第2話 諦めない心
むかし、むかし。あるところに、お花が大好きな女の子が住んでいました。
その中でも女の子が住んでいる街の近くの山にだけ生えるとても綺麗なお花が女の子の一番のお気に入りでした。
そのお気に入りのお花は、一年中綺麗な花を咲かせていて、いつから咲いているのか誰に聞いても分からない不思議なお花でした。
ある時、女の子がそのお花を見ようと山に登ると、いつもは花を咲かせていている部分にいくつもの種がついていました。初めて見る光景に女の子が驚いていると、女の子の足元に種がポロンと転がってきました。
「このお花を自分のお家で育てたい」そう思った女の子は、種を大事にポケットにしまい、急いで山を降りていきました。
山から急いで降りてきたかと思うと、慌ただしく種を植える準備を始める女の子を見た街の大人たちが、何事かと女の子の家の周りに集まってきました。
せっせと土を耕し、さっそく種を植えようとしたその時です。様子を見ていた周りの大人たちが「この花は山でしか咲かないんだ!」「お前がやっても無駄さ!」「諦めるんだ!」と大きな声で口を揃えて言いました。
この大人たちは自分がこの花を育てようとして失敗したので、自分より若い女の子には絶対にできない、できてたまるかと思っているようでした。
それでも、女の子は諦めずに泥だらけになりながら毎日せっせと種のお世話を続けました。
それから月日が経ちました。
女の子がどれだけ頑張っても土から全く芽がでません。
大人が言ったように無理なのかなと諦めかけていました。
そんなある日、一匹の黒猫が女の子の家にやって来て、種が植っている場所をぐるりと回ると女の子にこう言いました。
「どうして山で咲くのか、山と庭では何が違うのか。考えた事はあるかい?」
そう言って黒猫は女の子に背を向けてどこかへ行ってしまいました。
それから、女の子は毎日毎日、黒猫に言われた事を考えました。
あげるお水の量や肥料を変え
時には、この花がもともと生えていた山へ行き土を持ち帰ったりと、色々なことを試しました。
雨の日も風の日もそうやって一生懸命お世話をして何度目かの朝がやってきました。
女の子が目を覚ますと、家の外から沢山の人の声が聞こえてきます。
何かあったのかと急いで外に出ると
「あんた、良くやったよ!」と声をかけられ、それを火切りに沢山の「ありがとう」「すごく綺麗」という声が女の子を包みました。
驚いて辺りを見回すと、小さな子どもを連れた女性や年老いた街の住人といった、街から出たり遠出することが難しい人たちが口々に女の子にお礼を言いっています。
「もしかして!」
女の子が振り返えると、そこには山でしか咲かないと言われていた綺麗なお花が、庭いっぱいに咲き誇っていました。
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