第417話 夫婦ノ時間

 お市が心愛出産後、休む中、大河(小型ver.)も子育てに協力的だ。

 自分の血が繋がっている以上、育児放棄の選択肢は無い。

「心愛は、美人だなぁ♡」

「zzz……」

 心愛と添い寝して、その寝顔を堪能する。

「子煩悩ね」

 朝顔も目尻が緩みっ放しだ。

 そして思う。

 若し子供が出来ても安心だ、と。

 華姫の例もある様に、例え養子でも大河は、実子同様に愛し、育てている。

 育児放棄の心配は、まず無いだろう。

 誾千代も笑っている。

「貴方、起こしちゃ駄目よ」

「分かってるよ」

 骨折している為、抱擁は出来ない。

 されど、愛情は注ぐ事が出来る。

 心愛を視線で愛でていると、

「ん」

「ん?」

 朝顔が背後から抱き着いた。

「何?」

「何でも無いよ」

 と、言いながらも、力が強い。

 誾千代が耳打ちした。

「(嫉妬みたいよ)」

「成程な」

 心愛を一旦、誾千代に託し、朝顔に向き直る。

「嫉妬した?」

「全然」

「親子愛と夫婦愛は別だよ」

「そうだけど……」

 朝顔の額に接吻する。

 彼女が嫉妬したのは、やはり、心愛が美人だからだろう。

 童顔の大河と、日ノ本一の美女・お市との間の子だ。

 両方の良い所を併せ持った心愛は、若しかしたら東洋一なのかもしれない。

 お市と心愛は、『世界で最も美しい顔100人』がこの時代にあれば、選出されるかもしれない。

 大層、美人な心愛に朝顔が嫉妬するのは、分からないではない。

「朝顔は朝顔だ。それに自分の子供に欲情する事は無いよ」

「……ん」

 目一杯、朝顔は抱き締める。

 大河も応える。

 骨折している為、背中に手を回す事は出来ないが、それでも愛情表現は大事だ。

 誾千代が心愛を抱っこしつつ、呟く。

「心愛は、あんな男に惚れちゃ駄目だよ」

 愛妻家なのだが、好色家な部分は全く評価されていない大河であった。


 骨折しているので、大河は仕事が出来ない。

 ひたすら、女性陣と過ごすのみだ。

「若殿、どうですか?」

「気持ち良いよ」

「痛かったら言って下さいね?」

「はーい」

 間延びした答えに与祢は、笑う。

 足に跨ってマッサージを行っていた。

 鶫は背中にまたがって、肩もみだ。

 国王になった気分だが、生憎、日ノ本は国王よりも偉い人物が御座おわす。

 それも、2人も。

 その内、1人が愛妻なのだから、人生不思議なものだ。

「……」

 朝顔もうずうずとしている。

 自身もマッサージしたい様だ。

「したい?」

「良いの?」

「良いよ。でも、どこが良いかな? したい所ある?」

「頭」

「どうぞ」

 頭を差し出すと、朝顔は嬉しそうに揉み始める。

「小さいねぇ」

 普段、大人な大河は当然、朝顔よりも大きい。

 然し、今は五分五分だ。

 小さくなった、と感じるのは当然の事だろう。

「どう? 気持ち良い?」

 正確にツボを捉えている。

 朝顔は、マッサージ師並に上手いい。

「どこで学んだの?」

「公務でね、疲れた時に侍医が、よくしてくれているんだ。それで覚えたの。多分、陛下も出来ると思うよ」

「ほえ~」

 余りの気持ち良さに、睡魔が襲う。

「……zzz」

 そのまま、寝入ってしまう。

「あら、珍しいですね?」

 与祢が驚いて、頬をプニプニ。

 大河の寝顔など、滅多に拝めない好機だ。

 朝顔、鶫も注目する。

「本当にわらべみたい」

 朝顔は、頭を撫でた。

 すると、大河は赤ちゃんの様に微笑む。

「朝顔、好きだよ」

「!」

 夢の中でも、想っているらしく、朝顔に手を伸ばす。

 そして、触手の様に絡み付く。

 痛い筈なのに無痛なのは、夢を見ている為か。

「もう、愛妻家ね」

 夢でも想われて、朝顔も頬が緩むのであった。


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