第15話

「実は私、帰国子女なんです。クラスの子には少し話したんですけど・・・知ってました?」


「そうなの!?本当に存在したんだ」


けど日本語も喋れるし、違和感をとか全然なくない?


「小4まで日本にいたし、あっちでも日本語学校で小学校卒業するまでいたから本題はなかったんだよね。テレビもユーチューブも見れるし話し方を忘れることなんて全然なかったよ」


「日本語学校・・・」


知らない単語だ。英語とか外国に慣れるまで日本人で固まるって感じだろうな。


「そう、二年も居れば案外喋れるようになるんだよ。最初は意味も分からないし、早口すぎてビクビクしてたけど。日本の高校生活もビビってたんだからねっ。女子高生の生態なんて離れすぎて分からなかったから」


ああ~申し訳ありません。それに関しては醜い部分を見させてすいませんでした。誠心誠意謝らせてください。ごめんなさい。


「だから、よく話しかけてくれて助かってたんです。みんな友達いるのに自分だけいないし、流行とかもあやふやだったからほんとに感謝してるんですよ。はは、ちょっと照れくさいです」


・・・何、この子可愛いんですけど。


「揺士くんもいい人でした。とても助かってます」


「待って、揺士と一緒に登校して何してたの?」


危ない、騙されるとこだった。ほぼ生まれたときからの揺士との習慣を断ち切った罪は重いんだからね!可愛いは悪です。悪者です。


「数学を一緒に勉強してました。引っ越ししていたのはアメリカなんですけど、数学のレベルは低くて。高校一年生の問題もおぼつかなくて、揺士くんは復習として朝付き合ってもらってたんです」


いいことしてるじゃない、揺士。それも復習なんていつものあんたからは考えられないけどよくやったわね。褒めてやるわ。


「何とか今回の数学も赤点回避できましたし、教えてくれた揺士くんのおかげです!」


「頑張っててえらいぃ」


「後アメリカって告白の文化がないんですし、好きのハードルが低くて・・・(勉強教えてくれるし、仲良くしてくれて)好きって意味を友達に言ったことがあったせいかもしれません」


「大丈夫よ、勘違いはどうしよもないし、特に文化の違いなんて日本じゃ感じられないから」


烏谷ちゃんがしょげちゃってる。私なんて勘違いで距離まで取っちゃてるのに全然謝んなくてもいいのに。


「衝撃の事実が大分判明したわね。揺士とあなたの恋仲は勘違いだし、烏谷さんが帰国子女だなんて」


噛みしめるのにもう少し時間が欲しいところ。特に、一人部屋でガッツポーズしたりしたい。


「あのお願いがあるんですけど、下の名前で呼んでもらいたいんです。色々知れてもらえたみたいだし、こっちに来て一番最初に仲良くなってもらった人なので」


え、っと小さく面喰っていた彼女はなぜか緊張し、相手の顔も見れず小さな声で"葉月・・・さん"と呼んだ。その後、また小さな笑い声が響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る