第212話乙女ゲーのヒロインは、ギャルゲの主人公に勝ちたいのです。その58

 結局、美月とゆるふわ宏美のチア衣装着る着ない問答は答えが出ないまま、二人とも疲れ果てて、通話を終了するのであった。


 次の日、正直、政宗のこと、チア衣装やリレーなど、様々な理由から学校に行きたくない美月は、物凄く憂鬱な気分で家を出るのだが、そこで、普段通りな郁人が、普段通り家の前で待っていたことで、ムッとなる美月なのであった。


「おはよう……郁人は今日は元気そうだね!!」

「そうか……普通だけど……美月は……大丈夫か!?」


 頬を膨らませて郁人にそう嫌味を言う美月は、郁人に会えたことで、少しテンションが上がっているが、やはり、学校に行きたくないという気持ちが、表情に現れており、そんな美月を心配する郁人なのである。


「だ、大丈夫だから……あと少しで、体育祭だからね!! 終わったら、郁人は私に敗北して、なんでも私のお願いを聞くんだよ!!」

「……いや、そんな約束はしてないと思うが……」


 郁人に心配される美月は、ハッとなって、郁人に心配かけたらいけないと、突然、体育祭の話を持ち出して、勝利宣言とともに、理不尽な要求をするのである。そんな美月に、首を傾げながら、過去を思い出しながらそう言う郁人なのである。


「ということは……俺が勝ったら、美月は俺のお願い何でも聞いてくれるのか?」

「な、ななな、なんでも何て!? 私はそんな約束してないから!! それに、郁人が勝つ何てこと絶対にないんだからね!!」

「そうか……それは残念だな」


 しかし、郁人はハッとあることに気がついて、そのことを美月に言うのだが、言われた美月は顔を真っ赤にして物凄く動揺して、必死に否定するのであった。


 美月にそう否定されて、心の底から残念そうな郁人なのであった。


「も、もうこの話は終わりだよ!! 早く行かないとひろみん待たせちゃうでしょ!!」

「ゆるふわなら、待たせておいてもいいと思うけどな」


 そう言って、美月は、郁人の右手をジッと見つめた後に、決死の想いで、視線を逸らして、学校に向かって歩き出す美月に、ゆるふわ宏美に対して辛辣な発言をする郁人は、美月の後について行くのであった。


 そして、美月はゆるふわ宏美との待ち合わせ場所につくと、すぐに郁人を置いて、ゆるふわ宏美と一緒に学校に向かう美月に、ニコニコゆるふわ笑みを浮かべるゆるふわ宏美に、タジタジな美月なのである。


「美月さん……覚悟は決まりましたか~?」

「な、何の話かな? ひろみん」

「フフフフ、チア衣装……一緒に着ましょうね~……美月さん~」


 やはりその話題だと、物凄く嫌な顔をする美月は、必死にとぼけるのだが、絶対に逃がす気はないゆるふわ宏美が、圧を放ちながらそう言い放つのである。


「ひろみん、絶対に着ないからね!! チア衣装何て私似合わないもん!!」

「それを言ったら、わたしぃだってそうですよ~!! でも~、もう着ることが決まってしまったんですから~!! 着るしかないんですよ~!! 美月さんだけ着ないなんて~、わたしぃが許しませんからね~!!」

「わ、私は関係ないよね!? ぜ、絶対に着ないから!!」

「半分は美月さんの責任ですからね~!! 絶対に着てもらいますからね~!!」


 そして、学校につくまで、またしても、チア衣装を着ない着せる戦争をする美月とゆるふわ宏美なのであった。


 校門前にいつも通り待っていた浩二が、いつも通りに美月とゆるふわ宏美に近づいてきて、挨拶をすると、美月の方は普通に挨拶を返すが、今度はゆるふわ宏美の態度が変なのであった。


「どうしたの? ひろみん?」

「いえ~、なんでもないですよ~!! さぁ、早く教室に行きましょうか~!!」


 ゆるふわ笑みを崩さないゆるふわ宏美だが、あからさまに浩二に対して、圧を放っている様子で、浩二はあからさまに、そんなゆるふわ宏美に気圧されるのである。美月も少し疑問に思うのだが、ゆるふわ宏美は何でもないと強めに言って、トコトコと先に歩いて行くのであった。


 そんな、ゆるふわ宏美の後を慌てて追いかける美月と浩二なのであった。結局、ゆるふわ宏美が何かを怒っている様子だったが、その何にかがわからないまま、7組教室の前でゆるふわ宏美と別れる美月と浩二なのであった。


 そして、本日も美月の馴れ馴れしくしてくる政宗を回避する一日が始まるのであった。







 そして、体育祭当日まで、郁人達1組は放課後練習をして、美月は、余裕そうな政宗と陸上部を信じて、バトンの受け渡しの練習はせずに、生徒会の一員として体育祭実行委員のお手伝いをするのであった。


 そんな日を過ごして、体育祭前日になるのである。美月は体育祭実行委員として前日の設営のお手伝いのために学校に一人で登校しており、そのせいか、何人かの男子生徒に話しかけられたのだが、全て校門前で待ち伏せしていた政宗が爽やかイケメンスマイルで追い払うのである。


 正直、そんな政宗が一番、近くに居て欲しくない美月なのであった。


「夜桜さん、わざわざ、すみませんね……休日までお手伝いをさせてしまって」

「本当にそうですね……体育祭が終わったら、私、生徒会をやめますからね!!」


 そして、運動場ですでに待っていた生徒会長が、美月達を見つけて、自慢の眼鏡をクイっとしながら、そう美月に労いの言葉をかけるのである。


 そんな生徒会長に、辛辣な発言をする美月なのだが、生徒会長は、美月が冗談を言っていると思って笑うのである。


「夜桜さんの冗談は、とても面白いですね……では、頑張って体育祭の準備をしましょうか」

「……いえ、冗談ではなく」

「さぁ、美月……一緒に頑張って、体育祭の準備をしようか」


 そう言われて、生徒会長に本気でやめたいと伝えようとする美月の言葉を遮って、爽やかイケメンスマイルを浮かべて、手を差し出してくる政宗に、鳥肌が立って、露骨に拒否る美月は、政宗を無視して、体育祭の準備に取り掛かるのであった。

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