第46話 カウザルギー10
川崎の病院の先生が、横浜の系列病院で週一日だけ診察すると妹が調べてくれたので、横浜の病院の方へ行くことにした。
初診患者は予約ができないので、朝1番で受付できるように行ったけれど、初診の患者の受付は再診の患者さんの受付よりも30分開始が遅く、その間にどんどん患者さんが受付されていく。
整形外科の待合室で、1時間半くらい待った時、名前を呼ばれて、診察室の前に行った。
目の前の診察室にかけられた名札を見て驚愕した。
私の希望した先生ではなかったから。

慌てて、整形外科の受付にその旨を申し出ると、
「そちらの先生だと、だいぶ待ちます」
「それはそうかもしれませんが、紹介状も手外科の先生宛になっていますよね?」
専門医に診てもらうためにこんなところまで来たのだから、他の先生に見てもらっても意味がない。
「では、そちらに回します」
「順番はどうなりますか?まさかこれから1番後ろですか?」
「受付の時間で順番にします」
だが、その先生の診察には予約がたくさん入っており、しかも初診の受付は再診よりも開始が30分遅い。
痛みをこらえて気が遠くなりそうになりながら、昼になり、昼休憩が入り、他の医師の診察室は閉まり、午後になり、まさか忘れられたのではなかろうかと思い始めた2時になろうとする頃、ようやく名前が呼ばれた。
診察室に入り、今までの経過を並べ立てる。
そして、恐る恐る、
「あの本当に反射性交感神経性ジストロフィーなんでしょうか?」
「そう。それは紹介状を見る前にわかったよ」
私が驚いていると、
「そのね、つるつる光ったような肌。それ、この病気の特徴なんだよね」

がっかりした。やはりそうなのか。
やはり、簡単に治る病気ではないんだ。
でも、どこかで満足していた。
見ただけでわかった、と言う先生に診てもらえたので、納得する自分がいた。
今まで飲んで効かなかった薬や、副作用で飲めなかった薬の事など話すと、
「この病気はまだわかっていないことが多いから。その薬も本当はよく似てる別の病気の薬なんだよね。ただ、効く人もいるから出すだけ。効く人もいるけど効かない人もいて、飲めば治るってわけじゃないからがっかりしないで」
胃腸の調子が悪いこと、ちょうど手首とともに悪化したこと、なぜかすぐに下痢してしまう事を話すと、
「胃腸にも過敏症状が出ている可能性がある」
やっと、内科に行けと言う医者以外に出会えただけで満足だった。
レントゲンを撮った後、やはりここでもできる事は何もないと言う。
リハビリができない状態であると言うことが、病院では手の施しようがないと言うことらしい。
リハビリができるようになったらまたおいでと言われた。

私が今の生活のことを話し、いつまでも妹の家に世話になれないので、自宅に戻って生活したいのだが、どうすればいいかわからないと話すと、
「障害手帳を取るのが1番いいだろうね。発症したのはいつだったっけ…もう取れるでしょう。うちで書類書いてもいいけど、地元に戻って書いてもらったほうがいいだろうね。説明だけでも聞いていく?」
障害手帳。
その言葉に私はショックを受けていた。
まさか自分が障害者になろうとは考えてもいなかった。
ソーシャルワーカーさんが呼ばれ、またしばらく待った。
その病院で、おおよその制度の説明を受けたが、正直なところあまり頭に入らなかった。
「障害手帳を取るしかないんでしょうか?」
「そうですね。あなたの年齢だと他に方法がないと思います。
こちらで申請するのでなくて、鎌倉に戻って申請するのですよね?
横浜と鎌倉では少し違うと思うので、調べてみましょうか?」
「すみません。私、もう痛みがひどくて…これ以上は。
すみません。後は鎌倉に戻って説明してもらいます」
朝からずっと我慢し続けていたが、とうとう泣きが入ってしまった。
「わかりました。
向こうの病院に戻って受付に行ったらすぐわかるように連絡しておきますからね」
とても親切にしていただいたが、私はほとんど逃げるようにして妹の家に戻った。

新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます