第16話

「ではでは恋バナをしましょう!」


…女子は本当に恋バナが好きだよなぁ。でも、


「俺そういうネタ全く持ってないぞ?」


今まで恋愛をした事ない上に友達もいなかったから恋バナをやったことがない上に、いいネタを持ってない。


「別にいいんですよ〜。私もやってみたいだけですから〜!」


「やったことないのか?」


その口調ではやったことないように聞こえる。陽の妹ということだけあって美少女で明るい性格だ。友達がいないという訳ではなさそうだし。


「あぁ〜。なんといいますかね。女子だけの恋バナって恋バナじゃないんですよね〜。」


「?どういうことだ?」


「あれ、恋バナに見えますよね?」


クラス内でも女子だけで恋バナをやっている所を何回も見てきた。みんな楽しそうにしていた気がするんだけど…。


「見える。恋バナしてるクラスメートめっちゃいるけど?」


「それは違いますね。あれは牽制です。」


「牽制?」


「はい!私はあの男子好きだからお前らは手を出すなよ?って言う牽制です!」


怖っっ!!女子怖っっ!!あんなに楽しそうにやっていながら裏でそんな会話しているのかよ!


「いや、それはさすがに嘘だろ。」


「本当ですって!私が友達の好きな人から告られて振った後にその友達からグチグチ言われましたよ?」


まさかの実際に体験しているのか。怖いな。これから女子同士が会話していたら絶対に聞かないようにしよう。会話の内容が怖いし、聞いていることがバレたら金要求されそう。


「だから、普通の恋バナでもしましょう!」


まぁ、あれを聞いたあとなら普通の恋バナがしたくなるのも分からないでは無い。


「と言ってもなぁ。」


「大丈夫ですよ!それじゃあいきますよ?」


「…おー。」


という訳で恋バナ開始。


「先輩って彼女とかいるんですか?」


「いや、いないな。というかいたことないな。」


「えっ!?いないんですか!?」


「あぁ。年齢=彼女いない歴ってやつだ。」


「……意外……ですね。」


意外だろうか?中学時代は途中で不良化して皆から怖がられてたし、高校は完璧な陰キャになったから必然と言われたら必然な気がする。あれ?俺の人生これから先彼女とかできるのかなぁ?心配になってきた。


「今、好きな人とか…いないんですか?」


「……いないな。」


「そうなんですかー!」


なんかやけに楽しそうだな。


「俺の恋バナ、なんもないだろ?」


「そんなことないですよー!こうやって会話するだけでも楽しいですし!」


陽菜ちゃんは笑顔でそんなことを言う。…なんか北風にも似たようなこと言われたな。


「陽菜ちゃんは彼氏とか居ないのか?」


「いませんねー。私も先輩と同じく年齢=彼氏いない歴です。」


へぇー。ちょっと意外。陽も彼女いるし、陽菜ちゃんは美人だから彼氏はいると思ってた。顔だけじゃないってことか?でも陽菜ちゃんは性格も良さそうなんだけどな。


「ま、高校に入ったら作れるだろうな。」


陽菜ちゃんは可愛いから高校に入ったらモテるだろう。高校生になればちょっと余裕が出て付き合う人多くなるし。


「だといいんですけどね〜。でも高校入ったら緊張しません?知ってる人少なくなりますし。」


「今はしてないけど…。入ってすぐの時はどうだったんだろうな。いや、確かに緊張してたかも。」


俺は入学式を遅刻して来るようなやつだったから不良と思われたんじゃないかって緊張してたわ。


「へぇ〜。そうなんですね〜。そう言えばおにぃとはどうやって知り合ったんですか?」


「陽とは入学初日に知り合ったんだよ。」


「えっ?おにぃはあの日遅刻したはずですよ?」


よく知ってるな。あの日は川野家にとっても何かあった日なのかもしれないな。


「俺も遅刻したんだよ。そこで知り合った。」


「へぇ〜。先輩が入学初日に遅刻ですか。なんか想像つきませんね。でも、先輩は何で遅刻したんですか?」


「前日に楽しみで寝れなかったら寝坊した。」


「アハハハハ!小学校の遠足じゃないですか!」


まぁ、本当にそう思う。今でもあの時の俺はバカだったなぁって思う。高校入学が楽しみって…。聖人君子かよって思う。今では学校に行くのが嫌になっているというのに。


「笑うなって。それ以外にも遅刻した原因あるからな!」


「へぇ。何があったんですかー?」


あっやべ。勢いでそう言ったけどよく考えたらあの日の遅刻した原因陽にも言ってなかったんだった。どうしようか。今更あの時の真実を言うのもアレだし。


「……石につまずいて怪我した……。」


くぅ。こっちの方が笑いもんだろ…。そう思ってたんだが、


「えっ………?」


意外にも帰ってきたのは驚きの声だった。陽はこれを聞いて笑うのに妹の陽菜ちゃんは驚くのかよ。


「せ…先輩、それって―――」


「ただいまぁ!」


おっ!陽が帰ってきたみたいだな。


「陽も帰ってきたみたいだし、俺も帰るわ。」


「えっ…あっ…そ、そうですね!」


俺は荷物を持って陽菜ちゃんの部屋から出ることにした。


「陽、昨日のノート返してくれるか?その代わり別のノート貸すから。」


「OK!ちょっと待ってて!」


「お、おにぃ!」


陽は部屋に戻って俺のノートを取りに行ってくれた。どうやら陽菜ちゃんも一緒に行くようだ。


「はい!ありがとな!」


「おう。」


俺は陽からノートを受け取ると、バッグにしまった。


「俺が帰っても勉強しろよ?特に陽。」


「わかってるよ!じゃあな!」


陽は用事があるのか部屋に帰ってしまった。陽菜ちゃんは玄関まで俺を送ってくれるようだ。?何か陽菜ちゃんの様子がおかしい…気がする。顔が赤くなってる気もするし、ちょっとよそよそしいような…。まさか!!


「陽菜ちゃん、俺が帰っても勉強するんだぞ!社会は暗記が多いから自分で勉強できるし!」


「ち…違いますよ!」


何?俺が帰ったら勉強する気がしないからちょっとおかしいんじゃなかったのか?それじゃあ、一体何があったのだろうか?もしかして陽に原因があるのかもな。うん。そうに違いない。


「それじゃあな、陽菜ちゃん。」


「はい、さようならです!」


俺は玄関のドアを開けて外に出た。うぅ。結構冷えてるな。


「先輩っ!!」


「?」


声が聞こえたので後ろを向くと陽菜ちゃんがいた。寒いから外に出なくていいのに。と思っていたら、


「ありがとうございました!!」


そう言って頭を下げてきたのだ。?なんのことやらさっぱりわからなかったが、多分今日教えたことだと思った。


「?おぅ!どういたしまして!また明日な!」


また明日も教えるからな!的なニュタンスを込めてそう言った。すると陽菜ちゃんが


「はいっ!」


くすっと笑いながらそう返事をした。その笑顔に少しドキッとしてしまった。


この後俺はスーパーによってから帰った。今日こそ自炊するぞ!

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