29日目 「ちいさな魔法使い」

 しばらくの静寂の後にルキアは口を開いた。


 「正直言ってまだまだね、狙いも定まってないし、威力の調整だって上手くできてないわ」


 そう言い放つと周りの空気が少し重くなる。


 静寂に耐えられずリリが逃げ出そうとすると、


 「でも、成長したのね。確かに威力は強くないけど的を絞って今の力でどうにかしようとしてた、それくらい見てればわかるわ」


 ルキアはしゃがんでリリと目線を合わせる。


 「でもね、狙いが外れて他の人に当たってしまったらどうするの? 大事なお友達を傷つけてしまったら困るでしょう。さっきも言ったけど、魔法は人を癒すだけじゃなくて、時には傷つけてしまうものなの」


 リリは不安そうな顔でルキアの瞳を見つめる。


 「それでも本当に魔法を学びたいの?」


 ルキアがそう尋ねると、リリはコクリと頷いた。


 そうするや否や、ルキアの顔が少し緩んだ。


 「......やっぱり血は争えないものね。貴方がそんなに魔法を好きになるなんて。ごめんなさいね、リリ。でも、本当に大切なことだから厳しく言ってしまったの。許してくれるかしら。」


 ルキアは優しくリリの頭を撫でた。


 「ううん、お母さんも大変だったのさっきのお話でわかったから。生半可な覚悟じゃダメなんだよね」


 とリリが応える。


 そうすると、ルキアはみよ達の方へ向き直った。


 「リリがお世話になった見たいね。感謝するわ。それで、一体誰がリリに魔法を教えたのかしら。とても一人で習得できたように見えないのだけど」


 みよは怒られるのかと思い、少し身構えながら


 「あ、私です......」


 と名乗り出た。


 「あらあら、そんなに身構えなくていいのよ。貴方、どのくらい魔法が使えるの?」


 ルキアはまったく怒っている様子ではなかった。


 「あー、えっと、それがまったくで......」


 みよがそういうと、ルキアは驚いている。


 「まったくというのはどういうことかしら? そうだとしたらどうやって教えたというの?」


 みよはルキアの質問に真摯に応える。


 「生まれた時から魔法がまったく使えなかったんです。多くの人と同じように。でも昔から魔法が出てくるお話とかはよく読んでて、"もし使えたらどうなるのかな"とか、"こうしたらもっと面白いな"みたいな事は考えてました。それでマリーとかリリとか、実際に魔法を使える人に出会って、なんだか楽しくなっちゃったっていう感じで」


 ルキアは少々呆気に取られているようだった。


 「迷惑だったらごめんなさい! 謝ります......」


 みよがそういうと、


 「そんな事はないわ。まだ小さいのによく考えているのね。きっと教えるのが上手いのね」


 ルキアがそういうと、


 「みよは私の先生だもの!」


 マリーがそう言いながら微笑みかけると、みよは照れくさそうに笑った。


 「それじゃあリリ? 覚悟は良いのよね?」


 ルキアがそう再度確認すると、今度はリリも声を出して、


 「うん、大丈夫」


 と言いながら頷いた。


 「それじゃあ早速始めましょうか」


 ルキアがそう言うと、リリもみよ達も何を始めるかわからないと言う様子で首を傾げていた。

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