第58話トラップ
キリアダンジョン15層
キリアダンジョンに入って1日経ったが正直言ってつまらない。襲ってくる魔物は全てエマが片付けてしまう。かと言って俺が相手だと魔物が弱すぎてつまらない。しかし油断は一切していない。トラップがあるということは前回でよく分かっているからな。
少しエマもルアも退屈そうだ。
「つまらないね、タイチ。」
「そうだな。だが油断はするなよ?」
「わかってるよ。それで前に酷い目にあったからね。」
あぁ、蜘蛛な。あれは確かに油断したが故のミスだった。さすがに2度もあんな経験をしたくない。そしてそう思った瞬間だった。
キィィ!
ッ!これは!
下から魔法陣が浮かぶ。この魔法陣はラギルダンジョンで俺たちを飛ばしたものと同じ─!?
つまり転移か!?
前は偶然固まって転移されてが今回もそうとは限らない。できる限り近くにいなくては!!
「ルア、エマ──!?何!?」
どういうことだ!?体が全く動かない。まるで空気を押し付けられたように動くことが出来ない。
これは…まさか空間操作か!?
同時に2つの効果を持つ魔法陣だと!?
「「タイチ!!」」
次の瞬間、目の前が光に包まれた。そして光が収まって目を開けた時には…
「クッッソ!!」
ルアとエマは既にここにいなかった。つまりそれぞれ別の場所に転移されたということだろう。空間感知にも引っかからない。…同じ階層にすらいないかもしれないな。
それにしてもさっきの魔法陣…。あれは俺より明らかに強いものが作ったんだろう。今の俺では空間魔法で2つの効果を閉じ込めた魔法陣を作ることは出来ない。
まだまだ俺も弱いな…。面白い。これでまたひとつ強くなる方法を知った。
さて、切り替えろ。あれは特に油断していた訳では無い。動けないということが想定外だっただけだ。あんなもの想像してなかった。
どうする…?
俺たち3人の中で1番弱いのはエマだろう。まだ実戦も慣れてきたばかりだ。つまり危険が1番高いということ。ルアは多分大丈夫だ。食事も持たせているし。そもそもルアが負ける状況というのが想像できない。
俺より強いからな。
だが探すにしても上に向かうか下に向かうかで大きく異なる。
…ルアなら…どうする?俺はその逆を行けばいい。ルアなら…
「上に向かうだろうから俺は下だな。」
そうとなれば話は早い。最速でただ魔物を倒して下に向かうだけ。…ラギルダンジョンの時と同じだ。
……ついでにひとつ今思いついた実験でもするか…。
俺は身体能力強化を使い、地面を蹴って走り始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Sideルア
キィィ!
魔法陣!?ヤバい!早く抜け出さないと!
そう思って抜け出そうと思うが動くことが一切できない!
でもこの魔法陣、これで終わりじゃない気がする!なら、間に合うかな!?
「あ…ん…。」
私は反属性でこの魔法の効果を消そうとするが、何故か上手く魔法を使えない…。これも魔法陣の効果なの!?
これは僅かにだけど私の魔法の方が遅い。このままじゃ何が起こるか分からない。
「タイチ!!」
うっ!眩しい!
そして次に目を開けた時には誰もいなかった…。
一人…。また一人になってしまった…。あの時と同じように…。
「違う!あの時と同じじゃない!あの時とは違う!」
そうだ!今はタイチがいる!エマちゃんがいる!
頬を思いっきり叩いて元気をだす。
ふぅぅー。
こんな時タイチなら…きっと笑ってるだろうから、私も笑おう。
とりあえずタイチは大丈夫だ。タイチならどんな事があっても絶対に何とかしてる!なんて言ったって私より強いからね!
ならエマちゃんを探さないと!
「多分タイチなら私の考えを読んで下に向かうよね…?」
なら、私が上に向かった方がいいはず…。
よし!そうと決まったら!
私はすぐに変身魔法を解除して天使の翼を顕現させる。タイチからはあんまり魔法を解くなって言われてるけど今はそれどころじゃない。
身体能力強化と足に風魔法を使って加速させる。走るより飛ぶ方が速いので地面スレスレのところで翼をはためかせる。出会った魔物は細剣メルカローズで斬っていく。魔石は拾わない。
そして上に繋がる階段を最速で探し始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Sideエマ
キィィッ!
これは!?確かルアから見せてもらった魔法陣!?魔法陣が魔法の効果を閉じ込めるということは既に知っている。こういう時は魔法陣から離れないと…!!
ッ!?動けない!?
このままじゃ銃を取り出すことも出来ないじゃない!!
「タイチ!!」
キャッ!眩しい!目を開けることさえ出来ないわ!
「うっ…う。えっ………?」
次に目を開けた時はさっきとは全く違う場所にいた。周りを見渡しても見覚えのあるものがひとつもない。そして…
「タイチ!ルア!」
隣にいたはずの2人がいなくなっていた。ど…どうしよう…!?こんなことは初めてだわ。どうしたらいいのかわからかい。
とりあえず銃を抜いていつ魔物が来てもいいようにしないと!
ホルスターから銃をとって両手に装備する。
落ち着きなさい!冷静になるのよ!
落ち着いて周りを見渡す。
見覚えがないということは違う場所に移動したということ…。タイチの使うゲートと同じ魔法かしら?でもここがダンジョン内ということはわかるわ。
つまりこれがタイチから聞いていた転移…。
フゥ。落ち着くために深呼吸をする。
さて、どうするのが正解かしら。2人を見つけることが先決よね。ルアなら私を探すために行動してるはず…。おそらくタイチも…。
それにしても独りというのは久しぶりだわ。…王宮ではずっと1人だった。もう一度その状態に戻っただけだと言うのに…。こんなにも怖いなんて。
とりあえず動いた方がいいわよね。2人を探すなら上に続く階段を探すべきだと思うのよね。2人の移動速度は速いから私より下にいたらすぐに追いつくでしょうし、私より上にいたとしても往復してすぐに出会うでしょうし。
…ここがどこか分からない以上安全な上に向かうほうがいいわよね。方針を決めたらすぐにその場を離れて上に続く階段を探し始める。
ルアから教わった魔力感知は常に発動させている。これでほとんどの不意打ちを防ぐことが出来るわ。
太陽の光もなければ明かりになるようなものもない。周りは暗闇…。怖い…。まるで自分の中にある弱さがさらけ出されている感じがするから…。
お前は出来損ないだ。お前は失敗する。王族の恥さらし。何も出来ない。
心の中から声が聞こえる。弱い自分の声が…。
「うっ、うるさい!」
「ガァ!!」
「しまった!」
いつの間にか狼の魔物の侵入を許していた…!魔力感知の警戒をといてしまったの!?
それにこの魔物…、速い!上層とはレベルが違う!私は狼の突進をうまくかわす。タイチに体の使い方を教えて貰ったおかげで回避出来た。
そして私は応戦するために銃を握り、照準を合わせてうつ。
ドンドン!
「ハァハァ。」
魔物は絶命したのかピクリとも動かない…。
「ハァハァ…。うっ!」
その事実がまたも私を苦しめる。必死に吐き気を抑えて魔力を広げなおす。
「嘘…。どうなってるのよ?」
さっきまでは何もなかったのにいつの間にか魔物に囲まれてる!?いくらなんでもこれは…!もしかして「隠蔽」のようなスキルでも持ってるの!?
いいえ!今は関係ないわよね!
この魔物達との距離は…
「私の間合いよ…!」
ドンドンドンドンドン!!
私の方に寄ってくる魔物に向かって連射する。……
カチカチ。
こんな時に弾切れ!?急いで予備の弾丸を取り出して後ろに下がりながら弾丸をセットする。さっきの連射で後ろの魔物は全て撃ち抜いたはず…!!
「ガルァ!!」
えっ!?私の後ろから魔物の気配を感じた…。そして魔物は私に飛びかかってくる。
さっき逃げ道を作るためにこっち側の魔物は殺したはずなのに…!!やはり「隠蔽」のようなスキルを持っているのかしら!?
そんなことよりこれ…逃げれない……。
ドゴォォン!!
その瞬間…、ダンジョン内に大きな騒音が響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます