第154話 今・横浜、B法律事務所より

「エコキュートや浄化槽については、これまでも、限られたスペースの中で極力貴殿宅から離して設置するなど、通知人としては最大限ご要望に沿った配置を工夫してきました。つきましては、今回のご要望には対応いたしかねます。」







何もしていないとは言っていない。


でも、健康な人の「配慮」は、足りないのだ。


この程度で大丈夫だろうと、あちらは思う。


こちらとしてはそれでは足りない。


足りないから足りないと言うしかなかった。


だって、このままでは世を儚んで首を吊って死ぬか、病気で心臓が止まるまで頑張るか、自分の家をあきらめて去るしかないから。


配慮したのに足りないと言われて嫌になってしまうのは、分からなくもないけれど、せっかくの「配慮」も、このままでは結局、全てが無駄になってしまう。





そんなにエコキュート って大事?


文句をつけられたって、意固地になってしまうほど?


隣人から、自宅を取り上げることすら、ためらわないくらいに?





玄関側は駐車場だ。

大抵の場合、車が置いてある。


室外機風のエコキュート本体が置いてあったって、さほど外観に影響するとは思えない。

今のところエアコンをつけていないようだし、本当の室外機を置くかもしれないスペースだろう。



確かに、スペースとしてはギリギリだし、私だって、本当はそんなところに置いてくださいとは頼みたくない。


本当は、ただの電気湯沸かし器を置いて欲しかった!



「エコキュート などの、夜中に稼働する機械は置かないでください」


私は、そう頼んだのだ。

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