3日目 「水の魔法」

 それからマリーちゃんとの生活が始まった。


 夜には、私が元いた世界の話をどこかで読んだ小説の話だと言って聞かせてあげると彼女とても喜んで話を聞いた。


 また、この世界には魔法があるらしいが別の世界からきた私にそんな適性があるわけもないので、現代の科学というやつを見せてあげることにした。


「私ね! ちょっとだけ魔法が使えるのよ!」


 そう言ってマリーが見せてくれたのは水属性の魔法みたいだった。


「えい! スプラッシュボム!」


 彼女の手から半径10cmくらいの水の玉が出てきて、それが宙を舞い一気にはじけ飛んだ。ちょっと濡れた.....


「もーマリーちゃん水がかかるんだったらいってよね!」


「えへへ、ごめんなさい。」


 かわいいから許した。 


(でも、これなんかに使えそう.....そうだ!)


「マリーちゃんって他の属性? の魔法も使えるの?」


「ううん、使えないよ〜魔法適性って言うのは生まれながらのもので、大抵一属性だけなのよ。」


「ええ、じゃあこの国の人みんな魔法が使えるの⁇」


「みんなってわけじゃないけど、適性が高い人は多いかしらね。大体2割くらいの人が適正があるのだけれど、私の国では3割くらいって教わったわ!」


「ねえ、マリーちゃんちょっと手伝ってもらっていい?」


 突然のみよからのお願いでマリーは少し戸惑ったようだが、すぐに返事をした。


「もちろん、みよのお願いならなんでもきくわ!」


 そういうと、よしきた!と言うばかりにみよは辺りを見回した。


(うーん。どうしよう。.....あっ)


 使用人が箒ではいたあとなのか、落ち葉の山が屋敷の端の方に見えた。


「ねえ、あの落ち葉がいっぱい落ちているところに一緒にきて!」


「いいけど? 何をするの?」


「いいからいいから!」


 私はマリーの手を引っ張って移動した。


「それじゃあウォーターボールを弾けないまましてもらってもいい?」


 マリーはこくりとうなずいて水の玉を宙に浮かせた。浮かび上がった水の玉は空中で光が反射し、きらきらと輝いている。


「そうしたらその玉を太陽に向けてみて!」


 すると、地面には屈折した光が映し出されていた。


「うんうん! 次は地面の光がなるべく小さくなるように距離を調整してみて!」


 マリーはそんな細かい調整をしたことは無いので、少し苦労していたが、みよにかっこ悪い所を見せたくなかったので、一生懸命に水の玉に意識を集中させていた。


 そうするとじわじわと、落ち葉から煙が出始めた。


「ええっ! すごいわ! どうして? 水属性魔法なのに火が.....」


 そう誰もが知っている虫眼鏡の原理を応用したものだった。屈折して集まった光は熱を帯び、落ち葉をちりちりと燃やしてゆく。


「えっへん!」


 みよは自慢げに胸を張っていた。満足気な顔をして。


「みよも魔法がつかえたのね!」 


「あ、違うの。これは私の国でよく使われる科学ってやつで.....」


「かがく?なんだかわからないけど面白そうね!私、もっと知りたいわ!」


 気がつくとあたりはオレンジ色に染まり、日が沈み始めていた。そう、この世界にも夕陽がある。


「うーん、今日はもう遅いから明日にしよっか?」


「遅くなるとお父様に怒られてしまうものね! わかったわ」


(これは、色々面白いことができそう......)


 そして、マリーとみよは夕焼けに染まる空を背に手を繋いで屋敷へと帰ってゆくのだった。

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