第44話治療
「魔力が回復しないって言う病気治してやろうか?」
「えっ?治るの?王国のどんなに優秀な医者でも治すどころか原因もわからなかったというのに?」
「あぁ。多分治せると思うぞ。少なくとも原因はわかってるわけだし。ただ治すには…」
「タイチ〜〜!!!」
来たな。
「ルアっ!」
そもそもの話、なんでエマがゲートを通ってここに来ることができたのか…。これには理由がある。俺の部屋には魔法陣を書いていた。部屋のドアを開けたらゲートが開くように。なぜこんなものを作ったか?簡単だ。ルアが俺を襲ってくることがあるからだ。
寝ぼけたまま俺の布団に入ってくることだってあった。ルアが隣の部屋で寝ていてもこっちに来る可能性を否定できない。いつ来ても俺がすぐ戻れるように魔法陣を設置した。まさかエマが来るとは思わなかったけど。
「あれっ?ここ帝国だっけ?一番最初の場所だよね?」
ゲートで繋いだ先はラギルダンジョンから出たすぐの場所。ゲートは魔力でマークした場所ならどこでも飛ぶことが出来る。だから、出てすぐにこの場所をマークしたのだ。いつでも帰って来れるようにな!
「正解だ!」
「あっ…。エマちゃん…。もしかして…邪魔した?」
「いいや、全く。むしろルアが来てくれて助かった。」
「少しは否定しなさいよ…!」
そんなこと言われてもなぁ。別に盛る訳でもないんだし。それにエマの病気を治すのにルアは必要だし。
「ルア、今からエマの病気を治す。手伝ってくれないか?」
「もちろんだよ!エマちゃんはタイチの嫁仲間だからね!」
そんな仲になっていたのか…。あとは俺次第ってか?というかルアが認めてる状態で俺にはどうしようもないけど。そんなことは後回しだ。
「よし!それじゃあ説明するぞ。エマの病気の原因は…簡単に言うと魔力溜りっていうとこか。」
「「魔力溜り?」」
「あぁ。魔力は身体中を流れているんだろ?」
「うん、そうだよ」とルアが同意してくれる。
「その魔力が流れている回路がつまってるんだよ。魔力でな。」
魔力を血液、魔力が流れている回路を血管と考えたら分かりやすか。だから、魔法の威力も弱くなる。回復するのにもどこかで流れなくなるから回復も遅くなる。
「原因はわかってもどうやって治すのよ?」
ま、当然の質問だな。
「俺は魔力を大量に流せば詰まっている部分の魔力が流れるんじゃねぇかな?って思ってる。これに関しては確証はないな。まぁ、治せるかもしれないぐらいに考えてくれ。」
「でも、どうやって魔力を流すのよ?」
「魔力操作を使う。」
魔力操作は己の魔力をコントロールするスキルだ。ならばそれを上手く利用すれば相手に魔力を流せるかもしれない。ただ、相手の体に触れなければならないが。
「でも、それならタイチだけでできるでしょ?なんで私まで?」
「まぁ、予想だけど俺の魔力を流して詰まっている部分が流れる。それならエマの体にとんでもない魔力が流れることになるだろ?俺の予想では魔力が暴走するか、とんでもない威力の魔法が発動すると思うんだよ。だから、そうなった時に…」
「私の魔法で相殺するため…。」
「それ、私は大丈夫なの?」
「そういうこと。反魔法なら何とかなるかもしれないからな。多分エマは大丈夫だと思うけど、とんでもない痛みはあるかもな。だが、覚悟を決めたんだろ?なら、これぐらい乗り切って見せろ。」
反魔法に魔法を消すような効果があるかもしれないという期待がある。無理でもどこかに飛ばしてくれればいい。ここは帝国だから問題になることもないだろうし。
エマにはとてつもない痛みがある。そもそも自分の許容量以上の魔力を注ぐのだ。そんなもの苦痛に決まってる。風船に許容以上の空気を入れるとわれる。今からすることはそれと似たような事だ。
「ええっ!生半可な覚悟じゃないわ!私が変わる最初の試練よ。それぐらい乗り切ってやるわ。」
「わかった!反魔法なら解決できるよ!」
「よし、それじゃあエマ!
服を脱いでくれ。」
「変態!!!」
「うぉっ!」
急にエマが殴りかかってきた。
「スケベ!」「クズ野郎!!」
「んな事言ったって俺に背中見せるぐらい我慢してくれ!」
急にエマの暴行が止まった。
「あぁー背中…。背中なのね。まぁ、それなら許可するわ…!でも、どうして背中なのよ?」
…?なんで急に大人しくなってんだ?
「背中に魔力が溜まってる場所があるからだよ。」
そもそもどうして俺がエマの病気が分かったのか。これは俺の義眼が関係している。エマを最初に見た時にエネルギーの塊があるのが物理眼で捕えることができた。最初はそれがなにか全くわからなかったが、話を聞いて魔力だとわかった。
物理眼でこの世界の人を見るとエネルギーが循環していることが分かる。そのエネルギーは魔力だと俺は予想している。
「…?どこだと思ったんだよ?」
「背中だと思ってたわよ!えぇ、思ってたわ!」
「……!!そういうことか。俺にどこ触られると思ってんだ??えぇ??背中じゃなくてもっと別の場所想像してたんじゃ…」
「うるさいわね!最初から背中だと思ってたわよ!見せるのに抵抗があっただけよ!」
顔が真っ赤になって反抗されてもなぁ。これ多分俺の考えが当たってるな。
「もっと違う場所だと思ってたくせに。例えば胸とか……」
「ちち、違うわよ!どこ想像してんのよ!変態!」
当たったな。明らかに同様してる。俺がそんなところ触るわけないだろ。今の所は…。ルアの胸は触りたいと思ってるけど。
そのルアは俺たちの方を見てクスクスと笑ってる。それに気づいた俺たちはちょっと恥ずかしくなってこの話題を切り上げた。本音を言うともう少しいじりたかった。
エマも用意出来て、ルアも配置に着いた。
「さて、それじゃあやるぞ。エマ、耐えろよ?」
「もちろんよ!」
俺は右目を閉じて左目の義眼だけでエマを見る。そして、魔力が溜まっている場所を正確に把握し、エマの背中に右手を置く。
「…魔力操作」
俺の魔力を右手に集中させ、そこからエマに魔力を流す。
よし!第1段階成功!!
「ンっ!んぅ!痛い…!!痛い!!グッ!!うぅ!グウッ!!痛いぃ!!!」
集中しろ…!一切の油断をするな。
「キャァァァ!!!」
「あと少し……!!!」
それを続けること体感で2分ぐらい。
「よし!!!エマ!すぐに簡単な魔法を使え!」
エマは未だに苦しんしでいる。この調子では魔法は使えないか…!すると、すぐに魔力の暴走が始まった。
自身を魔力で覆って、ひたすらに魔力の塊を周囲に吐き出す。
「ちっ!」
俺もルアもそれを避ける。当たると普通にダメージが入るからな。それもかなりの威力だ。
「ルア、いけるか?」
このままではエマの魔力が尽きるまで続くだろう。そうなるといつまで続くか分からない。その間ずっとエマは苦しむことになる。
「いけるよ!エマちゃんの所まで行ければだけどね!」
「OK。なら、真っ直ぐ進め。」
ルアが反魔法を使うとエマに魔力の塊がはね返る。そうなっては苦しみが続くだけだから、ルアは今も避けているのだ。
「わかった!行くよ!」
ルアがエマに向かって走り出す!俺はルアに向かう魔力の塊をずらして当たらないようにする。
「
ルアが魔法を唱えるとエマの魔力の暴走が、終わった。
俺はエマの元に駆け寄って倒れないように支えよう…と思ったが、気を失っていたのでお姫様抱っこをする。
「エマ、エマ!」
無理矢理エマを起こす。まだエマには過剰の魔力がある。
「ん…んぅ。キャッ!」
「1度だけ魔法を使ってくれ!簡単なものでいい!」
「わかった…!」
そこから詠唱を唱えて使った魔法はファイアーボールだった。ただ…俺の予想よりはるかに巨大なファイアーボールだった。大きさだけでいえばルアが使ってた蒼黒炎並の大きさだった。俺の魔力のせいということもあるが、エマの魔力量と、センスも関係しているだろう。
「マジかよ…!ルア!」
魔法は真っ直ぐにルアの元に向かう!
「
さっきと同じ魔法で巨大なファイアーボールを消す。
とてつもない魔法だな。どんな魔法の効果も消すの?魔法に関しては最強だな…!
「ルア、周囲の火事も消してくれないか?」
「了解!」
ファイアーボールで燃えた木も水魔法で消化してくれた。
エマは既にぐっすりと眠っている。魔力も正常値まで戻っている。それを確認した俺はゲートを開いてエマをベッドに寝かせた。
それが終わるとすぐにルアの元まで戻った。
「さっきの魔法すげぇな…!」
「そうでしょ!でも、あの魔法はあんまり使うことが少ないよ?消すぐらいなら相手に返した方がいいからね!」
胸を張って自慢してくるがあの魔法は本当にすごい。
「確かに実戦ではそうかもな…。」
実際にダンジョンの中では使ってなかったわけだし。
「けど、多分あの魔法はおれの時空属性でも、真似出来ないと思うぞ?」
「まぁ、そういう意味では私だけの魔法ってことでいいかもね!それよりタイチ!ずるい!」
急にルアが怒ってくるが、なにも心当たりはない。
「え?何がだよ?」
「私やってもらったことない!あれ!エマちゃんにやったやつ!」
お姫様抱っこの事か…。確かにルアにはやったこと…あるな…。あれ?あるな。確か…王都に入ってすぐの夜にやったな。
「どれのことだ?」
「魔力操作でエマちゃんに魔力あげたやつ!」
「いや、あれ結構苦しいぞ?それをやりたいのか?」
「でも、自分の魔力量の限界までなら苦しくないんでしょ?むしろ気持ちいいんじゃない?エマちゃんだって最初は…。」
まぁ、確かにルアの言う通りだけど、気持ちいいかどうかは知らないぞ?個人の感想だろ。
「分かった。それじゃあルア。手を貸してくれ。」
「…エマちゃんは背中で私は手なんだ…。」
「いや、別に肌に触れれば問題ないんだけど。」
エマの場合は背中に魔力溜まりがあったからっていうだけの話だし。
「まぁ、いいよ。それじゃあやってみてよ。」
「行くぜ。魔力操作…。」
「んっ…。アッ…。」
とても艶めかしい声が聞こえてくるのですぐに中断した。
ルアの方を見ると顔も赤くてとても色っぽかった。
「んっ。ハァハァ…。ありがとう…。気持ちよかった…。」
ルアにキスをしてから、エマとは別の部屋で2人で夜を明かした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます