第14話
「あぁ。単刀直入に言うと、陽菜の家庭教師になってくれないか?」
……俺の予想の斜め上を行く依頼が来たな。陽をよろしくとか陽の勉強を見てくれとか陽関連だと思っていたら、まさかの陽菜ちゃんか。
「えっと…説明とかってあります?」
さすがにそれだけでは「はい、やらせていただきます!」とは言えない。せめてそうなるに至った経緯や事情ぐらい聞きたい。
「陽菜が今日、神楽くんを家庭教師にしたいと言われてね。」
俺は陽のお父さんから陽菜ちゃんに視線を向ける。
「いや〜、先輩教え方上手でしたし。私このままじゃ志望校受かるかどうか微妙なんですよ。だから〜先輩に家庭教師になって貰いたいんです!」
「もちろん給料は出すよ。方法は任せるよ。月…5万ぐらいでどうだろう?」
「5万!?」
高くない!?方法は任せるってことだから俺が自由にしていいってことか。最悪週に一回は陽の家に来て陽菜ちゃんに教えるだけでもいいって事だろ?職場も全然悪くない。それに俺の都合に合わせることが出来そうだから、コンビニのバイトも続けることが出来る。
「おぉっ!そりゃいいな!」
そして陽も乗り気…。多分陽はついでに俺も教わろとか、遊ぼうとか考えてるんだろうな。別に俺は暇だからいいけど。
断る理由も特になし…か。
そんな風には少し悩んでいると、急に耳元で陽菜ちゃんが
「先輩言いましたよね?『…また分からないところがあれば教えてくれますか?』って言ったら『もちろん』って。」
心臓を鷲掴みにされた気分になった。あれってそういうことだったの!?いつ間にか言質をとられてたわけか。
バッと隣の陽菜ちゃんを見ると少し笑っていた。
…恐ろしい!!なんか悪魔に見えたぞ!最近の中学生は進化してるのか!?
「……やらせていただきます。」
「ありがとうございまーす!」
という訳で俺は陽菜ちゃんの家庭教師に就職した。
「まぁ、受験まで3ヶ月半だ。よろしく頼むよ。」
そう言って陽のお父さんは頭を下げてくれた。
「もちろんです!力の限りを尽くします。」
今が12月。受験は3月後半。この短い時間で家庭教師の俺に何ができるか考えないとな。
家庭教師の就職?が決まったら今日は帰ることにした。なんやかんやで結構時間は夜遅くになっているからな。
とりあえず家庭教師の話は俺と陽菜ちゃんで相談して決めてくれってことになった。
「それじゃあ、俺が用事のない日を事前に言っとけばいいんだな?」
「正確には家庭教師をできる日を、ですけどね〜。別に毎日でもいいんですよ?私は先輩に合わせるんで。」
「了解だ。」
俺もコンビニバイトがあるからな。毎日は無理だろう。とりあえず期末テストまでは陽に教えながら陽菜ちゃんに教える形になった。
「あ、そうだ。携帯にRINE入ってる?」
「はい…ありますけど…?」
「それじゃあ、交換しとくか。」
「えっ!?…せ、積極的ですね…。」
なんか顔を赤らめてる気がする。
「?いや、俺がいつ行くか伝えるのに連絡手段がないんじゃどうしようもないだろ?」
「あ…あぁ!そうですよね…。」
?なんか少し落胆した感じだった。
「それと分からない問題があったらすぐに送ってくれ。分かりやすく説明した写真か動画でも送るわ。」
「は、はい!ありがとうございます!」
「陽、お前は俺が帰ってもしっかり勉強しろよ?赤点確実に回避したかったらなぁ。」
「りょ、了解!」
「それじゃあ、帰るわ。お邪魔しました。」
そう言って俺は家を出ようとした。が…
「もう帰るのかい?」
陽のご両親が玄関まで来てくれた。
「はい。もう時間も遅いので…。」
「そうか。陽から少し君のことを聞いたよ…。何かあったら私たちを頼ってくれて構わないからね。」
「なにか無くてもご飯ぐらいいつでも食べに来てもいいからね?」
なんとなくだけど陽の両親って感じがするな。空気が暖かいというかなんというか。
「ありがとうございます。それではお邪魔しました。」
「じゃあな〜また明日!」
「明日からよろしくお願いしま〜す!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます