20日目 「森の住人」
「森の前に入るなって書いてあったのがみえなかったんですか?!」
振り返るとそこにはクマのぬいぐるみが立っていた。
「ぬいぐるみが喋ってる??」
みよがまじまじとぬいぐるみをみつめると、どうやら後ろに人がいるようだ。
「もしかして後ろに誰かいるですか?」
そう言ってみいが後ろに回り込むと、みいに顔を見られないようにクマを盾にしながらその人は逃げ回る。
かというみいの方は鬼ごっこだと思って元気に走り回っている。
......とは言っても逃げ回ってるうちにみよ達からは顔が丸見えである。
みよ達がとらえたその人は少女だった。
はぁはぁ息を切らしたその少女は観念したようにみいに捕まる。
(さすが獣人......)
「えっと......まずはあなたの名前を聞いてもいい?」
「リリって言います......すみません逃げないので痛くしないでくださいっ!」
リリは急に追いかけられて混乱しているようだ。
「そんなことしないわ! ただあなたが逃げるからみいも楽しくなって追いかけちゃったみたいね」
「え、ああそうなんですか? それよりあなた達はどうして森へ?」
「え、ああ何も看板が新しすぎるとかちっちゃい足跡だから大丈夫だろうと思ったわけじゃなくて......旅の目的地がこの先にあるの」
「そうなんですね......」
「それよりあの看板を立てたのって貴方だよね? どうしてそんなことしたの?」
リリはぐっと口を紡ぐ。
「大丈夫、私達は貴方の味方だから」
彼女はそっと顔をあげる。
「......ママが悪いんだもん。私は悪くないもん」
「お母さんがどうかしたの?」
リリは観念した様に話し出す。
「私ね、魔法使いになりたいの。だから本とかいっぱい読んで練習していつか魔法学校にいくって言ったのに、ママがそんなの危ないからダメって言ったの」
「うーん、それで家出してきたってわけ?」
「ち、違うの! 家出とか、ママに迷惑かけたいとかそういうのじゃなくて......ただ、練習してると止められちゃうから、この森でいっぱい練習してママにすっごい魔法を見せれば認めてもらえるかなって......」
「看板はどうして立てたの?」
「あれはお母さんがこの森に入ってこない様にって......あとまだ下手だから人に見られるの恥ずかしいし......」
リリはバツが悪そうに手元で指をぐるぐるしている。
「つまりお母さんを認めてほしいってこと?」
「そう! じゃなきゃ私は魔法使いには!」
リリがそういうとマリーは口を挟む。
「それは違うと思うわ! お母さんだって本当はリリのやりたいことをやらせてあげたいんだと思うわ!」
「だったらどうして.....」
「それは...お母さんはリリのことが大事だからだと思う......です」
黙っていたみいも口を開く。
「助けてあげたいけどみいのこともあるし......」
「確かに時間はないかもですけど、この子を見捨てたら嬉しくないと思うです......だから」
みいは複雑な顔をしている。
「3日......3日だけ私に時間をちょうだい」
みよは真剣な顔でそう言った。
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