第42話 ラフラン王国舞踏会へ
千代に続いて2回目の勇者召喚で異世界に来た2人は、毎日ダラダラと愚痴をこぼしながら、適当に勇者としての教育を受けていた。
異世界に来たからといって性格が急に変わる訳もなく、日本の不良生徒の授業態度そのままで勇者教育を受けている。
魔法少女の名前は「持間 瑠子」(もちま るこ)。
勇者の名前は「斉藤 京弥」(さいとう きょうや)という。
お互いを「キョウヤ」「ルコ」と呼び合い、恋人関係だった。
2人は授業をバックレて、校舎の屋上でイチャラブしてる所を異世界召喚されてしまったのだ。
午後の勉強時間の初めに、教育係の騎士ミヤイが告げる。
「2人にはラフラン王国の舞踏会に出席して貰う事になりました」
「「はぁ?」」
「年に1度開催される有名な貴族パーティーで、各国の王族の子弟も出席します。貴方達には勇者と魔法少女として特別枠で参加してもらいます」
「ダリいな……そんな事より元の世界に帰る方法を早く探してくれよな」
と、キョウヤ。
それに対してルコは、意外にも少女の目をしながら、
「ちょっと、ウケるかも! 各国の王子とダンスって、憧れのシチュエーションでキュンかも!」
「え……そうなん? ルコが行きたいなら俺も行くけど……」
「それでは、そう言う事で。 出発は10日後ですので荷物を全部纏めておいてください」
「はぁあい」
そう告げてスグに、ミヤイとタビチは部屋から出て行こうとする。
「あれ、今日の勉強はいいの?」
「あ、はい、もう勇者教育は受けなくていいそうです。どうぞ気ままに過ごしててください」
「へへ、やったぁ!」
「チョウ、ウケルンですけどぅ!」
2人はその理由も考えずに、単純に勇者教育を受けなくていい事を喜んでいた。
10日後に皇城の観兵式場で、六皇子とレドケルン公爵夫妻とその令嬢が皇帝陛下の前に整列していた。
後ろには
「ちっ、何で勇者の俺っちが、こんな格好をさせられなきゃならねぇんだ!」
と、キョウヤが呟いた。
一応騎士風の鎧を着せられ赤いマントを羽織っている。
勇者に見えるかどうかは微妙だった。
「皇子達って、本当に映画に出てくる王子の格好してるじゃん! 舞踏会場もベルサイユ宮殿みたいだといいなぁ」
と、ルコは早くもラフラン王国に思いが飛んでいる。
魔導士の白いローブを着て、杖を持たされていた。
ミヤイとタビチは更に後ろで跪き、底辺の騎士の鎧を着せられてマントは無かった。
皇帝陛下の長い挨拶が終わると、新米魔導士達が10メートル四方ぐらいのカーペットを広げる。
そこには複雑な魔法陣が組み合わされた魔導術式が隙間なく描かれていた。
レドケルン公爵と魔導士達がカーペットを囲むと、両手をかざして魔力を注ぎ始める。
魔導術式が光りだすと魔法陣ごとに違う光を放ちだして、虹色に光る筒が浮かび上がって行く。
やがてそれが丸くゲートを作り、その先に見知らぬ景色を映し出した。
「それでは皇帝陛下、行ってまいります」
「頼んだぞローラン!」
「はい」
一行が乗り込んだ馬車が次々とゲートを潜って行った。
【転移門】の魔術は国家機密であり、多大な魔力を消費する。今回の様に特別な行事の時に限り、使う事が許されていた。
レドケルン公爵は皇帝一族であり、宮廷魔導士筆頭のペリノアが失踪してからは帝国屈指の魔導士でもあった。彼の魔力が無ければ【転移門】の魔導術式を起動する事は難しかった。
上級貴族は魔力が多い者が尊ばれるので、結婚相手は美しく魔力が多い女性を選ぶ傾向が強い。
たまに高貴な貴族で生まれてきた子供の魔力が少ない場合は、妾や愛人や養子などで魔力の多い者を選び、魔力の多い子孫を残すように努力する。
領地経営をするうえでも、民衆を押さえるうえでも、大きな魔力があった方が良いからだ。
帝国馬車の一行は、ラフラン王国の観兵式場につながったゲートから現れた。
「皇子殿下、ようこそお越しくださいました。公爵閣下、公爵夫人、公爵令嬢もようこそお越しくださいました」
「宰相、出迎えご苦労、久しぶりですな」
「お久しぶりでございます。謁見の間にご案内いたします」
国賓としての扱いで、お決まりの長く退屈な形式ばった挨拶が始まるのだった。
勇者キョウヤと魔法少女ルコと教育係ミヤイとタビチは、謁見の間には連れて行かれなかった。
4人は護衛騎士控室へと連れていかれて、夜まで何もすることなく止め置かれる。
夕方前に軽食と御茶が出された。
ルコは暇なのでテラスから外を眺めると、2キロほど先にも城が見える。
「すぐ近くにもう一つ綺麗なお城が立ってるわ!」
白く美しい大きな城(シャンボール城)で、今居る王城がちょっと古めかしく思えた。
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