第690話 水中毒

令和4年5月21日 土曜日

ああ、インヴェガ、やめよう。


水中毒とは、多飲症の結果生じる発作性の病態で、精神疾患患者にはしばしば見られる。


(原因)

①向精神薬(特に定型抗精神病薬)による副作用の口渇により飲水が習慣化し、強迫的に飲水が増える、②精神疾患の病態(不安、焦燥、幻覚、妄想等)から飲水が習慣化して多飲傾向となる、③向精神薬の長期使用により、慢性的にドパミンD2受容体が遮断され、視床下部の口渇中枢を刺激する中枢性飲水惹起物質のアンジオテンシンⅡへの感受性が亢進し、さらに抗利尿ホルモンの分泌が促進され、水分貯留を引き起こす(抗利尿ホルモン分泌不適合症候群:SIADH)等が考えられる。


(症状)

多飲により腎の処理能力を超えると電解質バランスが崩れて希釈性低ナトリウム血症が生じ、軽症では疲労感、頭痛、嘔吐、浮腫、重症では脳浮腫による痙攣、錯乱、意識障害等、肺水腫やうっ血性心不全等の身体障害を起こし、死に至ることもある。


(治療)

水分制限が基本で、腎機能に問題がなければ水分制限のみで血清ナトリウム値は改善する。重症の場合は輸液による補充が必要となるが、急速な補正は橋中心髄鞘崩壊症(低ナトリウム血症を急速に補正した時に橋底部を中心に広範な脱髄が見られる病態)を生じる可能性があるので、緩徐に補正する。 

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