短編詩#25

『どこでもドア』

このドア開けて

僕は何処へ今日は出掛けよう

透き通る青い海の孤島

酸素のある花だけの惑星

出口を僕の背中に繋げて

捕まえて追い掛けようか

僕は六畳を贅沢に使う

角に座り窓の斜陽を眺めてた

そんな毎日を過ごしてたから

距離を縮める装置を開発した

何処へでも行けるけど

好きな場所も有るけど

僕の心を満たすものは無い

楽しそうな声が近付いて来て

段々と遠くへ消えて行った

この装置は心の距離は縮められない

本当は見たことも無い景色よりも

平凡な町の人の側に居たい

僕は心のドアから出れないまま

出かける私宅を済ませてドアを開ける

光年先の青い砂のした

人肌の温かい波打つ水へ




『ダイヤモンド』

宇宙に溺れ彷徨う星は

冷たさに削られて

ダイヤモンドに成り果てた

夜空の輝きは全てそれで出来ている

争いは激しさを予感させるけども

その頃の瓦礫から見上げる夜空は

隙間を埋める程に輝いている筈よ


人は祈る事を止めない

意味の無い物に意味を求める

ただ星はぶつかる事を止めず

輝きを増してくだけ

人は希望の糧にしていく

遥か彼方から宇宙船がやって来て

全てを奪った時に

その行為の意味を知る

見放された気持ちが

夜空に現れてく


永遠の輝きは希望や貿易の為にではなく

誰の為にでもなくて

ただ輝いているだけであって

私達がただそれに求めているだけ

見とれる気持ちも失くなって

夜に戦闘機は空を飛ぶ




『ピストル』

草原の鋼鉄は微笑む風に冷めてる

その靴はどれ程踏み込み汚してきた

漂白剤は忘却の商人

汚れた人に多く買われていく

丘から投げ捨てられた檸檬は

果汁を涙にした世捨て人

海はそれでも酸味を増さない


砂を噛ませる子供に

海亀は涙を流さないから

見かねた朝は停電する

行方は夢の無い眠りの様に

陸も描かれない黒の朝

怯えた馬は肉を剥ぎ

骨だけになった

獅子が貪るその肉をただ黙って

眺めてるだけだった

軋む音を立てて歩く

寄せ付けぬ有刺鉄線の森へ


誰かが舌の引き金を引いて

一言発砲するのが遠くから聞こえた

酷く見下した偏見者の声

私は胸を押さえて倒れ込み横の街を見る

通りすがりの看護婦さんが

私に治癒の言葉を撃つ

私は病院に搬送されて

知らない誰かが口論の果てに

舌を切り落とされたのを聞いた

生れつき弱かった私はいつも

こうやって病室の天井を虚しく見る

でも看護婦さんは優しいからと励ます


迷わない黄色はウィスキーの中へ

日々は煙草の先から灰になれ

発電された瞳は眩しくて

求めたがる彼は顔を見てと言う

彼は電池が切れるのを待っていた

切れた時に彼の瞳は何も写さなかった

制作期間二十年だけど

世に出て一年のロボットは

機械の声で出来上がるまでの写真を

そんな彼に見せていた

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