第23話 カウザルギー3

なぜまた同じ医者に行ったかと言うと、別の医者に行って、また最初から診察を受けてまた動かされてひどい目に会うのが嫌だったからだ。


この2ヶ月、腫れは一向に引かず、2ヶ月前に診察を受けたときには開いていた指が、ずっと痛みのために握り込んでいたせいで、曲がったまま固まってしまっていた。


「飲み薬を出します」


ホルモン剤というのが出た。


2週間ほどそれを飲んだが、若干痛みが軽くなった程度で大して改善せず、


「転院してリハビリを進めましょう」


「でも、まだすごく痛いんですけど」


「今のままだと指が開かなくなりますから、リハビリは進めながら治すしかありません」


と言われ、市内の、リハビリ設備が整っていると言うもう少し大きな病院へ転院した。



紹介状を持って訪れたが、


「ただの関節炎ではなく、反射性交感神経性ジストロフィーと言う神経の病気だと思います」


ここで初めてそう診断された。


「多分前の病院の先生も疑ってはいたんでしょうね。薬がそっちの薬ですから」


呆然としている私の前で医者が続ける。


「リハビリでさらに悪化する可能性はあります。そーゆー病気ですから。

でも、今リハビリを始めないと、一生指が開かなくなります」


私はとても今よりも悪化するなんて耐えられなかった。

そう告げて一旦家に逃げ帰った。


しかし、一生指が開かなくなる、という言葉が頭を離れなかった。それもまた、恐ろしく、耐えられなかった。


翌日だったか、その次の日か、忘れてしまったけれど私はすぐにまた病院を訪れ、


「リハビリお願いします」

と言った。



その日は、リハビリといっても、肩まわりのマッサージをしたり、指をそっとマッサージする程度だったのだけれど、その次のリハビリの日、指先を持たれて大きく振られた。


この病気の厄介なところは、動かしたその瞬間はそれほどひどく痛いと言うわけではないことだ。

もちろん痛い。痛いけれども、我慢できないほどでは無い。


ところがリハビリも終わって、手続きを待っている間に、どんどん腫れ上がっていった。

慌てて家に帰って、氷水で冷やしたが、追いつかない。


その日は、七転八倒するほどのひどい痛みに襲われ、翌日、肩で息をしながら、病院を訪れて経緯を話した。

悪化するかもしれない、と言う可能性がまさにその通りになってしまったわけだ。


頭がおかしくなるほどひどい痛みだった。

正気を保つことができない位の痛みだった。



私は泣きそうになりながら、医者に、入院させてくれるように頼んだ。


私は一人暮らしだし、もはや転がってうめいている位の事しかできない物体になり果てている。

痛みどめも、ほとんど効果がない。

全身麻酔でもなんでもして、意識を奪って、その辺に転がしておいて欲しかった。



しかし、

「入院と言うのは治療をするためにするもので、できる治療が何もないので入院はできません」



私は家に帰り、ぐちゃぐちゃに荒れ果てたの部屋の汚れたベッドに転がり込んだ。

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