22日目 「風のちから」

 

 呪文を唱え終えたと思えば、すぐに空は青く晴れ渡ってゆく。


 「こ、こんな感じです......」


 リリ以外は誰もこの状況を理解していないようだ。


 「えっと......何をしたの?」


 そうみよが尋ねると、


 「それが、実はわたしにもよくわかってなくて空が真っ暗になるんです。でも、だからといってそれから何か起こるというわけではなくて......」


 一同は唖然としていたが、みよだけは目を輝かせていた。


 「すごい......すごいよリリちゃん! 今のって天候をいじったってことだよね???」


 「そ、そうなるんですかね......?」


 「それ応用したらきっとすごい魔法になるよ! それにハッタリにも使えるよ」


 みよはいかにも魔法らしい魔法をみて心を躍らせている。


 「ええと......見たところリリにはものすごい風魔法適性があるみたい、風魔法を主体に魔法を強化していったらいいんじゃないかしら」


 シエルはそう分析する。


 「それじゃあ、早速練習しよう!」


 こうして3日にわたる練習の日々が始まった。


 1日目。


 「まずは風の球の強化をするよ!」


 そうみよが言うと、


 「でも、そんな威力はでなくてとても3日じゃ上達できるとは思えないです......」


 そう言ってリリは悲しそうに俯いている。


 それを見たみよはリリの手を握る。


 「私だってそんなにすぐ威力は上がると思ってないから安心して大丈夫!」


 みよは木の方を指差し優しく説明する。


 「威力もたしかに大事かも知れないけど、大事なのは範囲なの! 貴方が打った球の範囲を見て。あんなに広い範囲じゃ力が分散しちゃう」


 そういうと、リリは相槌を打つが、具体的にどうすればいいかがわからなくて困っているようだ。


 「うーん、そうだなぁ。狙う範囲をちょっとずつ絞っていってもらっていい? 漠然と木を狙うんじゃなくて、木のあの部分を狙うって言うイメージで」


 そういうとリリは息を整え、木に向かって狙いを定める。パンッと弾けるような音がすると、そこには木を突き抜けてぽっかりと小さな穴が開いていた。


 リリは目を見開いている。


 「やった! やったよリリちゃん!」


 みよは再び彼女の手を握り飛び跳ねる。


 「やりましたね!! すごいです! みよさん! みよさんもやっぱり魔法が上手なんですか??」


 そう聞かれると少しだけ言葉に詰まる。


 「あっ......ええと、実は私は魔法を使えないんだけど、そういうの考えるのが得意なだけで」


 みよは照れ臭そうにしている。


 パンッという大きな音に驚いてテントで休んでいたみんなが出てきた。


 走り出てきたマリーはみよに抱きつく。


 「い、今の音は何かしら......?」


 少し怯えるマリーの頭を撫でながら、


 「リリちゃんの魔法が成功したの! もう一度やってもらっていい?」


 そういうと、再びパンッという音と共に木にまた一つ穴が空いた。


 「い、今のはなんなのです?? 木に穴が......」


 みいまでわなわなしていてかわいい。彼女もみよに抱きつく。


 「すっごい強くなったでしょ?」


 みよがそういうと怖がっていたマリーは、


 「リリ! 素晴らしいわ!」


 と言ってマリーも喜んでいるようだ。


 銃の音に怯えたのか少し耳が立っているように見えるが、みいはみよの後ろに隠れながらグッドサインを出していた。


 「そういえばその魔法どこかで見たことある気が......そうよ! 思い出した。あれはあの時の......」


 と言ってシエルは話し始めたのだった......


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