18日目「宛名のないてがみ」
「今ミラリア王国は国交断絶中なの、だからこっちの国から直接入ることはできないわ」
シエルは、そう告げる。
「え? そんな話聞いたことないよ?」
みよは驚いている。マリーの方に目をやるが首を振っている。
「それもそうね、急に国境を閉鎖したのって昨日くらいだもの。明日には正式に発表があるんじゃないかしら?」
「どうしてそんなことをしってるですか?」
みいは不思議そうにしている。
「まあ、妖精の間でネットワークみたいのがあって情報はかなり早いのよね。あんまり情報は流しちゃだめなんだけれど、せっかく国境に行っても入れなかったら大変でしょう?」
「そ、そうなんだ」
(なんだか便利すぎて色々ズルしてるみたい......)
「とりあえず唯一国交が残ったメールっていう港町に向かいましょうか?」
「完全な鎖国状態じゃないんだ?」
みよはシエルに尋ねる。
「そうみたいだね? 海へのルートは確保したかったのかしらね? 詳しくはわからないけど」
みいが話し出す。
「ただ、メールってたしかミラリアからみてこの国とは反対方向だからだいぶ遠回りしないといけないですね?」
「それは仕方ないわね、ゆっくり向かうしかないみたいね」
みよ達は各々出発の準備を済ませた。
扉に手をかけるマリーは少し寂しそうだ。
「マリー、私達がいるから大丈夫だよ」
みよはマリーの手をにぎる。
みいは、マリーを旅に出させてしまうことに申し訳なさそうにしている。
その姿を見たマリーは、
「ちがうの! ただちょっと......ほんのちょっとだけ不安で。でもね! きっと大丈夫。私だけじゃなくて、みよも、そしてシエルだっているんだから!」
それにみよも続く。
「そうだよ! 絶対お母さんを取り戻そうね!」
「うん!」
みいはすっかり元気になったみたいだ。
シエルはそれをうんうんと頷きながら黙って見つめていた。
「それじゃあお父様! 行ってきます!」
使用人になった元盗賊たちも笑顔で手を振っている。
そうして4人はゆっくりと一歩ずつ屋敷の外へと踏み出すのだった。
(そういえば、その時が来るまで絶対に開けないようにって手紙が枕の下にあったけど、何なんだろう?)
差出人のないその手紙の筆跡に、みよはなんだか覚えがある気がした。
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