電波塔

 あの時とは、物心が付いた頃からさ。都会のどの建物よりも目立つ、紅い柱が組み重なったあの電波塔は変わらずに今も、電波に乗せる情報を受信し、それを国に送信するのであった。


 一説があって、僕らには送信されない情報が宇宙から受信されて、それは国家機密や秘密結社にだけ送信されているって話さ。聞いたって、知ったって、僕らが騒ぐ様な内容だったとしてもさ、それはちょいとばかり摘んで見たい内容さ。


 砂嵐がチャンネルには存在するだろ?僕の家の場合は2、6、8、11チャンネルがそうだよ。あそこは僕達の前では決して止む事は無い。けど一部にはハッキリと見えていて、あの過去の真相とか数年先の未来とか、秘密で進行している計画の状況や宇宙人の宇宙演説と商品の通信販売なんか映っているのかもね。


 僕は誰もが当たり前に見ない所、僕は疑っているよ。まだ、建設されてから18年だ。これは僕と同じ年で、電波塔の方が2か月と3日ばかり早く世に生まれた。僕は時々へまをする、建設した人達も操作する人達も皆年上で、18歳の電波塔は休まずにそれを従い行う。


 でも、同じ18歳ならやりたい事沢山あるでしょ?それは今は関係無くて、失敗する筈さ。僕はその瞬間を望んでいるんだよ。この砂嵐が晴れて聞き取れる音声と、色の付いた映像が見えるのを待っているんだよ。何時までも待っているんだよ。こればかりはへまをしていると思えないんだよ。


 時々見えるんだよ、浮き出た顔とか、メリーゴーランドに観覧車、輪になり広がる水の波紋の様な映像が見えるんだよ。声だって聞こえるんだよ。「これを差し延べてホーピュタリヒーが嘲笑う。」こんなのが沢山聞こえる。真面な日本語から、外国語から宇宙人語、有りっ丈の声を聞き取り書いて解読する。まだ僕には理解出来ない言葉があるけども、解読できる候補が幾つかある。


 でもね、両親が泣きながら僕を精神科に連れて行ったよ。僕はお医者さんに患者と見なされてとある病棟に隔離されたよ。僕はただ夢を信じていただけなのにね、何か勘違いして泣いていたみたい。僕は狂ってなんかいないんだ。水面の反射する自身の姿に「お前は誰だ!!」と嬉しそうに言ってる奴や、プラスチックのドアを起きては毎回、意味無く叩いて眠らされる奴なんとは違うんだよ。人がコード、に見える事がある。でも、これは狂っていると言うよりは体得してしまったものだ。


 19386276 32564329 08081236 7869 4563 1286 4236 78615622_ 僕は知っている。今、君の頭の中では何も起きていない空白なんだって。そして、君の隠れてる思い出が今少しだけ曖昧になった。オレンジのペコちゃんキャンディーが落ちていてそれに蟻が群がっていた。溶けた所で動けずもがく蟻を見て、微笑んだ思い出。君はどうして微笑んだかを思い出した時に確かでは無くなっている。右、右、左、右、左、泣き出す。確かな物が僕にはあるんだよ。読み取る力だよ。


 テレビを部屋に置かれなかったよ。仕方ないからなんか聴かせてよ。波の音、ノイズミュージック、Eメジャーコード、皿の割れる音、地下鉄の風、擦れる金属音、なんでも良いからさ。良いから聴かせてよ、例えば君達が綺麗と言ったプールのメロディー、Creepのメロディー、実は「退屈でぶっ殺したい」って言っている。想像を絶するんだよ。じゃあ、本を読ませてよ「楽しかった遊園地」の「た」、これは今は「楽」に恋しているよ。見てみなよ。「た」が照れてる。おかしくないよ気付いてないだけ。


 無音が僕を包んでるでも、壁がコードに鳴っているよ、ほら無音のキーンって音、鳴るよ心臓、動脈流。解読の解読のしがいがあるよ。でも、テレビが見たいな。変わらない事をしてるじゃんか。結局。もう一説あるんだよね。電波塔は怪獣が来たら、都市が変型するんだそうだ。その時の剣か銃の役割をしているんだって。僕はその時の、性能とかを知りたいし、何処のビルがどのパーツになるかを知りたい。きっとあそこから変型が始めるだなんて候補もあるんだよ。


 今となっては、電波塔については知る事が出来ないや。僕は脱出のコードと想像のコードを同時に辿る。

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