ちゃん。」
「今日何の日か知ってます?」
「血祭りの日?」
「クリスマスですよ〜!!」
今日は12月25日クリスマスだ。そんなことが非リアの俺に関係あるわけなく、今日は午前はバイト、午後は家庭教師ということになっている。
本来なら俺は中学の友達と「ヒャッハー!」でもしようかと本気で考えたが外に出たらカップルしか居ないからバイトすることにした。中学の友達は遊びに行ったらしい。今度埋め合わせでもするか。
コンビニでさえカップルがいやがったのは腹が立ったが、なんとかやり過ごして現在は陽菜ちゃんに勉強を教えている。ここはいいなぁ。周りにカップルが居ないから。あれ?
「そういえば陽は?」
見ていないどころか声も聞いていない。アイツは昨日雨宮さんとデートしたらしいから今日はいると思ったんだけどな。
「おにぃですか?おにぃなら今日もデー……遊びに出かけましたよ。」
マジか!?デートを2日連続で行うだと!?前までなら恨み全開だったろうが今は恨みと尊敬の気持ちを抱いてしまう。
昨日だけでも疲れたというのに。あれを2回か…。やるなぁ。確かに楽しかったけどな。ただ精神ゴリゴリ削られた。北風が近いからいい匂いするし、周りからの視線はすごく痛いし。
尊敬するがイチャイチャしやがって…!という恨みの気持ちもある。
「そうか。じゃあ俺たちは勉強するか。はい!じゃあ参考書開いて!」
「先輩!待ってください!クリスマスですよ!?そんな日にまで勉強しなくてもいいじゃないですか〜!」
「クリスマスだぞ?外に出たらイチャつくカップルしかいない!それにクリスマスはキリスト様の誕生日なんだ!そんな神聖な日にイチャつくなんて言語両断!家にこもってハッピーバースデイの歌を歌っとけばOKだ!」
俺はキリスト信者じゃないのでこれぐらいでいいと思う。去年も1人でこんな風に過ごしたし。俺と同じく付き合ったことの無い陽菜ちゃんなら俺の気持ちが分かってくれるかもしれない。
「でも!中学最後のクリスマスなんです!みんなも彼氏と過ごすって言ってますし…、私もやってみたいんです!そういうことやったことないんで!」
安心して欲しい。俺もやったことねぇよ。中学最後のクリスマス…かぁ。俺は確か1日中家で勉強してた気がする。イブに限っては中学の友達と遊んでたなぁ〜。ゲームセンター行って、ちょっとどつきあったりして…。
「そうか。なら友達誘って遊びに行っても全然いいぞ?また明日来るし。」
実を言うと進捗状況はかなりいい。別に今日1日ぐらい勉強しなくても大丈夫だと思う。というか余裕。
「い、いえ、その…。付き合っていないもの同士である先輩とどこか行けたらいいなぁ〜って思ってたんですけど…?」
「えっ?俺とか?」
「は、はい…。もし予定がないならですけど…。」
このあとの予定は確かにない。帰ってもやることないし。たまには休憩も必要だろう。まぁ割と陽菜ちゃんの遊びには付き合ってるんだけど。
「予定は無いが…。俺なんかとどっか出かけて楽しいか?」
「「俺なんか」なんて言わないでください!先輩といて私は楽しいです!」
…なかなか感情をストレートに伝えてくれるな。嬉しいけど。陽菜ちゃんは根が素直なんだな。
「分かった。それで?どっか行くあてでもあるのか?」
「はい!これです!」
陽菜ちゃんは机の引き出しから一冊の冊子を取り出して付箋の貼ってあるページを開けた。そこに映っていたのは…、
「マジ?」
「マジです!私イルミネーション見たいです!」
イルミネーションだった。
冗談だろ?今日なんかイルミネーションはカップルの巣窟になってるぞ。アイツらはイルミネーションじゃなくてイルミネーション効果でいい雰囲気になり綺麗になった自分の恋人を見に行ってるんだよ。
「私、彼氏とこういうの見に行くのって憧れてたんです!それに周りの皆を見に行くって行ってますし…。羨ましいです!」
そういうのは本当に彼氏が出来てから行けばいいのに…と思ったがこの言葉は出さなかった。まぁ分からんでもない。
俺もそういう憧れが無いわけじゃないからな。ただ彼女が出来ないので行けない。そして彼女もいつまでも出来ずに高校を卒業する。そんな気がするので彼氏じゃなくてもいいから一緒に見に行きたいってことなんだろう。
「ど、どうです!?付き合っていないもの同士でこういうのを見に行くのは!」
「まぁ、いいか。ならもう少し時間が経ったら行くか。」
「ほ、本当ですか!?」
「本当だ。」
「いやったぁー!!」
ずっと勉強してても辛いだろうから今日ぐらいゆっくりするか。それにしても昨日に引き続きまた出かけるのか。クリスマスに、2日とも外出するとは…。去年なら考えられない出来事だな。
ということでクリスマスは独り身同士でイルミネーションを見に行くことになった。陽菜ちゃんも高校生になったら彼氏とか作って俺を置いていくんだろうなぁ。
「それまでは勉強するぞ。」
「分かりましたー!!」
陽菜ちゃんは急に椅子に座って真剣に参考書の数学の問題を解き始めた。
ただ陽菜ちゃんが言ってたことが確かならここには陽菜ちゃんの友達も来るかもしれないってことか。しかもカップルで。それにここって結構有名なんだよなぁ。陽も昨日ここに行ったらしいし。学校の人も結構行ってるんだろうなぁ。もしかしたら俺の顔を知ってるやつもいるかもな。なら、一応バレないようにしようか。
陽菜ちゃんも北風に負けず可愛いがさすがにイルミネーションにまでナンパはいないだろう。あそこはカップルと家族しかいない気がするし。
「ここまでどうやって行くんだ?」
「それはですね〜…、バスと電車になりそうなんですけど…。ただ人が多くて待つことになりそうです。」
ふむ。それは大変だな。ここまで距離も少しあるし。待つと言ってもかなり待つことになるかもな。特にバスとか。こんな寒い中待つのはあまり得策とは言えないかもしれない。
「陽菜ちゃん、これは提案なんだけどさ。オレのバイクに乗っていかない?」
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