第204話 転落の軌跡

令和2年9月30日(水) その-1

転落は2014年に始まった。躁転し、9月に入院。ひどい状態だった。1週間、保護室に入れられた。医者から出された退院の条件は三つ。家賃の安いところへの引っ越し。半年は仕事をしない事。母と仲良くすること。どれも人権問題である。知り合いの弁護士に電話で相談したら、理不尽だが入院していては話にならないということだった。

行政に相談したら、言う通りにして生活保護になれと言われた。東京にいる妻に言うと離婚だと言われた。

2014年12月離婚。生命保険解約。パソコン、ブランド品、書籍等、資産性のあるものをすべて売却。この時は生き延びることだけしか考えなかった。

2015年1月転居。退院。盗難。本当にお金が無くなり行政に相談すると通帳を全部、空にしろという。これはダメだと先の弁護士に相談すると、自己破産しましょうと言われた。幸いなことに、200万円ほどの借金があった。すみやかに手続きをして同年7月、免責決定が出た。

生活保護はどうなったのか。それが障害厚生年金2級のほかに企業年金があったため、受け付けてもらえなかった。行政のミスだ。

引っ越し以降、食べることしか考えなかった。慣れない貧乏生活。多くの友達からお金を恵んでもらった。

引っ越しを決断した時、これからは社会の底辺で生き延びるだけだ、という強い決意を持った。すべてを捨てた。捨てたつもりだった。

しかし、欲が出る。再起だの、復活だのが頭をよぎる。未練だ。劣化した知能と肉体。何もない資産。身だしなみからよ、と言われる始末。体調は心身共に悪い。

もう、無理なんだよ。諦めよう。そう、自分に言い聞かせる。

躁うつ病は恐ろしい病気だ。2014年の入院の時には防衛省から25億円の報奨金が入ると妄想していた。入院先の医者も驚いただろう。重症なのだ。というよりも、当時通院していたクリニックの治療ミスではないか。

妄想は、時間が経つと妄想だとわかる。

そう言えば余命宣告を受けていたんだ。死ぬまでの間、淡々と暮らせれば最高だ。それすら難しいのに、再起など笑止千万だな。欲は毒か。

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