第154話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、いつも一緒に居たいのですが、環境がそれを許しません。なんとかなりませんか。エピローグ
次の日、いつも通り、美月と仲良く恋人繋ぎで手をつなぎ、ゆるふわ宏美との待ち合わせ場所まで行き、ゆるふわ宏美も、美月を連れて、郁人から逃げるように去ることもなく、普段通りの関係に戻ったのである。
「ひろみん……郁人と仲直りしたんだね…よかったよ」
「そうですね~……よかったかもしれませんね~」
郁人と別れた美月は、郁人とゆるふわ宏美が仲直りしたことに喜ぶのだが、そんな美月の満面な笑顔を見て、表情を曇らせるゆるふわ宏美なのである。
「どうかしたの? ひろみん?」
「いえ~……何でもないですよ~……あ……そうです~…美月さん…美月さんにこれをあげますよ~」
ゆるふわ宏美は、美月に一枚の写真を渡すのである。
「こ、これって!? ひ、ひろみん!! これって!!」
美月は、ゆるふわ宏美が、差し出した写真を両手で受け取ると、ワナワナと全身を震わせて、写真と、ゆるふわ笑みを浮かべるゆるふわ宏美を交互に見て、驚愕の声をあげるのである。
「はい~、美月さんが欲しがっていた~…郁人様の写真ですよ~……特別に、ファンクラブ会員じゃない美月さんにも差し上げますよ~」
「ひ、ひろみん~!! ありがとう~!! 大切にするよ~!!」
「ちょ、み、美月さん~!! な、なんで泣いてるんですか~!? ていうか、抱き着かないでください~!! 放してください~!! 美月さん~!!」
美月は嬉しさのあまり、涙を流しながら、ゆるふわ宏美にしがみついて感謝するのである。もちろん、ゆるふわ宏美からすれば、美月の感謝と感動のこの行動は迷惑この上ないのであった。
「……で、でも、ひろみん…どうして急に…あんなにお願いしても、ダメって言ってたのに?」
「……そうですね~、気が変わったんですよ~…ただ、それだけですよ~」
「そっか…えへへへ、一生大切にするよ!!」
「そうですか~……そうですね~…何があっても…一生大切にしてくださいね~」
「うん!!」
つい先ほどまで流していた感動の涙を両手で可愛く拭いながら、美月は感謝の言葉を口にし、その言葉を聞いたゆるふわ宏美は、ジッと美月を見つめながら、ゆるふわ笑みを浮かべて、願いを込めてそう言うのである。
そんな、今から、郁人が何をしようとしているのかを全て知っているゆるふわ宏美に、最高の笑顔で返事を返す美月なのであった。
美月とゆるふわ宏美はその後、少し遅れて、無事登校し、いつも通り、強面の浩二が校門で美月が来るのを待っており、普段通り、挨拶をしてくるのだが、やはり、美月も普段通り、浩二を完全に無視するのであった。
そんな、美月とゆるふわ宏美から、遅れて登校する郁人は、校門前である人物に話しかけられるのである。
「おはよう…郁人君!!」
「…梨緒か……おはよう……というか、今日は早いな……いつもなら、もっと遅く来るだろ」
「うん…そうなんだけどねぇ……今日は、早く家を出たからぁ……郁人君を待伏せしようと思ってぇ……待っていたんだよぉ」
「……いや、普通に怖いからやめてくれ……それ、ストーカーっていう奴だからな」
「な、郁人君!! それは、酷いよぉ!! 恋する女の子が、健気に校門の前で待っているだけだよぉ!!」
「うん……それ、ストーカーだから、今度からやめてくれ」
梨緒は、昨日の郁人との事で、眠れない夜を過ごし、いつもより、早い時間に家を出て、この時間帯なら、校門前で待てば、郁人が登校してくるだろうと、待ち伏せしていたのであった。
もちろん、そんな梨緒の行動に滅茶苦茶迷惑そうな表情を浮かべて、拒否る郁人に、梨緒は頬を膨らませて、不満の声をあげるのであった。
「まぁ、低血圧で朝弱いから、今日だけだけどねぇ」
「そうか…それを聞いて安心した…じゃあ、また後でな」
「って、折角だから、一緒に教室行こうよぉ!!」
「……」
「露骨に嫌そうな顔しないでよぉ!! 郁人君!!」
なぜか、自信満々に豊満な胸を突き出して、ドヤ顔でそう言う梨緒に、さらばと右手を挙げて、校門を抜ける郁人を、必死で追いかけてきて、そう言う梨緒に、立ち止まって、振り返り、露骨に嫌そうな表情を浮かべる郁人なのである。
もう、どうせ、勝手についてくるだろうと、梨緒を無視して、郁人は教室に向かうと、勿論、ニコニコ清楚笑顔で後ろから梨緒がついてくるのであった。
そして、いつも通り、郁人は女子生徒達に囲まれて、朝の恒例を済ませるのであった。
「郁人君は相変わらずモテるよねぇ」
「……」
「はい!! 郁人様は、とても素晴らしい御方ですから、当然ですよ!!」
「尊い郁人様がモテるのは必然というものですわ!!」
「モテる郁人様…勿論、一生推します!!」
いつも通り、親衛隊三人娘と本日に限り梨緒を引き連れて、教室に向かう郁人は超絶目立っているのであった。
(まぁ……物凄く、男子生徒達に睨まれているが…これは、これで、好都合だな)
「そうか……いつも、ありがとうな」
一年生教室前を歩く郁人は、男子生徒達の嫉妬の視線に晒される中で、郁人様親衛隊の三人娘に向き直り、笑顔でそう言い放つのである。
あまりの衝撃的感動に、一瞬で感極まる三人娘たちは、三人で仲良く喜びと感動を涙ながらに分かち合うのである。
「ほら、教室に行くぞ」
「……」
郁人は、郁人様親衛隊の三人娘にそう言うと、教室に向けて歩き出すのである。そんな、郁人を、無言の疑惑の視線で見つめる梨緒なのであった。
「郁人君…いつもあんな感じなのかなぁ?」
「なんの話だ?」
「なんか…ちょっと…郁人君らしくないっていうかぁ」
「……そうか? 普段通りだが」
梨緒が疑問顔で郁人にそう聞くが、郁人は梨緒の事を見ることもなく、1組教室に入りながら、そう言い放つのである。
「郁人様……と、り、梨緒さん!? お、おはようございます~」
郁人が登校してきたことに気がついたゆるふわ宏美は、久しぶりに、郁人の所に来て、朝の挨拶をしようとするが、背後に梨緒が居ることに気がついて驚きの声をあげるが、すぐにゆるふわ笑みを浮かべて、朝の挨拶をするゆるふわ宏美なのである。
「ああ…おはよう」
「宏美ちゃん、おはよう」
いつも通り、郁人は自分の席に真っ先に向かい、郁人様親衛隊の三人娘は、忍者よろしく、素早く自分たちの席に座り、感動の余韻に浸るのである。
「……で? なんで梨緒もついてくるんだ?」
「郁人君とお話ししたいからかなぁ」
「……いや…俺は話すことないから、それに、鞄くらい自分の席に置いてこい」
「い、いいいい、郁人様!? な、何言ってるんですか~!?」
郁人が、清楚笑みで、両手で可愛く鞄を持って、甲斐甲斐しく、郁人についてくる梨緒に辛辣な発言をするので、恐ろしさのあまり悲鳴をあげるゆるふわ宏美なのである。
「じゃあ、鞄置いてきたら、お話ししようねぇ」
そんな、辛辣な郁人になんのそのと、清楚笑みを浮かべて、素早く自分の席に鞄を置きに行く梨緒を、口を開いて、目を見開き、驚愕の表情で見つめるゆるふわ宏美は、バッと郁人の方を見て,視線でどういうことですか~と訴えるゆるふわ宏美なのである。
「ほら、郁人君……鞄置いてきたよぉ…お話ししようよぉ」
「いや……だから、話すことないんだって」
「あるよぉ!! 沢山お話ししようよぉ!!」
「いや、俺は梨緒と話す話題とか特にないし…というか、話したくないんだが…」
「い、いいい、郁人様!? な、何言ってるんですか~!?」
「どうした? ゆるふわ……そんなに慌てて」
恐る恐る、梨緒の方を見るゆるふわ宏美だが、梨緒は清楚な笑みを浮かべているのである。
「はぁ~、梨緒……とりあえず、俺に付きまとうのはやめろ」
「絶対に嫌だよぉ…一生、郁人君の傍に居るからねぇ」
「……いや、堂々とストーカー宣言されても困るんだが…ていうか、怖いし…」
「い、いいい、郁人様!? ダメですよ~!! そ、そんな本当の事を言っては~」
「宏美ちゃん……今なんて言ったのかなぁ?」
清楚な笑みを浮かべながら、闇の波動を漂わせる梨緒に、ゆるふわ冷や汗がダラダラと流れるゆるふわ宏美なのである。
「い、いえ~……わ、わたしぃは何も言ってないですよ~」
「そっかぁ……宏美ちゃん…私は、ストーカーじゃないからねぇ…覚えておいてねぇ」
「は、はい~!! そうですね~!! 梨緒さんはストーカーではないですよね~!! す、少し病んでるだけですよね~」
「宏美ちゃん!? 今なんて言ったのかなぁ?」
「な、なにも言っていませんよ~!!」
「そっかぁ…私は…ストーカーじゃなし…病んでもないよねぇ?」
圧を放つ梨緒の問いに、ゆるふわ宏美は、首を高速で縦に振って、ヤンデレ梨緒に絶対服従するのである。
「はぁ~……まったく…お前等は、本当に騒がしいな」
そんな、梨緒とゆるふわ宏美のやり取りを、頬杖を突きながら眺める郁人はそう呟くと、窓の外を眺めるのである。
(たとえ、どれだけの人に恨まれても、どれだけの人に嫌われても……俺は、美月のためなら、なんだってするからな)
「郁人君も、私はストーカーじゃないからねぇ!! ただ、郁人君をずっと見ていたいだけの女の子だからねぇ」
「いえ~……それをストーカーと言うのかと~」
「え? 宏美ちゃん? なんか言ったかなぁ?」
「何も言ってませんよ~!! 梨緒さんは、甲斐甲斐しくて可愛いですね~って言ったんですよ~」
騒ぐ梨緒とゆるふわ宏美を見て、郁人は呆れながら、こう言い放つのである。
「まぁ、梨緒はストーカーだな……あと、正直病んでるし…怖いよな」
「い、郁人君!?」
はっきりそう言う郁人に、驚きの声をあげて、あからさまに頬を膨らませて不満顔の梨緒に、ゆるふわ宏美は、梨緒には見えない位置で、コクコクと首を縦に振って、郁人に同意するのであった。
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