第74話ゆるふわサブヒロインは、幼馴染たちの調査をするのである。 その7

 郁人の登場によって、場の雰囲気は、さらに緊迫した雰囲気になるのである。郁人の登場に感動する美月とゆるふわ宏美なのである。


「貴様…何をしにきた!?」


 政宗が、鬼気迫る勢いで郁人の所に詰め寄るのである。


「別に…ゆるふわに用があってな」

「…貴様が何か企んでいることはわかっているんだ…こいつに何をさせようとしていたんだ!?」


 郁人に詰め寄る政宗は、郁人を睨みつけ、ゆるふわ宏美を指さし、そう問い詰めるが、郁人は、ため息をついて呆れるのである。そんな郁人と政宗に、視線が集まるのである。


「美月…ゆるふわの事…守ってもらってすまないな…ゆるふわ…帰るぞ」


 郁人は、そんな政宗を完全スルーして、美月と宏美の所に向かって歩き出して、そう言うと、スッと梨緒が間に入って来るのである。


「ごめんねぇ…郁人君…私、まだ宏美ちゃんに用があるんだよねぇ…それに、郁人君が宏美ちゃんに何をお願いしていたのかぁ…知りたいんだよねぇ…ねぇ…覇道君も、知りたいよねぇ?」


 梨緒が郁人の顔を、ヤンデレ表情でのぞき込んでそう言った後に、スルーされて、郁人の背中を睨んでいる政宗をヒョッコリ覗き見て、そう言う梨緒である。行動自体は、可愛らしい仕草なのに、どこか怖さを感じさせる梨緒の動きに、ゆるふわ宏美は、恐怖で震えるのである。


「…そうか…ゆるふわには、美月の様子を見に行ってもらっていたんだ…まぁ、美月の事が少し心配でな」


 郁人が、美月の方を見ながらそう言うと、美月は驚いた顔をした後に、顔を真っ赤にして、デレデレに照れて、顔を伏せて、両手をモジモジさせるのである。


「い、郁人様!?」


 郁人がそう正直に、この場で発言したことに驚きの表情を浮かべる宏美なのである。そんな、郁人の発言に黙り込む梨緒と政宗を、浩二は何か言いたげに見ているのである。


「…悪いな…美月の教室での様子が気になってな…ゆるふわもすまない…迷惑かけたな」


 そう言って、美月の前に立ってそう言う郁人を、上目遣いでチラリと見る美月は、顔を紅潮させて、やはり下を向いて照れてしまうのである。


「じゃあ、行くぞ…ゆるふわ」

「は、はい~…み、美月さんすみませんでした~」

「あ、い、いいんだよ!! ひろみんは私の親友だからね!!」


 郁人に、そう言われて、郁人の所に行く宏美は、振り返り、美月に頭を下げてそう言うと、美月は嬉しそうに笑顔で宏美に応えるのである。そんな、美月に少し後ろめたさを感じる宏美なのである。


「じゃあ、美月…俺達は教室に戻るな」

「う、うん…郁人…し、心配してくれて…あ、ありがとう」


 モジモジ照れながらも、郁人にお礼を言う美月に、微笑みで返して、歩き出す郁人について行こうとする宏美である。


「待て…まだ、言いたいことがある!! 朝宮…貴様に美月の心配をされる筋合いはない」


 そう言って、郁人を引き留める政宗の方を、足を止めて一瞥する郁人である。


「い、郁人君…そ、その…よ、夜桜さんの事が心配だったのはわかるけど…その、過保護すぎるのはどうかと思うよぉ…夜桜さんの事は、二人に任せておけば大丈夫だと思うよぉ」


 梨緒が郁人に近づいてそう言うと、郁人はいつものような、ヤンデレの覇気が感じられない梨緒を見て、呆れた表情を浮かべるのでる。


「…美月は…俺の大切な幼馴染だからな…心配するのは当たり前だろ」


 そう言うと、郁人は再度歩き出すのである。宏美は、そう言われて、悔しそうに震えて顔を伏せる政宗と、呆然とただ郁人の後姿を眺めている梨緒と、歩き続ける郁人の背中を交互に見た後に、郁人の方早歩きで駆け寄るのである。


「い、郁人様…よ、良かったのですか~?」

「何がだ?」

「その~…美月さんの様子を確認しようとしたことをバラしたことですよ~」

「まぁ…仕方ないだろ…あの事がバレるよりマシだろ…嘘はついてないしな…だいたい、ゆるふわ…お前が、ポンコツだからこうなったんだがな…まぁ、ゆるふわに頼んだ俺も悪かったがな」

「そ、そうですよね~…す、すみませんでした~」

「まぁ、気にするな…梨緒は、勘が鋭いみたいだから…今後は慎重に行動してくれよな」

「は、はい~…申し訳ないです~」


 そう小声で会話して、教室に戻る郁人と宏美なのである。そして、残されて、梨緒は、しばらく呆然と立ち尽くした後に、美月の事を睨みつけた後に、梨緒も自分の教室に向かうのである。


「み、美月ちゃん…と、とりあえず、教室に戻ろうぜ…政宗も…な」


 浩二が、ずっと、廊下をボーっと眺めている美月と、悔しさで呆然と立ち尽くしている政宗にそう声をかけるのである。


「そ、そうだね…えへへへ」


 声をかけられた、美月は完全に顔が緩んでおり、幸せオーラ全快で教室に戻り、自分の席に向かうが、政宗は、反応がないのである。


「ま、政宗? 教室に戻ろうぜ?」

「……」


 そう再度、声をかけた浩二を、ギロリと睨む政宗に、恐怖心を感じる浩二なのである。


「……わかった…戻ろうか」


 表情が強張る浩二を見て、政宗はそう言って、教室に戻るのである。そんな政宗を見て、不信感を抱く浩二なのであった。







「あの…ごめんねぇ…郁人君…宏美ちゃんも…私、ちょっと…どうかしていたみたいで…本当にごめんなさい」


 教室戻ってきた梨緒は、先に戻っていた郁人と宏美の所に行って頭を下げるのである。郁人は、自分の席に座りながら、ため息をついて、宏美は、パタパタと両手を振るのである。


「別に気にしてないから、大丈夫だ…まぁ、内緒にしていた俺達も悪かったからな」

「そ、そうですよ~!! 全然、わたしぃは気にしていませんからね~」


 梨緒の謝罪にそう言う郁人と宏美に、顔をあげて、二人を見る梨緒なのである。珍しくシュンとしている梨緒なのである。


「あ…でも、宏美ちゃんとは…後で二人きりでお話があるんだけど…いいかなぁ」

「え!? わ、わたしぃですか~!?」

「うん…ごめんねぇ…宏美ちゃんとは…やっぱり、二人でお話ししたいことがあるんだよねぇ」


 冷や汗ダラダラなゆるふわ宏美は、先ほど助けてくれた郁人に、助けを求める視線を送るのである。そのゆるふわ宏美の視線に気がつく郁人だが、すぐさま、視線を逸らす郁人なのである。


「そうか…二人で仲良く話してこい」

「い、いくとさまぁ~!!」


 完全に郁人に見捨てられた宏美は、ニッコリ笑顔の梨緒の方を見て、恐怖に震えるのである。


「じゃあ、次の休み時間に…ファンクラブの部室でお話ししようねぇ…宏美ちゃん」

「…は、はい~…わかりました~」


 郁人の方に、恨みの視線を向けながら、ゆるふわ宏美は、梨緒の誘いに了承するのであった。

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