第20話

Side北風真美



『海咲!ありがとう!荒木くんに勝てたよ!デートにも誘えた!!』


『…真美が頑張ったから。』


『そんなことないよ!お礼に何かするよ!』


『…大丈夫。陽もそちらの荒木くんにお世話になったから。これでおあいこ。それよりデート楽しんできて。』


『わかった。そっちもデート楽しんできて!終わったらまたお話でもしようよ!』


ふぅ。私は海咲との電話を終えてデートの用意をする。今日は23日。明日が24日、デートの日なのだ。


今日はその準備をしている。必要なものを見直したり、チケットはあるか、どこにあるか確認したり。それが終わったら…、明日の服装や化粧はどうするかを決めなくてはいけない。女の子の用意は忙しいのである。


「お姉ちゃん、何してるの?」


「あっ!雪乃!いいところに来た!ねぇねぇ今、明日の服決めてるんだけどこれとこれ、どっちがいいと思う?」


「ん〜、右かな?私は右の方がお姉ちゃんに合ってると思う。」


「ありがとう雪乃!あれ?雪乃はどうしたの?」


「私は後ででいいよ。勉強で分からないところがあっただけだから。それより準備急いだら?」


「あっうん!」


私は服を持ったまま下に降りてお母さんに意見を求めに言った。


「お母さ〜ん!これなんだけどさ!どっちが可愛いいと思う?」


「右かしら〜。」


「ん?真美、明日出掛けるのか?」


リビングに向かうとお母さんだけでなく、お父さんもいた。


「うん!明日デートなの〜!」


「あらあら〜、楽しんでね!」


「なっ!?真美、どういうことだ!?」


お父さんがうるさくなりそうだから退散〜っと。


私はそのまま2階に上がって自分の部屋に戻った。


明日は9時に私の家の近くの公園集合となっている。荒木くんと踊ったりしたところだ。


本当は映画館集合にしたかったんだけど、荒木くんが


『それはやめとけ。本当に映画を見たいんだと言うならばな。北風の場合映画館に着く前にナンパされまくって結局映画館につくことは不可能になるからな。誘拐されたいと言うなら話は別だが。北風はもう少し自分のことを知った方がいいとおもうぞ?』


って言われて却下された。私だってナンパぐらい捌けると思うんだけどなぁ。あの時はしつこかっただけだし。まぁ、荒木くんが私の事を心配してくれているのが分かっているからわがまま言わないことにした。


「待った〜?」「今来たところ〜!」みたいな言い合いしたかったんだけどなぁ。まぁ、場所が変わっても出来るんだけどね。


明日が楽しみだな〜。早起きして用意しなきゃいけないから今日は早く寝ないと!

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Side北風雪乃


ヤバいですね。お姉ちゃんは明日のデートにとんでもないほど気合いがのってます。普段なら「頑張ってね〜」「楽しんでね〜」と呑気に言えるんですけど、今回はヤバいですね。可愛すぎます。同じ女性で妹の私から見ても可愛いです。


事情は聞いてます。荒木先輩と明日デートするだと。しかも私があげた映画のチケットで見に行くそうです。つまり責任が私にもあるということになりますね。


しかも明日はクリスマスイブです。間違いなく町中にお姉ちゃんを狙うナンパが沢山いるでしょう。荒木先輩がどれだけ強いのかは知りませんがお姉ちゃんを守りきれるかどうか難しいところでしょう。


仕方ありません。予め先輩に言っておきましょう。


ごめんなさい荒木先輩。頑張ってください、応援しています。私はもう知りません。


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Side荒木神楽


『いや〜、ありがとな姉ちゃん。おかげで助かったわ!』


『どういたしまして〜!ていうか明日何かあるの?イブだよ?神楽に彼女いたっけ?私聞いてないんだけど?』


ん〜。なんか全部話すのも変な気がするな。簡潔に伝えるか。


『本当は血祭りにでも参加するつもりだったんだけど、急遽予定変更になったんだ。彼女はいないけど出かけることになった。』


『へぇー、それ女の子なの?』


『あぁ。そうだな。』


『へぇー♪もしかして脈アリ?』


『いや、相手は学校一だって言われてるぐらいの美少女なんだけど?脈アリはないだろ。多分俺の事をナンパよけか男友達だと思ってるんだと思う。明日は用心棒みたいなもんだ。』


『神楽は好きなの?その子のこと。』


『ん〜。普通だな。友達みたいなもんだ。』


『へぇ〜。でも神楽だってかっこいいから学校一の美少女ぐらい落としても驚かないのにね〜。』


まぁ、確かに姉ちゃんとDNA同じだからな。最近DNAの凄さが分かってきた。DNAが全てじゃないけどな。俺なんか姉ちゃんがトップモデル級の美人なのに俺はあんまりだからな。


『身内びいきはいいから。相手も本当に用心棒だと思ってると思うぜ?俺が中学の時に喧嘩ばっかしてたの知ってるし。』


『神楽とその子同じ中学だったの?』


『いや、違う違う。ほら、俺が文化祭で姉ちゃんに髪整えてもらって助けに行っただろ?その時に助けた子だよ。成り行きで喋った。』


『……へぇ。私結局見てないよね?ねぇ!今度その子連れてきてよ!』


『いや、姉ちゃんいつ家に帰るか分からないんだから誘いようがないだろ?』


『今月末には帰るからね!それでその子も連れて新年の初詣に行かない!あっ!陽くんとか海咲ちゃんとか誘ったら?私今年で20でしょ?だから成人式まで家に帰るし!』


『…新年はゆっくりしない?いきなり初詣とか面倒くさくない?』


『いいじゃん!お父さんとお母さん死んでから行ったことないんだから!』


『あ〜。わかった。とりあえず誘うだけ誘ってみる。断られたら諦めてくれよ?』


『OK!それじゃあね!』


ブツっ!


「切れた…。」


俺は洗濯した姉ちゃんから貰った服を畳む。


文化祭で言っていた服が一昨日送られてきたのだ。なんという神タイミング!それで今日は姉ちゃんと電話をしていた。


この服きて髪を整えたら何とかなるかもしれないな。


しかし、さすがモデルだな!服もかっこいいし、サイズもよく分かってる。相変わらずよく出来た姉だ!まぁ、今の私服は俺はカッコイイと思っているがダサいらしいけど。


さて、明日は早いからもう寝るか。って思ってたら雪乃ちゃんからメールが来た。


雪乃ちゃんとは北風の家にお邪魔した時にメールアドレスを交換したのだ。


「お姉ちゃんのことで何かあったら連絡くださいね?」


ということだ。たまに雪乃ちゃんから北風についてのメールが来たりする。例えば「弁当箱が増えたんですけど、あれって荒木先輩の分ですか?」みたいなメールが来る。他にも北風のいい所とか。


そして今回のタイトルは…


『先輩、緊急事態です。先輩の命が危ないです。』


何?この怖いtitle。俺、死ぬの?とりあえず本文だ。本文は…


『お姉ちゃんが可愛すぎます。このままいけば明日、ナンパ被害に大量に会うことになるでしょう。これは回避出来ないと思うので対処法を用意しておいた方がいいです。スタンガンとかあるんだったら持っていった方がいいと思います。頑張ってください。では。』


何この本文。俺はこれをどう捉えたらいいの?というか雪乃ちゃんもナンパ被害に会うと思うんだったら北風に服のセンス落とすとか顔を隠すとかアドバイスしてあげた方がいいんじゃないの?お姉ちゃんがナンパに会うことになるんだけど?俺が死んじゃうことになるんだけど?


はぁ。明日は大変そうだな。もう少しで今年も終わると言うのに。やっぱり血祭りに参加すべきだったか?

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